2019.05.23

【研究計画】興味の深まりに関与する趣味縁の生態系(D3 杉山昂平)

D3の杉山昂平です。

これまで,大人が趣味を続けるなかで新しいおもしろさに出会っていくこと[興味の深まり]に,趣味を通した人間関係[趣味縁]がいかに関与するのかを研究してきました。1つめの研究ではアマチュアオーケストラを事例に楽団という[実践共同体]の関与を,2つめの研究ではアマチュア写真を事例にSNSなどで見られるゆるやかな[実践ネットワーク]の関与を明らかにしています。

今年度は博士論文の執筆にむけて,2つの研究を統合する大きな枠組みを言語化していくことが研究の課題です。


いまのところ,大きな課題が2つあります。

1つめの課題が「社会的意義と学術的意義の接続」です。なぜ仕事ではなく趣味を研究するのか。「趣味程度」のまま自然に放っておけばいいと考えるのではなく,趣味が深まるような環境のあり方を研究することは,社会的にどんな意味があるのか。研究の前提や大きな目的を改めて考え直すことで,趣味を学術的に研究することに社会的な意義づけを与える作業です。

2つめの課題が「総合考察」です。実践共同体に注目したアマチュアオーケストラ団員の研究と,実践ネットワークに着目したアマチュア写真家の研究,両方を行ったことではじめて見えてくることはなにか。研究の大きな目的に対応するかたちで,博士論文全体としての答えを出す作業です。

いずれもとてもチャレンジングな課題です。しっかり時間をかけて考えようと思います。
 

ちなみに,総合考察について考えていることを小出しにしてみると,「いま一緒に趣味をしているわけではないが自分と近しい趣味を追求している人,がある程度近くにいること」が大事な気がしています。楽団を移籍して新しい面白さに出会ったり,写真家の界隈から刺激を受けたりすることは,直接関わりのない他者が別の場所で趣味を楽しんでいないと成り立ちません。そういう意味で,さまざまな趣味人が織りなす「生態系」の豊かさに鍵がありあそうです。

杉山昂平

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