2024.03.01

【突撃!隣のファシリテーター④:山本良太さん】

D2の岩澤直美です。

山内研究室では、博士課程でもファシリテーターの方にたくさんお世話になります。私も、研究発表の前後はもちろん、学会発表や投稿論文、そして博士論文の全体像や進路についても、相談したり頼ったりしながら研究に励んでいます。<ファシリテーター制度とは?

私は昔から「迷惑じゃないかな」と心配してしまい、あまり人に頼ることが上手ではありませんでした。そんな私が、素直な研究の状態や気持ちを共有しながら先輩たちに頼れるようになったのは、ファシリテーター制度と山内研のコミュニティのおかげだと思っています。

今回は、私のファシリテーターである山本良太さんにインタビューをしてみました。

岩澤:山本さん、よろしくお願いします。改めてですが、山本さんの出身と研究内容、山内研に来てくださった背景について、少し教えてください。

山本さん(以下 敬称略):関西大学総合情報学研究科の出身で、博士課程では「新しいコミュニティの創出を通じた学習」について興味を持ち、活動理論に基づく海外での社会貢献活動の分析を行っていました。山内研究室の研究プロジェクトで、反転授業プラットフォームを使った学習促進の研究(論文)に携わる機会を得たタイミングで、ある意味の「修行」だと思って上京しました。今は、大阪教育大学で特任准教授をしています。


 
Q1. ファシリテーターってなんですか?

岩澤:山内研究室の共同研究に複数関わりながら、多くの修士や博士学生のファシリテーターを担当されてきたと思います。山本さんはこの「ファシリテーター」の役割や立ち位置をどのように捉えていますか?

山本:ファシリテーターって、スポーツ観戦でいう「ファン」のような立場で応援することかなって思います。素直に「面白い」とか「うーん」と微妙な反応を示したりとか。でも、結局プレイヤーは自分で練習してプレイをして、前に進んでいく必要があるのですが、ファンの意見も参考にする。さらに、山内研という一種のファンコミュニティの中でみんなでサポートしあっているものかなと思っています。

岩澤:なるほど!確かに、そうですね。ファシリテーターとは1対1でご相談をさせていただく機会は多いですが、それが全てではなく、ゼミのコミュニティの中でお互いをサポートしあう文化を感じます。

山本:みんな研究分野や内容は違うし、自分の経験の範囲内でしか応援できないので、他のサポーターの力も借りているコミュニティの「ピース」の一つとして、自分を位置付けています。


 
Q2. ファシリテーターとして意識してきたことについて

岩澤:山本さんがファシリテーターとして、特に意識していたことはありますか?

山本:RQの設定や質的分析などを進める際、学生が自分の研究におけるレンズの使い方やデータの解釈方法を見つけられるよう支援してきました。「なんでそういう解釈をしたん?」などと問いかけながら、別の解釈の可能性を提示してみたり。悩みながらも独自の視点で研究を進められるようにサポートすることを心がけています。

岩澤:独自の解釈や視点を見つけるのって難しいなと感じます。私のような初心者にとっては、提供された解釈例に固執してしまうこともあると思うんです。山本さんのアイデアに引っ張られすぎないようにするために、意識してる伝え方はありますか?

山本:「この解釈は一例に過ぎない」ということを明確に伝えるために、ある意味その事例のアイデアに"無責任"であることも示すようにしています。「知らんけど」「ほんまにそうなん」と投げかけて、改めて考え直してもらったり。

岩澤:確かに、言ってますね(笑)。私もそんなサポートを受けながら、自分の研究に対する理解が深まったと感じます。ありがとうございます。

山本:新しいアイデアや解釈の種は、対話の中で生まれるものだと思うんです。その対話の中で出た一つの事例を「道具」として、本人なりの新しいものを創っていけるといいなと思ってます。あとは、自分の研究者としての経験を踏まえた感想はかなり正直にはっきりいうようにしています。「めっちゃおもろいやん」と褒めたりとか。

岩澤:確かに。たまに、山本さんに方向性をお伝えした時に褒めてもらうと「あ、研究こっちの方向で間違ってないんだ」と、すごく安心します!「それは、まあ微妙やな」と言われたこともたくさんありますが。

山本:それはほんまに、フェーズや内容に限らず、率直な意見として伝えるようにしてます。研究の軸足やポイントって正解はないけど、これから研究をするという段階では、自分1人で判断するのって難しいから。その研究の価値を一緒に創っていけたらと思ってます。自分もそうされたら嬉しいしね。

岩澤:嬉しいです〜(切実)
 


Q3. どうやって頼ったらいいですか?

