2022.06.19
こんにちは、D3の井坪です。
日本の大学生が、英語の会話により積極的に参加するための学習環境について研究を進めております。
今回のテーマが「研究に役立つウェブサイトやツール」ということで、私からは英語を使って研究する際に使えるウェブサイトやツールをご紹介できればと思います。
①otter.ai
私の研究では、英語の会話を録音し、書き起こしたものを分析するのですが、文字起こしというのはなかなか骨が折れる作業なのではないかと思います。業者さんにお願いするという手もあるかもしれませんが、自分で文字に起こす際にはどのような工夫ができるのか、修士研究時に色々と試行錯誤しました。
Google docsの音声入力をオンにして、聞いたものをそのまま自分で話して書き起こしてみたり、文字起こし用の再生ソフトを使ってみたり・・・。
そんな中、比較的しっくり来たのがotter.aiという、AIを利用した自動文字起こしツールです。
英語のオーディオファイル・ビデオファイルをインポートすると、可能な場合は話者も判別して文字起こしをしてくれます。
もちろん、全てを完璧に起こしてくれるわけではありませんが、自分で起こす際にベースになる文字データがあるとないとでは全然違うように感じます。
②Grammarly
英語の文章を書く際に、ミススペリングや、冠詞の付け方といった基礎的な文法をチェックしてくれるツールです。
PCにダウンロードすると、ウェブブラウザでメールを書いたり、Wordで文章を書いている時にも、その場で確認してくれます。
自分で一から書いていると気付きにくいけれど、赤で下線を引かれると、「あ、もしかしてこう書くべきだったかな」とより良い言い方について考えることができますし、サジェストされた修正案と自分の書き方を見比べて検討することで、英語学習につながる部分もあるのではないかなと思います。
文法やスペリングのチェックだけでなく、読者にどのように聞こえるか?という文章の印象(丁寧さなど)も教えてくれるので、英文メールを書く際などには参考にしてみてください。
③DeepL
翻訳ソフトのDeepLはご存じの方も多いのではないでしょうか。
翻訳ソフトを使うと、単なる直訳になってしまい、意味が分からない・・・となってしまうこともあると思うのですが、こちらは比較的わかりやすく、細かいニュアンスを拾って訳してくれるように感じます。
自分の母語ではない言語で研究をする際、認知的な負荷がかかるのはもちろんですが、心理的なハードル・苦手意識でチャレンジを躊躇ってしまう人もいるかと思います。
こういったツールを活用することで、少しでも抵抗を減らせるといいですよね!
自分1人で完璧に英語を使いこなせるのが理想だな~と考える人も多いかと思いますが、ツールや他人など、外からの助けを使いこなすことも、大切な力なのかなと感じました。
【D3 井坪葉奈子】
2022.06.13
D6の平野です。アート鑑賞の方法論である「対話型鑑賞」のファシリテーションについて、博士論文審査の準備をしています。
学際情報学府には社会人大学院生のための長期履修制度があり、従来の年限の2倍まで(修士は4年、博士は6年)学生として在籍することができますが、私もD6になり、いよいよ背水の陣となっております。。
さて、今回のブログテーマは「研究に役立つウェブサイトやツール」ということで、「研究者を知る」をテーマに2つをご紹介したいと思います。
◆researchmap
1つ目はresearchmapです。researchmapは、国立情報学研究所が2009年から提供している研究者総覧データベースです。研究者自身が登録・更新するので、人によって内容に違いはありますが、研究者の論文や研究発表だけでなく、担当した授業や社会貢献活動なども登録されています(いちおう私の本務先は企業内研究所のため、私のresearchmapもあります)。
研究計画を立てるためのレビューを行っているときに陥りがちなこととして、先行研究をキーワードで検索し、バラバラと論文を読んでいくため、研究領域やそれを構成する主要な研究者といった全体像が見えにくいことが挙げられます。そんな中でresearchmapは、まず国内限定ではありますが、「人」という視点から研究領域を俯瞰できるシステムと言えます。
たとえば、昨今のキーワードのひとつとして「ラーニングアナリティクス」があります。ラーニングアナリティクス研究で有名な緒方広明先生のresearchmapを検索すると膨大な業績がありますが、そうした研究にたどり着く前に、モバイルラーニングやユビキタスラーニングの研究を行われてきたことがわかります。
このように、ある論文が検索にヒットしたとして、どんな研究をしてきた研究者がそれを主張しているのかを把握することができるなど、研究者がたどってきた研究履歴をたどることで、研究領域への理解の立体感が増すと言えるでしょう。
◆Twitter
2つ目はTwitterです。ご存知のとおりTwitterは世界有数のSNSですが、研究者の先生が普段どんなことを考えているか、どんな情報をウォッチしているか、知ることができるのはSNSの大きなメリットです。ある種、生きた人間としての研究者に出会うことができる場と言えるかもしれません。(いちおう私のTwitterもあります)
たとえば現・日本教育工学会会長の堀田龍也先生のTwitterには、文部科学省の会議や登壇されるイベントの情報をたびたび流してくださるので、堀田先生をフォローしていれば、初等中等教育において国や自治体レベルでどんなことに取り組まれているのか、動向を把握することができると言っても過言ではありません。また、シェアされる写真では出張先で食べたおいしいものが掲載されることも多く、大変いいなと思っております…!
