BLOG & NEWS

2025.07.07

山内ゼミにはどんな人が集まっているか

はじめまして。山内研究室M1の松田紀子です。

今回は「山内ゼミにはどんな人が集まっているか」について書きたいと思います。ひとことで言うなら、「プロテウス」的な人が集まっています。

毎回ではありませんが、ゼミでは山内先生が事前に出してくださる文献講読課題について、皆でディスカッションする時間が設けられています。先日、その文献講読課題の中に、「プロティアンキャリア」という言葉が出てきました。1976年にアメリカの心理学者、ダグラス・ホールによって提唱された言葉で、「組織的な報酬よりも個人的な価値観に突き動かされ、その人自身、家族、そして『人生の目的』に貢献する自己決定型のキャリア」と定義づけられています(Hall, 2004, p. 2)。英語のproteanには「変幻自在な」「多才な」といった意味がありますが、語源は姿を変幻自在に変えることができるギリシャ神話の海神プロテウス(Proteus)に由来しているそうです(Oxford University Press, n.d.)。

現代社会では、どのような職業に就いていても、時代の変化に応じて柔軟かつ継続的に学び、自らスキルを磨いて主体的にキャリアを築いていく「プロティアンキャリア」が求められていると感じます。山内先生の寛容さと多様性を尊重されるお人柄を反映して、山内ゼミにはさまざまなバックグラウンドをもつ学生が集まっています。社会人の割合も高く、キャリアの多様性や各々の自律性を大切にする風土が醸成されていると感じます。

私自身も社会人学生なのですが、教育実践者でもありますので、このゼミでの様々な学びは、私にとって特別な時間となっています。残念ながら遠距離通学のため、体力的に辛い時もありますが、ここでの出会いに感謝しながら、「プロテウス」的な人を目指していきたいと思っています。 

Hall, D. T. (2004). The protean career: A quarter-century journey. Journal of vocational behavior, 65(1), 1-13.
Oxford University Press. (n.d.). Protean. In Oxford Learner's Dictionaries. Retrieved July 7, 2025, from https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/protean?q=protean

2025.07.07

文献整理に役立つツール(M1 飯島)

皆様はじめまして、山内研M1の飯島洋輔です。

今年の春より山内研究室に加わりまして、「学校教育で学んだ内容を学校以外の文脈でも使用できるようになることを補助するシリアスゲームの開発」というテーマで研究をしています。

今回は「研究小ネタ」として、文献整理に役立つツールをいくつかご紹介します。

山内研究室ではM1の間は基本的には文献レビューに注力します。山内研究室では、比較的自由に自身の研究テーマを探求できる一方で、その分野の先行研究を網羅的に把握することが求められます。先行研究レビューを丁寧に行うことで、適切な研究手法の選定や、自らの研究の新規性・独創性を示すことが可能になるため、これは研究計画を立てる上で不可欠なステップです。

私自身、学部生の頃は文献整理をしっかりしていなかったのですが、研究室の先輩方がきれいに文献を整理しているのを見てその考えを改めました。今回ご紹介するのは、大学院に入学してから私自身が耳にしたり、実際に試したりしたツールです。あくまで個人の使用感に基づいた紹介ですので、ご自身の研究スタイルに合うツールを見つけるための一助としてご覧ください。


1. Google スプレッドシート (Google Sheets)

Google WorkspaceやGoogle for Educationを導入している大学に所属している方にとって、最も手軽なツールでしょう。論文のタイトル、著者、発表年といった基本的な情報に加え、タグやメモを書き込むことで、簡易的なデータベースとして活用できます。最大の利点は、他の研究室メンバーや指導教員との共有が非常に簡単な点です。共同研究や研究相談の際に、同じリストを見ながら議論を進めることができます。

2. RefWorks

文献データベースで知られるProQuest社が提供する、高機能な文献管理ツールです。学生の場合は大学図書館を通して無料で利用できる場合があります。PDFファイルをアップロードして管理できるほか、フォルダやタグでの整理も直感的に行えます。特筆すべきは、参考文献リストの自動生成機能です。APAをはじめ主要な引用スタイルに対応しており、論文執筆の手間を大幅に削減してくれます。

3. Paperpile

このリストの中では唯一の有料ツールですが、研究室内外で利用を推奨されることが多い、非常に評判の高いツールです。私自身はまだ試せていませんが、Google Scholarや各種データベースからワンクリックで文献情報を取り込める機能や、Google Docs上でシームレスに引用・参考文献リストを作成できる連携機能など、その利便性は研究の効率を格段に上げてくれると評判です。

4. Notion

近年、情報整理の定番ツールとなりつつあるNotionも、文献管理に非常に有効です。その魅力は、何と言ってもカスタマイズ性の高さにあります。データベース機能を使えば、スプレッドシートのように一覧表を作成し、タグ付けやステータス管理(例:未読、精読中、読了)が可能です。また、各文献ページに詳細なメモを残せるのも大きな利点です。Markdown記法はもちろん、Mermaid記法で図を挿入したり、関連する論文ページへリンクを張ったりと、思考を整理しながら知識を体系化できます。

5. Obsidian

ローカル環境で動作する、Notionと似た使用感のメモ・知識管理ツールです。Notionとの大きな違いは、オフラインで快適に利用できることと、「グラフビュー」機能でノート間の繋がりを視覚的に表示できる点です。各論文のノートを作成し、引用・被引用関係をリンクで繋いでいくことで、研究分野の全体像や論文同士の関連性を直感的に把握できます。研究領域を俯瞰的に理解したい場合に特に力を発揮します。ただし、複数人での共有機能は有料プランでの提供となります。

