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2024.11.07

大学院は大変?私の研究生活を支えている3つ(D3 岩澤)

先日、ある学部生の後輩から「大学院で研究したいけど、孤独で大変そう。やっていけるか心配です」と相談を受けました。
 
大学院に進学を決めた当時の私は、そうした不安を特に意識していませんでしたが、大学院での学びも5年目を迎えた今の私は、「まあ、そうだね」と思わず共感する部分もあります。
 
世間では、「大学院はずっと学生気分のまま好きなことだけ学べていいね」と思われがちですが、実際には、院生の4割が研究の過程でメンタルヘルスの問題を抱えているというデータもあるらしいです(Evans et al., 2018)。一般の人に比べて高い割合で「大変」な側面を抱えている可能性があります。自分の経験や周りを見ても、大変な時期を経験している人は少なくありません。
 
それでも私は、「楽しいよ、本当に興味を持っていることをテーマにできたら。あとは、自分なりの研究スタイルで乗り越えていくしかないかな」と答えました。
 
この記事では、私が乗り越えるために工夫していることを少しご紹介したいと思います。
 
 
1. 自分の特性を知る

大学院には本当に多様なタイプの人がいます。

ロジックとセンスでどんどん研究を進める人、24時間論文をニヤニヤしながら読み続けていそうな人、現場の実践と観察の視点が抜群におもしろい人、ずっと喋って思考を深めるのが得意な人、天才的な文章で論を展開する人…。
   
私の場合は、論文を読むのも好きですし、現場での実践も楽しんでいます。一方で、うまく論を組み立てられない時や、執筆をしなければならないフェーズでは、しんどくなってしまいます(うまくやってる得意な人と比べて、「もう無理」と思ったことは何度もあります)。
  
なので、得意な現場での活動(私の場合は学校での授業など)は、どんな時期でも必ず持つようにしていました。執筆に追われていても、そうした「得意」の瞬間を作っておくと、気持ちが切り替わり、モチベーションを保つことができるかなと思います。
  
 
2. 自分を甘やかす「オフ」を作る
 
研究がどうしてもうまくいかないときや、何度も壁にぶつかると、「オンとオフの切り替え」を意識して過ごすようにしています。私にとっての「オフ」は、まったく研究のことを考えない時間です。
 
例えば、私は海に入るのが好きで、海の中で数分間、文字も言葉もない世界に沈むと、不思議とリフレッシュできます。これはサウナで「整う」感覚に似ているかもしれません。戻ってくると思考がクリアになって、また新たな気持ちで「研究、やるかあ」と机に向かえるようになります。
 
たくさん寝る。美味しいものを食べる。映画を見る。なんでもいいと思います。
ギリギリになる前にリセットしておくことが大事かなと思っています。
  
 
3. 人と話す・人の研究に関わる

大学院生活では、孤独になりがちだと言われますが、山内研は比較的話すのが好きな人が多いと思います。「研究のディスカッションしよう」と誰かを誘えば、すぐに乗ってきてくれます。応援しあったり、相談できると、乗り越えられる課題もたくさんなるなと感じています。

また、自分の研究が行き詰まるときに、他の人の研究を手伝ったり、相談に乗ったりすることも、良い刺激になります。山内研にはファシリテーター制度があり、私も修士課程の後輩のファシリテーターをやっていて思うのですが、他の人の研究を見ていると、なぜか「自分も頑張ろう」という気持ちが湧いてきます。
 
実際、チュータリングプログラムで高校生を支援する活動に参加した大学院生の82%がウェルネスやメンタルヘルスに改善が見られたという研究もあるそうです (Hermanstyne et al., 2022)。
 

もし大学院進学に不安を感じている方がいたら、「これはぜひ追求したいな」と思える研究テーマを見つけ、今の環境でストレスを乗り越えるための自分なりのスタイルを探してみるといいかもしれません。いろんな先輩の、大学院の過ごし方を聞いてみるのも、参考になると思います。

D3 岩澤直美


(この記事は、研究で感じるストレスを乗り越える個人的な工夫を紹介したもので、メンタルヘルスの治療法を示すものではありません。深刻な症状を感じている方は、医療機関を受診されてください。)

Evans, T.M, Bira, L., Gastelum, J.B., Weiss, L.T., & Vanderford, N.L. (2018). Evidence for a mental health crisis in graduate education. Nature Biotechnology. 36(3). 283-285.

Hermanstyne, T.O., Johnson, L., Wylie, K.M., Skeath, J.B. (2022) Helping others enhances graduate student wellness and mental health. Nat Biotechnol 40, 618–619.

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