2020.07.03
修士課程2年の小野寺萌美です。
本研究室のゼミの特徴のひとつである「文献発表とグループディスカッション」についてご紹介いたします。
文献発表とグループディスカッションの概要を簡単にご説明します。文献発表では教育工学や学習科学、その他周辺領域の学問のメインストリームを体系的に理解することを目的としています。毎年2冊の英語文献を輪読しています。週ごとに担当者が担当する章の(1)文献の要約資料を作成、(2)担当章の理解を深める参考文献の紹介をゼミ生に共有することで全員の理解を促進します。その後、ゼミ生を複数のグループに分け、実践的な課題を元にグループディスカッションを行うことで実際の課題としての理解を深めています。
今学期は”International Handbook of the Learning Sciences”という文献を輪読しています。前年度は”HANDBOOK OF RESEARCH ON LEARNING AND INSTRUCTION”を輪読していました。前年度の情報についてはこちらからご覧ください。
章選択には人がよく表れます。基本のスタンスとしては各ゼミ生の興味・関心に合わせた章を選択・担当し、参考文献と併せて資料を作成します。一方、一見全く関連しないような分野から章選択を行う方もいます。しかしそのような場合でも全く関連しないことはなく、根源のところで学問やテーマというものはつながっていることに気づかされ、驚かされることもしばしばです。
ここから具体例を挙げます。私は先日の発表で“Simulations, Games, and Modeling Tools for Learning”という章を担当しました。一方、私の研究テーマは「大学生を対象としたフロー体験を促進する支援」ということで、一見シミュレーションやゲームといった分野とは重ならないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、特にゲームとフローの関係は強く、ゲームの楽しさをフロー理論を用いて分析的に評価しようとする論文も多く存在します。
実際のグループディスカッションの課題としては「本文に記述されているテクノロジーベースのシミュレーションやモデリングツールを教育に取り入れたい立場のそれぞれの理論的前提から、シミュレーション・ゲーム・モデリングにおける学習を成立させる3原則を作成せよ」という課題のもとグループディスカッションを行いました。2グループでディスカッションを行い、そのそれぞれがグループを構成しているメンバーのこれまでの体験やバックグラウンドに基づいた多様なアイデアを出して課題を解決していこうとします。例えば、ファシリテーターとしての私の立場としての予想では、やはり、プログラミングなどといった、情報に関する学習活動においての事例をもとに原則を作るグループが多いと考えていましたが、あるグループでは美術教育や歴史学といった、いわゆる「文系科目」とみなされるような学問分野のバックグラウンドからシミュレーションや認知的葛藤についての考えをまとめており、ファシリテーターの想像を上回る多様な意見が提出されました。このような「予想に対する興味深い裏切り」はファシリテーターを行っているとしばしば起こります。私もこれまで複数回ファシリテーターを行ってきましたが、自分が事前に予想していた答えと同じものになることはまずありえませんでした。これは多様なバックグラウンドを持つ我々の研究室であるからこそなしえる活動なのだなと、そのようなシチュエーションに遭遇するたびに感心します。
次回からも引き続き我々の学習活動の紹介を行いますのでご興味ある方はチェックしてみてください。
【M2 小野寺萌美】