6. FigJam

これは文献管理ツールではありませんが、Figma社が提供するオンラインホワイトボードツール「FigJam」も、使い方次第で強力な味方になります。特に、複数の研究潮流がある分野で、論文間の関係性をマインドマップのように可視化したい場合に便利です。論文を付箋のように貼り付け、引用関係を線で結び、時系列に並べることで、どのような研究が行われてきたのかを可視化できます。ただし、手作業がメインになるため時間と労力がかかる点、そしてあくまでホワイトボードツールであるため、より詳細なメモも残すために他の文献管理ツールとの併用が推奨される点には注意が必要です。


今回紹介した以外にも、便利なツールはたくさんあります。研究室の先輩方が紹介している他のツールなども参考に、ぜひご自身に合ったものを見つけてみてください。

この情報が、皆さんの研究生活の一助となれば幸いです。

2025.07.04

研究におけるAI利用について(D1 入澤)

こんにちは。D1の入澤です。
修士論文をなんとか無事に書き上げ、博士課程に進学することができました。一つ研究をやり終えたことで、また一歩研究者として成長できたように感じています。より良い研究ができるように、博士課程でも頑張っていきたいと思います。

さて、自分が修士課程に所属している間にもAIがメキメキと進化を遂げ、より一層社会の中に浸透しているのを感じます。少し前になりますが、DeNA会長の南場さんの企業におけるAI活用についての以下の記事がX上などでも頻繁に流れていました。
https://fullswing.dena.com/archives/100153/

研究の世界でもAI利用が当たり前になりつつある
研究の世界でもAI利用が当たり前になりつつあることを感じます。
以下の記事にある通り、OpenAI社はキャンペーンとして北米の大学生へのChat GPTplusの無償提供を行っているようです。
https://newscape-lab.com/news/20250406/
また、GoogleのGeminiも最近大学生向け無料キャンペーンを行っていました。
大学生レベルからAIを使うことがより一層当然になっていく流れは不可逆なものでしょう。

AIを使うことが当然となっていく研究の世界でAIを使わずにいること自体が、自分の生産性を低いままにしてしまうリスクになると最近よく感じます。私自身もAIを活用して論文をより短時間で読めるように工夫しています。以下の記事は参考になります。
https://compass.readable.jp/2024/04/17/post-26/

とはいえ、AIを研究に「どう使うか」については、まだまだ模索が必要だと感じています。便利なのは間違いない。でも、「楽をするため」ではなく、「より深く考えるため」にどう使えるかを考えることが重要なのではないでしょうか。

AIは研究のどこで使えるのか?
まず、研究のプロセスを大まかに分けてみると、以下のようなステップがあります。
・問いを立てる
・先行研究を調べる
・調査設計をする
・データを集める
・分析する
・論文としてまとめる

この中でAIが使える場面を見てみると、意外と多くあります。
・文献調査: ChatGPTやElicitを使って関連文献の概要を把握したり、レビューの構造を整理したりできます。
・分析: RやPythonのコードのサンプルを生成させたり、エラーの原因を見つけたりといった「壁打ち」として非常に有用です。
・文章作成: 英語で論文を書く際には、自然で読みやすい言い回しを提案してくれるAIツールが役立ちます。
また、データ整理や表の作成、パワポ資料のたたき台など、ちょっとした作業の時短にもかなり助けられています。

それでもAIに「全部任せる」のは危ない
一方で、リスクももちろんあります。AIは万能ではありません。
・間違った情報をそれっぽく言う問題(ハルシネーション)
 → あくまで「参考意見」くらいに捉えるのが大事。うのみにしない。
・考えを代行してしまう問題
 → 自分で悩んで考え抜くプロセスを、AIにショートカットさせすぎると、研究者としての「思考の筋肉」が落ちてしまう。
・倫理やオリジナリティの問題
 → AIをどこまで使ったかが不透明になると、論文の独自性や倫理性が問われます。
AIの特性を理解し、その上で我々は活用する必要があります。

AIは「道具」であり、「共創の相手」
個人的には、AIはただのツールというより、アイデアを広げたり反論をくれたりする“壁打ちの相手”のような存在だと感じています。ある意味、共同研究者と対話しているような感覚になることすらあります。もちろん、最終的に責任を持って考え、判断するのは人間。だからこそ、「問いを研ぎ澄ますためにAIを使う」という姿勢が大切なのだと思います。

パラダイムシフトの只中にいる
今、私たちは間違いなく、研究のやり方そのものが変わるパラダイムシフトの真っ只中にいます。タイプライターからワープロになったとき、電卓からExcelになったときと同じように、AIによって研究のリズムや思考のスタイルが変わっていく。
でも、それは「機械に研究を任せる」という話ではありません。むしろ、「人間が人間らしい問いを立て続けるために、AIの力を借りる」──そんな未来の研究スタイルを、今私たちは形づくり始めているのかもしれません。
博士課程という「問いと格闘する時間」の中で、AIとどう付き合っていくか。この問いそのものが、今の自分にとっての重要な研究テーマでもあります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ちなみに、後半はAIに文章の叩き台を作成してもらっているのですが、気づきましたか?

入澤

PAGE TOP