2014.04.13

【今年度の研究計画】他者との相互作用を用いた学習計画のプランニング支援システムの開発と評価


みなさま、こんにちは。
ylab修士2年の青木智寛です。本年度もどうぞよろしくお願いします。
早いもので、修士生活2年目=修士生として折り返しの地点にやってきました。
去年の今頃、まだ何もわからなかった頃に比べると、かなり専門的な内容に関する知識も増え、自分の関心のある領域において、どのような研究が盛んに行われており、何が問題として挙がっているか、ある程度全体像を把握できるようになりました。
1年間ひたすら調べる活動を続け、年度末には実際に高校生にインタビューすることもでき、現在、より具体的に自分の研究の形を作っている最中です。
まだ、暫定的なものではありますが、現時点では以下のような研究を進めようと思っております。

-----
●他者との相互作用を用いた学習計画のプランニング支援システムの開発と評価●


【背景】
 近年、教育における「自ら学ぶ力」をもった自律的な学習者の育成が重要視されており(市川 1995)、人の学習の自律性について説明する理論としては、自己調整学習という理論が注目されている。
 自己調整学習とは、「学習者が課題の解決のために計画を立て、モニタリングを通じて、自らの認知、行動、意欲の調整を図る過程」(Hadwin et al. 2011)のことである。
 人間の認知的活動には認知的活動とメタ認知的活動の2つがあり、ともに自己調整学習における重要な役割を果たす。メタ認知に関する学習方略は自己調整学習の要素として必ず含まれている方略であり(佐藤 1998)、おもに認知の調整と制御に焦点をあてている。具体的には、課題を分析して目標を設定する「プランニング」や、自分自身の理解を確認するため自問自答する「モニタリング」、自分の認知活動がうまくいくように整える「調整・制御」などがある(Pintrich et al., 1993)。これらのメタ認知的な学習の要素に着目すると、プランニングに焦点をあてた研究がいくつか見受けられる。
 学習課題を先延ばししないためには正確なプランニングをすることが有効であり、(藤田 2010)学習者は成長に従ってプランニング方略を習得していく(野上,丸野 2005)ことが明らかになっている一方で、プランニングに対する知識を習得することは必ずしもその実行につながるわけではないことも指摘されている(Pintrich & Schrauben 1992)。森(2004)の研究によれば、プランニングに対する知識があっても、そのコストを認知していると使用が抑制される。

実際、私が高校生を対象におこなったインタビューでも、定期テストまでに与えられた学習内容について勉強しなければならないことはわかっており、それを実現するために学習計画を立てる方法は知っていながらも、実際に計画を立てるには至らないと言った声を多く聞いた。


【目的】
 そこで本研究では、学習者がプランニングを実際に行うことができるようになるために、プランニング方略に対する「有効性の認知」に着目する。有効性の認知によって自身のプランニング方略の調整をするシステムを開発し、実践を通じて評価することを目的とする。


【方法】
プランニング方略の価値を認識させるために、「他者との相互作用」を利用する。他者との相互作用とは学習者同士で可視化されたプランニングの調整過程を確認し、それをもとにコミュニケーションを取ることである。これを実現するためのアプリケーションを開発する。
(UIについては検討中)


【実践】
対象期間: 定期テスト前の2~4 週間(中長期におけるプランニング調整の変化を追う)
対象とする学習者: 高校生(学習者はプランニング調整能力の発達段階にあると思われる)
学習目標: 定期テストにおいて試験範囲に含まれる学習課題を完了させること

1グループ10名前後の学習者の集団に、支援システムを利用しながら学習を進めてもらう。

-----
...と研究計画を立てたものの、研究の意義や、成功可能性など、詰めるべき部分は多々残されており、まだまだ根本からひっくり返る可能性を残したものとなっております。
今後もさらに先行研究を調べ、問題の明確化、支援原理の必然性なども含めて、柔軟に研究計画をブラッシュアップしていきたいと思います。


青木智寛

PAGE TOP