それ以外にも、Twitterには海外の研究者も登録している場合があり、あの論文で読んだ研究者が、日々のよしなしごとを発信している!みたいなツイートに出会うこともあります。このように「研究者」という視点から研究を眺めることができるようになると、研究コミュニティへの参加に一歩を踏み出した状態と言えるかもしれないなと思います。
[平野智紀]
2022.06.03
こんにちは。修士1年の仲沢 実桜です。
私は、自身の仕事でもあるグラフィックレコーディング・グラフィックファシリテーションに対する問題意識から研究テーマを設定していて、対話などの場における、リアルタイムのビジュアライゼーション(可視化)の効果について探究しています。
さて、
今回の「研究に役立つウェブサイトやツール」というテーマと同様のテーマが、じつは本ブログで過去に何度か設定されてきました。よって、菊池さんにならって私も「2022ver」という表現を採用します。
同様のテーマの過去の記事が気になる人は、これらのリンク先から記事を辿って読んでみてください。
▶︎ 2007ver 9月あたりから辿る
▶︎ 2012ver 8月あたりから辿る
ここまでの記事を拝読しての所感としては、テーマの「研究に役立つ」という言葉をどう解釈して書くかという点(「研究にどう役立つのか」)も執筆者それぞれで、どこに目を付けるかも多様であるのがおもしろいと感じました。
私は、
【1】「研究の入り口に立つ時/立ち返るのに役立つ」という観点
【2】「研究の世界に馴染むのに役立つ」という観点
という2つの観点から、役に立つWebサイトを紹介したいと思います。
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【1】「研究の入り口に立つ時/立ち返るのに役立つ」webサイト紹介
:東京大学附属図書館Literacy
その中の特に次のページ
> データベースの活用法
> 文献管理ツール
ひとつ目に紹介する「東京大学附属図書館Literacy」は、「学術情報リテラシー」に関する情報をまとめたサイトで、学習や研究をすすめていくために役立つ情報が入手できるというものです。
「学術情報リテラシー」と言われてもピンと来ない人もぜひ、ページの見出しの言葉を見てみてください。「文献データベースを使う前にキーワードの幅を広げたい!」など、見出しから情報を見つけやすいように工夫されています。扱うテーマも「論文の構造」から「文献管理ツールの比較」「査読について」まで、研究という営み全体について体系的に概説されています。また、東大附属図書室が作成したサイトなだけあって、概説それぞれに関して参考図書が紹介されている点も特徴的です。
私も最近、このLiteracyの文献管理についての説明を参考にして、文献管理ツールを使い始めて、研究を効率化してくれていること実感しています。時間は有限である中で研究を進めるとなると、できるところで効率化を図ることは重要です。このことについては、少し前の加藤さんの記事でも言及されており、「Zotero」というツールが紹介されていましたね。
Literacyのデータベースの活用法というテーマに関連させて参照したいのは、山内先生が2007年7月に自身の領域に関連する「文献検索に役立つもの」を紹介していた こちらのエッセイ記事です。しかしツールを紹介するに終わらず、その続編のエッセイ記事では、ツールを使いこなすための思考の準備段階の観点を提示しています。
山内先生の「データベースがあれば目的の文献が探せるかというと、そう簡単ではない」という指摘はもっともで、ツール単体ではなく使い方まで含めて学ぶ必要があると私も思います。
今回のブログテーマ「役立つwebサイト・ツール」についても、各人がそのツールを「どのように使いこなしているか」を想像しながら読んでみるといいかもしれません。
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【2】「研究の世界に馴染むのに役立つ」webサイト紹介
:研究者のWebサイトや、学会のWebサイト
※検索ツールがあると、より楽しい
続いては、研究者のWebサイトや学会のWebサイトのを見ることの勧めです。
これによって、研究の世界と気軽に親しむことができてよいと感じています。
スマートフォンが身近になった私たちの生活では、私のように、気になることがあるとすぐ「ググる」(webブラウザで検索することの意)習慣がある人も多いのではないでしょうか。ときどきは全世界を対象にするのではなく、学術的世界に寄って情報を探索してみませんか。そうすることで、研究者の考え方や研究室の文化などのメタ的情報に親しむことができると考えています。
例えば、
「創造性」に関するキーワードについて知りたい時は、日本創造学会のwebサイトで「創造性キーワード集」というまとめがあります。そのページの執筆者や出典引用元もきちんと記されているので信頼性が高いですし、なにより研究者が自身の領域のキーワードを端的に説明してくれることがありがたいです。すでに知っているキーワードでも、「このように説明するのか!」という説明の仕方についての気づきが得られることもあります。
他にも、
研究者のwebサイトとして、授業でもお世話になっている藤本徹先生のwebサイト「Ludix Lab @ UTokyo」を紹介します。この山内研究室webサイトと同様に、藤本先生のサイトにもブログがあり、ゼミ活動の報告やゲーム学習に関連する理論の概説などの濃密な情報が発信されています。
このサイトは、サイト内の検索機能があるために探索がやりやすく、例えば、自分が今プレイしているゲームタイトルを入れて検索すれば、そのゲームについてゲーム学習の理論を参照しながら論じられているものが見つかることもあり、楽しいです。(私は、「リング・フィット・アドベンチャー」で検索したことがあります。)
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まとめに代えて
上で紹介した山内先生の過去のエッセイでも述べられていたように、ツールはツール単体では成立せず、そのツールを使う人があって初めて「役に立つ」という現象が起こり得るものです。
今回のブログテーマは、「研究に役立つウェブサイトやツール」ですが、ブログの文章を読むことで学べるのは、リストアップされたツール名のような顕在的情報だけではないはずです。私は、本ブログの記事や、本記事で紹介したようなwebサイトで情報を獲得することで、研究者らしい考え方や文化、姿勢などの潜在的な情報についても学ぶことができると考えます。このような学習の対象になる潜在的な情報のことを、「隠れた情報」とも呼んでみたくなりました。(教育学の用語「隠れたカリキュラム(hidden curriculum)」をオマージュして私が考えた言葉です。)
[仲沢 実桜]
P.S.=====
藤本徹先生、お誕生おめでとうございました!👏🥳