2026.10.16

先行研究を「ディグる」(M1藤堂祥太朗)

皆さんこんにちは、M1の藤堂祥太朗です。
修士の1年目では先行研究を徹底的にレビューし、RQ(リサーチクエスチョン)を決めることが研究のメインになります。大学院に入学してから半年が経ち、レビューのやり方を少しずつ掴んできました。今回は、現在どうやってレビューをしているかと、しながら感じた「ディグ」との共通点について書いてみます。


【「ディグる」とは?】
DJが、時間の経過や入手可能性の低さによって埋もれたレコードやCDを探しまわることを、英語圏では”dig”と言います(Welburn, 2013) 。このスラングが日本にも輸入され、リスナーが音楽配信サービスで新たな音楽を探したり、服好きが掘り出し物の古着やスニーカーなどを探す行為を「ディグる」と言うようになりました。

【先行研究の探し方】
先行研究をいざ読むとなっても、数は膨大です。そこで、読む文献をうまく絞って読んでいく必要があります。私は主に3つの絞り方を使っています。

①テーマやキーワードで絞る
自分の研究に関わるキーワードをGoogle Scholar等に入れ、ヒットした文献にあたる方法です。私であれば「ESD 課題」「教育 価値観 対話」のように、キーワードを組み合わせて検索していました。研究を始めたての時は、このやり方が一番ハードルが低いと思います。まず世の中にどのような論文があるか、少しずつ全体像を見ることに繋がります。

音楽や服のディグも同じです。「80年代 シティポップ」「HIPHOP US Chill」「モード系 レザージャケット」「テック系スニーカー ブラック」というように、まずは気になるジャンルやカテゴリーで調べると、趣向にあったものが沢山出てきます。

②著者で絞る
ディグを続けていると、「このアーティストは自分の好みに合う曲が多いな」「このブランドの服のスタイルは自分に合っているな」というのが段々分かってくるかと思います。好きなアーティストの昔のアルバムを聴いたり、トップスが好きなブランドのボトムスも見てみよう、とディグが進みます。

これは研究も同じだと思います。ひたすら先行研究にあたっていると、「この著者の視点は自分に近いな」「この著者がよくアプローチしている課題は自分と近いところにあるな」と分かれば、その著者が過去に出した文献を漁ることで、レビューが更に強固になっていきます。

また、共著者となっている著者の文献にあたることもあるでしょう。音楽や服の文脈でも、コラボしているアーティストやブランドをディグすることで、更なる出会いが待っています。

③先行研究の先行研究にあたる
著者で絞るのと似ていますが、先行研究がどのような先行研究を用いているのかは重要です。「この研究をするならこの論文は読んでおいた方がよい」というものと出会うことができます。目の前の研究が、どういう変遷でこのRQに到達したのかは、そのまま自分の研究にも参考になります。そこからどのように新規性を加え、学術的潮流の中でどう位置づくのかを考えることにも繋がるでしょう。

このことは、「サンプリング」に一番近いのではないかと思います。研究の文脈でも使われる語ですが、音楽や服のカルチャーでは端的に「既存の創作物を素材として新たに創作すること」という意味で使われます(諸説あり)。音楽ではDaft Punkの“Harder, Better, Faster, Stronger”をサンプリングしたKanye Westの“Stronger”など、ファッションではヴィンテージアイテムをアレンジしたもの(例:MA-1)などが該当します。これはどちらかというと創作者側の視点になると思いますが、過去の作品や知見を素材として扱い、新しいものを生み出す点で共通項が見いだせると思います。

【質の良い「ディグ」をするために】
先行研究のレビュー、音楽や服をディグる中で、「なぜこれが良いか・悪いか」を言語化することを意識しています。論文のどこを有用だと感じるのか、何が論文の質を担保する核として機能しているのかに注目することで、研究課題を特定するための見方がより洗練されるように思います。また、自己分析にも繋がります。私は一時期「コンシャス・ラップ(社会問題を題材とするラップ)」をディグしていました。これは歌詞に特徴のある音楽のジャンルですが、意外と自分は音楽性の方を重視していることに気がついた、なんて経験がありました。研究においても「これは違う」という相対化により、より方向性を明確にすることができます。

余談ですが、この考え方はもっと広く使えるものでもあるなと思います。私はこの春から上京しましたが、都内のおいしい飲食店を探したり、最近は修士卒業後の進路を調べたりする中でも「ディグ」している感覚があります。

ぜひ皆さんも、先行研究を「ディグ」していきましょう。


最後までお目通しいただきありがとうございます。
少しでも先行研究レビューの実態がイメージしやすくなれば、幸いです。

参考文献
Welburn, William C.(2013)Digging the Digital Crates. Imagine, Innovate, Inspire: The Proceedings of the ACRL 2013 Conference, 148–156

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