2014.04.28
みなさま、こんにちは。
修士2年の中村絵里です。
新年度の慌ただしさが過ぎたと思うと、世間はもうゴールデンウィークですね。
昨年度と比べると、授業の履修登録数が激減しましたので、課題に費やす時間は随分少なくなりました。しかし一方で、自分自身の研究のための時間を、どう調整していくかが重要になってきました。この1カ月、自分なりに調整しながら過ごしましたが、まだ上手な時間配分ができていないと実感しています。連休で頭をクリアにしてから、どんどんペースを上げていきたいと思います。
今年度の研究計画について、まとめます。
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■研究タイトル(案)
開発途上国における初等教育への親の参加に関する研究
―モンゴルの遊牧民コミュニティを事例として―
■背景
2011年時点で、世界では5,700万人の就学適齢期の子どもが学校に通っておらず(United Nations,2013)、これらの子ども達の就学を妨げる要因は大きく4つに分類できる。(1)学校・設備・教材の不足等の外部環境のハード面、(2)教員の不在、教育の質の問題、偏見・格差等外部環境のソフト面、(3)家族の経済的および健康的理由等の内部環境のハード面、(4)親や地域社会による教育に対する認識の格差、文化・宗教的理由等の内部環境のソフト面。
国連ミレニアム計画(Millennium Development Goals: MDGs)では、8つある目標のうち、目標2.「普遍的な初等教育の達成」として、 すべての子どもたちが、男女の区別なく、初等教育の全課程を修了できるようにすることを掲げている。これまでの目標2.の達成状況を見ると、後発開発途上国において、1990年には、初等学校に入学した子どもの割合は53%であったが、2011年には81%に向上したほか、世界全体では、学校に通っていない子どもの数が、1億2,000万人(2000年)から5,700万人(2011年)とほぼ半減した(United Nations, 2013)ものの、目標達成期限の2015年までに、すべての子ども達が初等教育の全課程を修了できるようになることは、絶望的な状況である。
本研究では、就学を妨げる要因のうち、内部環境のソフト面(4)親や地域社会による教育に対する認識の格差に着目する。親や地域社会が、教育に対する認識を深めるためには、どのような支援方法があるかについて、フィールド調査と実践を基に評価を行う。研究対象を、国の平均値ならびに都市部の数値と比較して、初等教育の留年率や退学率が高いモンゴルの地方の遊牧民のコミュニティ(Save the Children Japan, 2013)とする。
対象国モンゴルの教育に関わる背景を調査するために、3月にモンゴルのウブルハンガイ県とアルハンガイ県を訪問・調査した結果、初等教育に関わる問題点として、次のことが明らかとなった。家から学校までが遠い、親が学校に行く機会が少ない、親同士が子どもの教育について話す機会がない、先生に対して親から意見を言いづらい、非識字の親(1990年以降の民主化への過渡期に就学適齢だった世代)が増えており、家庭で就学前教育や小学校入学後の教育を、親が支援することが困難になってきている。
■目的
初等教育への認識が十分でない親が、子どもの教育に関する情報を共有できる場に参加することによって、家庭で子どもの教育に関与する機会が増えること。
■方法
モンゴルの郡にある小学校に来年度(9月から)入学する予定の5歳児の親(父親・母親)を対象として、ワークショップを実施する。その際、ワークショップの成果物(何らかのメディアを使ったもの、例えばビデオ映像など)を、ワークショップに参加していない別の遊牧民コミュニティとも共有する。
■評価
ワークショップの開催前後で、参加者に対して質問紙調査とインタビューを行う。ただし、質問紙調査については、非識字の親のことを考慮に入れ、事前に用紙を配布する方法ではなく、ワークショップ当日に、口頭で文面を読み上げる等の工夫をしたい。
【中村絵里】
2014.04.20
こんにちは。まだまだ、朝晩は冷えますが
桜も散って、すっかり新しい生活にも慣れてきましたね。
新年度第2回目のBlogはM2の池田めぐみが担当させて頂きます。
私はざっくりいうと、高校生向けのノンフォーマルなキャリア教育の実践プログラムを考え、その効果を測るというような研究をしたいと思っています。
また、現状のキャリア教育の①将来の見通しを一つにしぼりこませる傾向と②高大接続において、大学でのノンフォーマルな活動を軽視している点に違和感を覚えています。
そこで、4月2日に行われた学際情報学府の修士論文構想発表会に以下のような研究計画のアブストラクトを提出しました。
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技術の進化とグローバル化により、労働と雇用の在り方が変革期を迎え(Gratton 2011)若者を取り巻く 労働環境も厳しさを増している。また、大学全入時代に突入し"とりあえず"進学する若者が増え(文部科学省 2006)退学率も上昇している。これらのことから高校でのキャリア教育は重要度を増しており、実際に高校ではインターンシップや社会人の講演、大学の授業の聴講など、将来の見通しの形成を重要視した取り組みがなされている。しかし現行のキャリア教育には以下二点において問題がある。1つは、将来の見通しを一つに限定する危うさを意識できていない点である。児美川(2012)が、「この先は一人の人間が40年以上同じ仕事を続け、同じ会社で働くという時代ではなくなり、途中で転換する力も必要になってくる。すなわち、個人がキャリアを開発する時代であり、キャリア教育にはこうしたことへの視野が必要である」と指摘するように、個々人のキャリア転換が頻繁に行われる社会において、見通しを1つに絞り込ませる現行のキャリア教育では、その職業が未来においてなくなった場合、その職業に当人がつけそうになくなった場合危険をはらむ。もう1つは、高大接続において、大学におけるノンフォーマルな学びを軽視している点である。政策研究・研修機構(2007)の進路が決定した大学4年生向けの調査によると、「進路選択で役立った大学の経験」として「経験の場」(ゼミ・研究、授業、サークル活動、アルバイトなど)を挙げる学生が全体の59.3%いること、中でも授業・講義よりも、サークル活動や、アルバイト・仕事を重要と挙げる学生の方が、相対的に多かったことが明らかになっている。このように、ノンフォーマルな活動が進路選択に影響を与えることが明らかになっているにも関わらず、現行の高大接続の取り組みにおいては、学部選びにおける大学の授業の聴講等正課内の学習しか着目されておらず、高校生が大学生の正課外の学びについて知らないのが現状である。そこで、本研究では学びに着目しながら参加者の興味にそった参加者のとりうる複数のキャリア展望を描く高校生向けのークショップを開発し、その効果検証を行う。
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しかし、ご覧の通り、今の研究計画のままでは
実践の計画がうんぬんの前に
自分が問題だと感じる部分を綺麗に、しっかりと指摘することができていません。
なので、先行研究をレビューし、現行の高校でのキャリア教育の問題点の指摘をしっかりできるようにするというのが今の課題です。
よって研究の方向性もかわるかもですな。
ぬううううう!がんばらねば!えむに。。。。。。。。。!