岩澤:山内研の環境は、本当に恵まれていると改めて感じさせられます。最近は、私もファシリテーターや、先輩、同期や後輩にもたくさん頼るようになりましたが、それは「自分では乗り越えられない!」という壁にたくさんぶつかるようになったからだと思います。でも、これまでの私のように、どれくらい頼っていいかわからないって思う人も少なくないと思うんです。

山本:もう大人だし、研究者として成長する過程としても、自分から積極的にサポートを求めることも大事だと思います。それに、そもそも大学院にいるような人って、「議論を嫌いなわけがない」と思うんです。研究に関する相談って、その探究の方向性を「一緒に議論する場」だから、それを楽しまない人って山内研にはいないんじゃないかな。

岩澤:確かに!ゼミ前後でなんとなく相談しあってる時間も楽しいですし。でも研究が進まずネガティブになると「議論になるようなリソースを揃えなきゃ相談できない」ってハードル上がってしまうこともあって…。

山本:リソースってなんでもいいと思うんです。たくさんレビューしてきたならそれでもいいし、実践現場があるなら、その時の感じたこととやりたいことを扱ってもいいし。そこから次の探究課題を見つける議論の素材って、みんな十分持ってるんだと自分は思ってます。「ファン」としてのファシリテーターなので、どんな内容や状態でも、対話の中で相手の視点や感情を知れるのって嬉しいですよね。

岩澤:ゼミ中の指摘ばかりに目を向けると自己肯定感が下がりますが、私もゼミコミュニティーを「ファン」として捉えられると、少し乗り越えられる気がします!

山本:大学院で学んでいると、自信がボキボキ折られるじゃないですか。でも、人によって得意なところって違っていて。文章が上手い人もいれば、実践が得意な人もいる、面白い観点で分析をできる人もいるーーその人の「武器」を一緒に見つけていけるのは、ファシリテーターとしても楽しいことかなって思います。

岩澤:本当に「すごい人」に囲まれて落ち込むことばかりですが、私も自分なりの武器を見つけていきたいと思います。

 
 
Q4. コミュニティと学習のおもしろさを教えてください

岩澤:ファシリテーターとしての楽しさをたくさん教えていただきました。最後に、山本さんにとっての「学習」のおもしろさを教えてください。

山本:一見、みんな同じような行為をしているように見えるけど、その実態が実は多様なことにおもしろさを見出しています。同じ組織や集団内に、多様な経験を持っている人が集まった時の「掛け算のパフォーマンス」として発揮できる環境作りに関心を持っています。フィールドワークで見えてくる答えが、自分の現場を作る時の参考になっているように思いますし、論文を通じてそれが他の人の参考にもなってくるといいなと思います。自分の研究は、自分が一番面白いと思いながらやってると思います。

岩澤:それぞれの現場で、文化や歴史もある中で、効果的な介入方法を提案するのは難しいですよね。山本さんは今も新しい現場を作っていくこともあると思いますが、周りに頼ることもありますか?

山本:他の教員や、研究者仲間に相談することはたくさんあります。自分から積極的にサポートを求めながら前に進んでいく必要があるという意味では、院生と同じだと思いますし、それを可能にしてくれるのがコミュニティの魅力だと思います。

岩澤:ありがとうございました。改めて、山内研のファシリテーター制度の足場掛けが重要な役割を果たしていることと、山本さんや周りの人に引き続き頼らせていただけるのだという自信を持てました。引き続き、よろしくお願いいたします。


山内研のsupportiveなコミュニティにもう少し甘えながら、私自身も、その中でできることを返していきたいと思いました。がんばります!

ーー
D2 岩澤直美

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