BLOG & NEWS

2009.01.13

【エッセイ】デジタルネイティブ

今年から、学部向けの授業の発表でパワーポイントなどの提示メディアを使う学生の比率が9割以上になっています。ちなみに昨年までは1割以下で、ほとんどレジュメでした。
高等学校で情報科が必修になった学年が大学3年生になったことが最大の要因かと思いますが、それ以外にもネットブックユーザーの増加など、メディア利用動向が変化してきていることが実感できます。
Gartner Researchでは、90年代以降に生まれ、物心ついたころからネットなどのデジタル技術とともに育った世代をデジタルネイティブと呼んで、社会行動の変化を予測しています。学術的に正確に定義された用語ではありませんが、仮説としては面白いと思います。ちなみに、デジタルネイティブの前の世代はデジタル移民と呼ばれています。
変化への適応力があり、変革への強い指向性を持つデジタルネイティブは、あと10年もすれば社会をになう層になります。そのときに何が起きるのか、楽しみです。

[山内 祐平]

2009.01.08

【クローズアップ教材】海外の博物館とOCW

みなさま、今年もどうぞよろしくお願い致します。
ということで、新年最初の【クローズアップ教材】第4回は、年男の池尻良平が担当させていただきます。

さて個人的な話ですが、私は非常に飛行機が苦手で、あの飛び立つ瞬間の重力のかかり方や、落ちるのではないかという不安感から、いまだ海外に行ったことがありません。そのため、西洋史学科だった学部生の頃は、現地の博物館や図書館に行って直接史料を見るという発想が全くありませんでした。いやー、情けない話ですね。

ところがその分、どうにかして飛行機に乗らずにヨーロッパの史料を見られないかと必死になり、ネットで博物館や図書館の史料を閲覧できる方法をよく探していました。

そこで今回は、単に授業の様子をビデオで流したり、レジュメやメモを添付しているタイプのOCWとは一味違った、海外の博物館や図書館の史料が載っているFathomというOCWについて紹介したいと思います。

Fathomは1999年にコロンビア大学によって作られたウェブサイトで、
American Film Institute
British Library
British Museum(展示物が説明つきで多数紹介されています。オススメです。)
Natural History Museum
Victoria & Albert Museum
Woods Hole Oceanographic Institution
など14の教育機関、文化施設によって高度な教育コンテンツが提供されています。

Fathom自体は残念ながら2003年に活動が終わり、今はコロンビア大学のデジタルメディア活動の機関の一部になっているのですが、当時は全世界52カ国、教授や学生など6万5000人が無料セミナーを受講するくらいの大人気だったそうです。今はその当時のおよそ100のセミナーが無料で見られるようになっています。

では、なぜ私が現在進行形の博物館のサイトや図書館のサイトではなく、このFathomを紹介しているかというと、いまや資料のデータベースや説明つきの展示物の画像データを公開しているサイトはたくさんあっても、それがどういう価値を持つのか、それから何が言えるのかまで踏み込んだものがあまりないからです。

私も学部生の頃、海外のデータベースをたくさん見てまわりましたが、説明があってもそれだけではちんぷんかんぷんなものが多く、正直あまり有効に活用できませんでした。その点、Fathomは資料や展示物を講義形式で紹介してくれるので、その展示物から何が言えるのか、その資料から何がわかるのかが大きな流れで理解しやすく、読んでいてわくわくするのです。

ちょっとコンテンツを覗いてみましょう。
例えば、
Ancient Egyptian Society and Family Lifeでは、古代エジプトの石版や偶像などの貴重な資料を紹介しつつ、子どもや女性の位置づけについて紹介しています。

他にも、
Jaws: The Natural History of Sharksではサメの生態の歴史について、歯の化石や背びれなどの違いがわかる資料を使いながら紹介しています。

後は、
The Theatrical Baroque: European Plays, Painting and Poetry, 1575-1725では、シェークスピアの時代のバロック調の絵画などが多数展示され、近代美術を視覚的にも学べるように作られています。

私が個人的に好きなものは、
Outer Worlds and Inner Worlds: An Introduction to World Mapsで、中世のころに考えられていた地球全体のイメージを、ヨーロッパの地図、中国の地図、アラブの地図の写真を載せながら紹介しながら、当時の人が考えていた内部の世界、外部の世界について講義をしています。たまりません。

他にも教養の教科書のような内容が英文で書かれているので、TOEFLを勉強している人にとってはいい勉強材料になると思います。


このように、単に大学の講義を流すだけでなく、世界中の博物館や図書館に眠っている資料を世界中に向けて紹介する形で博物館などの文化施設にOCWを活用してもらうと、それを見ることがきっかけで新しい知的好奇心が各地で起こり、今までとは違う研究の流れが起こるのではないかと思います。

