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2020.05.16

【研究計画】英語学習者のコミュニケーション能力の育成を促す会話の支援に関する研究(D1 井坪葉奈子)

こんにちは、D1の井坪です。
昨年度、「EFLでの会話を促進する事前学習に関する研究」という題で修士論文を提出し、今年度より博士課程に進学いたしました。今年度は修士論文の成果を投稿できる形にまとめつつ、博士課程受験時に提出した博士論文全体の計画を見直し、進めていこうと思います。

私は、「英語学習者のコミュニケーション能力の育成を促す会話の支援に関する研究」を行いたいと考えています。
グローバル化に伴い、より国際的な社会が築かれようとしている中、外国語でのコミュニケーション能力は一部の業種や職種だけではなく、生涯にわたる様々な場面で必要となることが想定されます(文部科学省 2018)。
その育成方法に関しては、認知的アプローチや社会文化的アプローチを背景とした、会話に参加することでコミュニケーション能力が育まれるという考え方が存在していますが、そこに対する支援はまだ十分とは言えません。例えば、①学習者は会話参加に困難を感じているという問題点や(小林 2006)、②意味交渉に繋がる活動やタスクについての検討を行っている論文は数多く存在しているものの、見解の相違がみられるなど、まだ確立されていない部分も多いという問題点が挙げられます。
学習者のコミュニケーション能力の育成において、学習環境デザインの観点からは、英語学習者がいかにコミュニケーションに参加するのを促すか、そしてその中でいかにコミュニケーション能力の育成につながるやり取りをすることを促すか、という2点が検討されるべきであると考え、修士研究で前者、博士研究で後者を扱いたいと考えています。

先日のゼミでは、コミュニケーション能力の育成というゴールが、2つの研究を包括した大きな目標として適切なのかに関して様々なご意見を頂戴し、現在見直している最中です。ゴール(学習目標)の設定と、そのゴールに応じた評価方法の選択は非常に重要なところだと思いますので、慎重に検討していきたいと思います。

【井坪葉奈子】

2020.04.28

【研究計画】美術鑑賞における協調学習のデザインに関する研究(D4 平野智紀)

D4の平野智紀です。私は「美術鑑賞における協調学習のデザインに関する研究」というタイトルで博士論文を執筆しています。美術館や学校で、あるいは企業でも、広く行われるようになってきた対話型鑑賞について、アートならではの学習を引き起こす方法論を探究しています。対話型鑑賞では、ナビゲイター(ファシリテーター)が司会進行役として、複数の鑑賞者が話し合いながらアート作品の解釈を深めていきます。

これまで、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)によるACOP:アート・コミュニケーションプロジェクトをフィールドに、2つの実証研究を行ってきました。

1本目の研究「対話型鑑賞における鑑賞者同士の学習支援に関する研究」では、ナビゲイターによる働きかけに加え、鑑賞者が他の鑑賞者の発言を引用して話すことに着目し、4名のナビゲイターによる2回の異なる作品鑑賞における発話を比較する研究を行いました。

対話型鑑賞における鑑賞者同士の学習支援に関する研究
https://doi.org/10.24455/aaej.36.0_365

2本目の研究「対話型鑑賞のファシリテーションにおける情報提供のあり方」では、ナビゲイターが鑑賞中に行う情報提供について、提供された情報の分類とその意図を整理した上で、その情報が鑑賞者の鑑賞の役に立っていたか、という視点で、9名のナビゲイターによる同一作品の複数回の鑑賞における発話を比較する研究を行いました。

対話型鑑賞のファシリテーションにおける情報提供のあり方
https://doi.org/10.15077/jjet.43034

博士論文では、これら2つの実証研究を統合し、美術鑑賞における協調学習のデザインに資する知見を導出することが求められます。とくにゼミで指摘をいただいているのは、アートの領域における学習ならではの知見を導く必要性です。他者の意見を踏まえること(研究1)、必要に応じて情報提供をすること(研究2)、というだけでは、一般的な学習の原則にしかなりません。

