BLOG & NEWS

2023.04.28

【お知らせ】大学院夏季入試研究室説明会

5月20日(土)より、山内研究室が所属する大学院学際情報学府の入試説明会がオンデマンド形式で開催されます。
詳細は決まり次第こちらのサイトに告知されますので、受験をお考えの方はご確認をお願いします。

大学院学際情報学府の入試説明会に引き続き、研究室説明会を以下の日程で開催します。
(Zoomによるオンライン開催)

5月25日(木)16時30分から17時30分まで

16時30分〜16時45分:研究室の概要説明 と質疑応答 ※1
16時45分〜17時00分:大学院生・スタッフの自己紹介
17時00分〜17時30分:大学院生・スタッフとの個別相談 ※2

※1 受験の公平性を確保するため、研究計画に関するコメントはできません。
ゼミの運営や研究プロジェクトについて質問を受けます。
大学院生・スタッフとの相談
※2 研究室の雰囲気や研究の内容について聞いてください。
大学院生・スタッフは審査に関わりませんので、研究計画について意見を求めてもかまいません。

参加を希望される方は、こちらからお申し込みください。

2023.04.25

2022年度 春の合宿研究会 レポート

皆さまこんにちは、M2になりました田中です。
今回は、今年3月に千葉県いすみ市方面にて実施した、春の合宿研究会について紹介しようと思います。

夏の合宿研究会は、学習科学の古典理論を中心としたプログラムであったのに対して、
(参考:2022夏 合宿研究会 活動報告(学者レビュー会))
春の合宿研究会は、学習環境研究の多様な方法論に関するプログラムになっています。

研究会では、まずNPOいすみライフスタイル研究所の江崎亮様に、地域が抱えている困りごとを大学と連携しつつサポートするいすみライフスタイル研究所の取り組みについて紹介していただきました。
また、講演いただいた内容から、介入を行う学習環境研究において欠かせない、実践連携先との関係構築についてディスカッションを行いました。
私たちが日々接している研究も、実践先や研究協力者の協力なしにはできないことばかりなので、実際に地域の方が抱えている問題や、それを支えているいすみライフスタイル研究所の方たちのリアルな事情や困りごとをお聞きできたのはとてもありがたい機会でした。

江崎様のプログラムの後は、学習環境研究における多様な研究方法や分析方法(質的分析、量的分析など)についての講演とディスカッションを行い、様々な研究法への理解を深めました。

二日間通して、実際に現場で学習を支援したり評価したりする際のリアルな難しさや困りごと、またそのやりがいや楽しさについて、いろいろな研究手法や立場から見つめ直す機会となりました。
M2の私は、まさにこれから自分の研究を実際に組み立てていこうというところなので、これからの1年でこの研究会の内容を再度噛みしめ直すことになるのかな、と想像しています。

ちなみに、研究会の二日間、研究プログラムがみっちり入っていてバタバタではありましたが、江崎様が「ぜひ見てほしい」とおっしゃっていた九十九里海岸を、空き時間でメンバーが写真におさめて共有してくれたので、こちらでも紹介しようと思います。ずばーっと開けた開放感がすごいですね。

2023.04.21

自分の研究に影響を与えた書籍の紹介 (M2加藤亮介)

本を手に取ると読んだ時の風景を思い出すことがある。

私が『古代への情熱 ―シュリーマン自伝―』を読んでいたのは前職の会社の外階段だった。昼休みを早めに切り上げて、7階にあった私の職場と一つ上、最上階の8階の間にある階段、人通りの少ないあの階段に腰掛け、中古で買った文庫本を開いていた。

その本を知ったのは確か語学学習についての本を読んでいる時だったと思う。会社で英語を、趣味で中国語の勉強を続けていた私は、どこか当時の勉強に行き詰まりを感じていた。営業の仕事自体にも慣れていなかったので、自分の中で順調なものが何も見つからない。そんな時期だった。シュリーマンと言えばトロヤ遺跡を執念で発見した人物で、その語学学習の本には彼が実践した語学の勉強法が紹介されていた。勉強法を知るだけならその本だけで十分だったが、引用元が彼の自伝になっていたのが妙に印象的で、細かい勉強法をわざわざ自伝に書く人に興味がわいた。

自伝だから例のごとく幼少期の思い出から始まるが、シュリーマンの幼少期は壮絶なものだった。ドイツの地方都市の貧しい説教師の父の下に生まれたシュリーマンは、9歳で母を亡くし、11歳でギムナジウムに入学、大学への道が開かれたと思った矢先、父が停職となり3か月で退学、実科学校に転校し3年で卒業して小売店に就職する。14歳の時である。いかにも恵まれない人の境遇と言えばそうだが、その境遇を覆うようにシュリーマンの勉強への熱意がつづられている。ホメロスの英雄伝を語り、ラテン語を教える父、様々な逸話を記憶し弁が立つ村の仕立て屋、ホメロスを暗唱して聞かせる粉屋の職人。彼が幼少期に出会った誰もが社会的地位が高いとは言えない「落ちこぼれ」であった。ただ、そんな彼らに出会いによって当時は伝説と思われていたトロヤの町を発見するという夢を持ち続け、49歳でトロヤを発見することになる。15か国語を話せるようになった、という肝心の彼の勉強法はほとんど記憶に残らなかったが、自分の想いに向かってひたすらに突き進む姿に一学び手としてあこがれた。この本が決め手というわけではないが、「探究学習」や「学校外での学び」が私の中心的なテーマであり続けるのは、シュリーマンのようなどんな逆境でも目的に向かって経験を組み立てていく学習者像に惹かれているからかもしれない。

久しぶりにこの本を手に取ると、ビルの間から車が行きかうあの景色を思い出した。会社を辞めて1年、建て直しがありそのビルはもうない。それでも、あの頃にあこがれたものを今の自分が形にできているか、この本があればあの階段に腰掛けて考えることができそうだ。

(後日談)
今回の執筆にあたり少し調べてみると、シュリーマンの自伝の記述にはかなり脚色があるようで、幼少期にトロヤ発掘を志したというのは後付けの創作、実際は15か国語も話せなかったという指摘もある(『甦るトロイア戦争』)。それでも今回の本の紹介をしたのは当時私が出会った「シュリーマン」を伝えたかったからだ。

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