「眠っている資料や展示物」+「デジタルアーカイブ化」+「ときほぐしながら紹介してくれる人(OCW)」によって、飛行機嫌いな人にやさしい研究環境が訪れることを切に願っております。

それでは、みなさまにとって2009年が躍進の年となりますように...。

[池尻 良平]

2009.01.06

【イベント】美術と身体 ~毎晩布団を敷くときに怒られた~

1月19日にEduce Cafe「美術と身体〜毎晩、布団を敷くときに怒られた〜」を開催します。
今回のEduce Cafeではゲストに榎本寿紀さん(美術家/ワークショップ・エデュケーター)をおむかえし、感覚・身体をフル稼働させながら学べるダイナミックな美術プログラムの事例や、実際にワークショップをどうやって企画するかについてお話を伺います。
また、沢山の「素材」「道具」をお持ちいただける予定ですので、即興で体験型の活動も交えて楽しい時間にできたらと思っております。

■ 開催日時
2009年1月19日(月)18時〜21時

■ 開催場所
東京大学 情報学環・福武ホール
B2階 福武ラーニングスタジオ2-3

■ゲスト:榎本寿紀(美術家)
1963年東京生まれ。武蔵野美術大学大学院修了。
武蔵野美術大学非常勤講師,大妻女子短期大学非常勤講師,
目黒区美術館/ワークショップ・エデュケーター

○専門分野
天然の事象、日常の中で出会った植物、鉱物の収集を通してイマジネーションを得、同時にこれらを植物染料や天然顔料として用いた作品制作・創作活動のかたわら、目黒区美術館ワークショップ・エデュケーターとして、子供から大人までの美術プログラムに関わる。また、小学校や高校、児童館、他美術館では、作家としての創作活動をワークショップとして展開している。

○過去のワークショップ実践
1989年 目黒区美術館 手と目の冒険広場 /木−型と板 空飛ぶ空中水族館
1991年 目黒区美術館 手と目の冒険広場 /銅・版・画 版物語
1991-現在 目黒区美術館/ワークショップ・エデュケーター
1993年 平塚市美術館 シャガール探検隊がゆく
1995年 三鷹芸術文化センター ファイバーラビリンズ
2003年 横須賀市美術館開設準備室 水と遊ぼう
2006年 群馬県立館林美術館 植物アレンジメント--変容する植物たち
     板橋区立美術館 こんな夢を見た--ぜったいありえない世界のお話
2007年 (株) 東芝/デザイナー研修 三鷹天命反転住宅
     九州大学 現代美術の表現ー素材からⅠ 自然から天然絵の具を作る 
     目黒区立向原小学校
2008年 目黒区図工部会研修会 三鷹天命反転住宅

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Educe Cafeではお飲み物などをお出しいたします。
その場にいる人みんなが顔見知りになってお帰りいただけるよ
うな、アットホームな会にしたいと考えております。

学生の方から大学・企業にお勤めのかたまで、
ぜひEduce Cafeにおいでください!

■定員:15名
(先着順とさせていただきます。ご了承ください。)

■参加費:一般・学生とも2000円

■ 参加方法:
下記フォームに必要事項をお書き込みいただき、
cafe@educetech.org
までメールにてご連絡ください。

〆ココカラ=======================================
参加申し込みフォーム
cafe@educetech.orgまで
1月10日までにお申し込み下さい
人数が多数の場合は先着順とさせていただきます。

Educe Cafe (1/19) に申し込みます。

氏名:

フリガナ:

所属:

メールアドレス:

この情報をお知りになったきっかけ:

ご興味をもたれた理由などありましたらお願いします
(                       )

=====主催団体およびEduce Cafeについて========
特定非営利活動法人Educe Technologiesは、新しい時代にふさわしい「学びあう社会」を作り上げるために、研究会やシンポジウムなどを開催しています。
http://www.educetech.org/

このNPOの活動として2007年に始まったのが「Educe Cafe(エデュース・カフェ)」です。詳しくは下記URLをご覧ください。
http://www.educetech.org/e_cafe.html
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2009.01.01

【新年のご挨拶】研究の「ちから」

2009年になりました。
めまぐるしい変化の中で未来の方向性を探ることが困難な時代ですが、こういう時だからこそ研究活動の重要性が増しているのではないでしょうか。
領域によって方法の違いはありますが、研究の「ちから」は、本質を見ようとすること・深く考えようとすることという2つのパースペクティブからもたらされるように思います。
この原点に立ち返ることにより、多くの人たちの心を動かせる研究を、研究室のみなさんと生み出していきたいと考えています。今年もよろしくお願いいたします。

[山内 祐平]

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