絵を見るとはどういうことか。福原義春編『100人で語る美術館の未来』(慶応義塾大学出版会、2011年)に、まさにそうしたタイトルで、佐伯胖先生による基調講演の様子が掲載されています。作品の世界に出たり入ったり、この試行錯誤が、複数人で対話を通して鑑賞するときのおもしろさのひとつだと感じます。

事例報告で紹介されたガードナー美術館の映像では、先生が生徒に「What's going on?」と質問していました。それは「何が起こっている?」というところの世界に自分自身を投入してみる、もっと中に入ることです。それを私は鑑賞(appreciation)と呼びます。そういう、世界の中に入り込んで、そこで生きてみるというとらえ方に対して、その次の段階があります。つまり、意味理解に立ち止まる段階です。さきほど、「統合による分析」の話をしましたが、統合ということは、自分で決めてしまったら、その統合の中で部分を解釈します。ところが部分の座りがよくないときに、もう一回統合のし直しをします。全体とは異なるものの集まりなのではないか、あるいは、ここのまとまりを一つのまとまりと見るとどうだろうか、むしろこういう大きなまとまりの一部だったのかもしれない、というように、まとまりそのもののとらえ直しを瞬間的に行うときに一瞬立ち止まります。省察(reflection)ともいうんですが、「これってどういうことなんだろう」と、もう一度見直す瞬間がある。p.39

コロナ禍により、人が集まって対話をすること自体が難しい世の中になっておりますが、私はまたアートを介した対話を楽しめる日が来ることを信じて、研究を進めたいと思います。

平野智紀/内田洋行教育総合研究所

2020.04.15

【研究計画】大学生を対象としたフロー体験を促進する支援(M2 小野寺萌美)

M2の小野寺萌美です。

最近は世界的な感染症対応に追われ、心穏やかな日々を過ごせているとは言い難い状況が続いておりますが、どうか皆様もお身体や周りの方々を大切に、健康にお過ごしくださいますように。当研究室でも、今年の夏季入試への進学相談について、オンラインでの取り組みをすることになりました。ご関心がある方はぜひご覧になってください。
【お知らせ】夏期入試にむけたZoomによる進学相談

さて、今回は私の研究概要について少々ご説明させていただきたいと思います。
私は読書活動におけるフロー体験の促進と学習効果の関係性についての研究を行っています。
私がこの研究を行うまでのバックグラウンドについては前回の記事に記述しておりますのでそちらも併せてご覧いただければと思います。

フロー理論とは、Csikszentmihalyiが提唱した「全人的に行為に没入している時に人が感ずる包括的感覚」についての理論で、現在フローについては、以下の2つの生起条件と6つの特徴から説明されています。

フローの生起条件
・挑戦と技能のレベルが釣り合っていること
・即時のフィードバックがあること

フローの特徴
・目の前の物事への集中の統制
・行為と意識の融合
・自意識の喪失
・自己を完全に統制できる感覚
・時間感覚の歪み
・活動の内発的な報酬

(Csikszentmihalyi,1990 Nakamura & Csikezentmihalyi, 2013を基に再構成)

このようなフロー体験は読書活動を行っている際にも見られます。例えば、本を読み終わって気が付いたら朝になっていた、物語の登場人物に感情移入して、自分のことのように泣いたり笑ったりする、などといったことがその例です。
このフローを第三者が促進する支援を行うことができると考えていて、どのような方法を用いるのが適切か、ということを考えています。

最後になりますが、現在この研究の調査として読書に関するアンケートを行っております。
数問程度の簡単なものですので、この記事をご覧になった方はぜひともご協力ください。
またこのアンケートは多くのデータを必要としています。
ですので、拡散するお手伝いをしていただければ幸いです。
アンケートはこちら