そんな感じで、未熟に未熟を重ねたような私ですが今年度もどうぞよろしくお願いします。。。。。。。。!
【池田めぐみ】
2014.04.13
みなさま、こんにちは。
ylab修士2年の青木智寛です。本年度もどうぞよろしくお願いします。
早いもので、修士生活2年目=修士生として折り返しの地点にやってきました。
去年の今頃、まだ何もわからなかった頃に比べると、かなり専門的な内容に関する知識も増え、自分の関心のある領域において、どのような研究が盛んに行われており、何が問題として挙がっているか、ある程度全体像を把握できるようになりました。
1年間ひたすら調べる活動を続け、年度末には実際に高校生にインタビューすることもでき、現在、より具体的に自分の研究の形を作っている最中です。
まだ、暫定的なものではありますが、現時点では以下のような研究を進めようと思っております。
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●他者との相互作用を用いた学習計画のプランニング支援システムの開発と評価●
【背景】
近年、教育における「自ら学ぶ力」をもった自律的な学習者の育成が重要視されており(市川 1995)、人の学習の自律性について説明する理論としては、自己調整学習という理論が注目されている。
自己調整学習とは、「学習者が課題の解決のために計画を立て、モニタリングを通じて、自らの認知、行動、意欲の調整を図る過程」(Hadwin et al. 2011)のことである。
人間の認知的活動には認知的活動とメタ認知的活動の2つがあり、ともに自己調整学習における重要な役割を果たす。メタ認知に関する学習方略は自己調整学習の要素として必ず含まれている方略であり(佐藤 1998)、おもに認知の調整と制御に焦点をあてている。具体的には、課題を分析して目標を設定する「プランニング」や、自分自身の理解を確認するため自問自答する「モニタリング」、自分の認知活動がうまくいくように整える「調整・制御」などがある(Pintrich et al., 1993)。これらのメタ認知的な学習の要素に着目すると、プランニングに焦点をあてた研究がいくつか見受けられる。
学習課題を先延ばししないためには正確なプランニングをすることが有効であり、(藤田 2010)学習者は成長に従ってプランニング方略を習得していく(野上,丸野 2005)ことが明らかになっている一方で、プランニングに対する知識を習得することは必ずしもその実行につながるわけではないことも指摘されている(Pintrich & Schrauben 1992)。森(2004)の研究によれば、プランニングに対する知識があっても、そのコストを認知していると使用が抑制される。
実際、私が高校生を対象におこなったインタビューでも、定期テストまでに与えられた学習内容について勉強しなければならないことはわかっており、それを実現するために学習計画を立てる方法は知っていながらも、実際に計画を立てるには至らないと言った声を多く聞いた。
【目的】
そこで本研究では、学習者がプランニングを実際に行うことができるようになるために、プランニング方略に対する「有効性の認知」に着目する。有効性の認知によって自身のプランニング方略の調整をするシステムを開発し、実践を通じて評価することを目的とする。
【方法】
プランニング方略の価値を認識させるために、「他者との相互作用」を利用する。他者との相互作用とは学習者同士で可視化されたプランニングの調整過程を確認し、それをもとにコミュニケーションを取ることである。これを実現するためのアプリケーションを開発する。
(UIについては検討中)
【実践】
対象期間: 定期テスト前の2~4 週間(中長期におけるプランニング調整の変化を追う)
対象とする学習者: 高校生(学習者はプランニング調整能力の発達段階にあると思われる)
学習目標: 定期テストにおいて試験範囲に含まれる学習課題を完了させること
1グループ10名前後の学習者の集団に、支援システムを利用しながら学習を進めてもらう。
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...と研究計画を立てたものの、研究の意義や、成功可能性など、詰めるべき部分は多々残されており、まだまだ根本からひっくり返る可能性を残したものとなっております。
今後もさらに先行研究を調べ、問題の明確化、支援原理の必然性なども含めて、柔軟に研究計画をブラッシュアップしていきたいと思います。
【青木智寛】