次回からは他のメンバーの研究計画についての記事が続きます。
当研究室の研究にご関心がある方はぜひ今後ともチェックしてみてください。

【小野寺 萌美】

2020.04.08

【お知らせ】夏期入試にむけたZoomによる進学相談

研究室にご関心をお持ちで、大学院学際情報学府夏季入試の受験を考えていらっしゃる方に対して、Zoomによる進学相談を以下の要領で受け入れています。
ご活用ください。

期間:2020年4月9日(木)から7月9日(木)
実施日:毎週木曜日12時から13時
方法:Zoomによる遠隔相談

内容:
山内との相談(15分)
※受験の公平性を確保するため、研究計画に関するコメントはできません。
ゼミの運営や研究プロジェクトについて質問を受けます。
(大学院生も同席します)
大学院生との相談(45分)
※研究室の雰囲気やどんな人がどんな研究をしているのかを聞いてください。
大学院生は審査に関わりませんので、研究計画について意見を求めてもかまいません。
(山内は退席します)

希望される方は、研究テーマ(担当する大学院生を選ぶ際の参考にします)を書いていただいた上で、このブログの一番下にあるコンタクトアドレス宛にメールしてください。

また、6月6日(土)に大学院学際情報学府および文化・人間情報学コースの入試説明会がオンライン開催されます。
詳細が決まりましたら研究室のウェブサイトでお知らせします。

2020.03.10

【Press Release】STEAM教育に関する研究を開始

Makeblock社の支援によりSTEAM教育に関する研究を開始

 東京大学大学院情報学環 山内研究室は、2020年4月1日よりSTEAM教育に関する研究プロジェクトを開始いたします。この研究は、世界140ヶ国以上でSTEAM教育ソリューションを提供するMakeblock Co., Ltd.からの支援を受けて行われます。期間は2年間を予定しており、年に1度、研究経過の発表の場としてSTEAM Education Conference (仮称) を開催する予定です。
STEAM教育とは、「Science (科学), Technology (技術), Engineering (工学), Art (芸術), Mathematics (数学) 」の頭文字をとったものです。もともと教科の枠組みを超えて科学・技術・工学・数学を横断的かつ探究的に学ぶフレームワークとして「STEM教育」という概念がありましたが、昨今の急速な技術革新に対応できる人材育成を意識して、基盤としての創造的経験を担保するために芸術が導入されたという経緯があります。
STEAM教育は新しい教育潮流として日本においても注目を集めつつありますが、学習指導要領とどのように整合させていくのか、芸術の持つ創造的な側面をどうカリキュラムに統合するのか、授業をどのように評価するかなど、課題が山積している状況です。
 
研究の概要
1. 期間:2020年4月より2年間
2. 研究テーマ
     a. STEAM教育の歴史・概念・実践の整理
     b. 日本の初等中等教育におけるSTEAM教育のカリキュラム的位置づけ
     c. STEAM教育・教材の評価方法の開発
3. 研究成果の公開:学会発表・学術論文・教育関係者向けのSTEAM教育ガイドブックなど
4. 研究に関連したイベント:教育関係者を対象とした研究会およびカンファレンスの実施

研究の実施者
東京大学大学院 情報学環 山内研究室 (https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/)

教授 山内 祐平
愛媛県出身。大阪大学大学院修了後、大阪大学人間科学部助手、茨城大学人文学部講師、東京大学大学院情報学環准教授を経て現職。デジタル教材の開発や反転学習のデザインなど、情報化社会における学習環境のあり方について研究している。

特任研究員 杉山 昂平
兵庫県出身。東京大学大学院学際情報学府博士課程を経て現職。学習科学の観点から趣味を研究している。深く遊び楽しむことと学びが結びついた、興味に駆動された学習環境に関心がある。   
   

お問い合わせ先
本リリースに関するお問い合わせは以下にご連絡ください。
東京大学大学院情報学環 山内研究室
担当:杉山 昂平 (iiiylabcontact[atmark]gmail.com)

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