2011.06.02
みなさま、こんにちは。
【今年の研究計画】シリーズ、今回はD1の安斎勇樹がお送りします。
安斎の研究目的は、一言で言えば「ワークショップにおいて"創発的コラボレーション"を促すための実践方法を提案すること」です。
近年、「新しい学びと創造のスタイル」として、ワークショップが注目されています。ワークショップ実践が行われる領域は多岐にわたりますが、大学生の「創造性」の育成の手段としても注目を集めており、グループでアイデアを考えたり、アート作品をつくったりするタイプのワークショップが多く実践されてきています。
創造性については、これまで数多くの研究がなされてきました。かつては、創造性は「個人」が発揮するものだと考えられてきましたが、近年では「コラボレーション」の重要性への認識が高まり、創造性を育成する上でもコラボレーション体験が重視され始めています。たとえば心理学者のキース・ソーヤーは、創造性を育成するためには学習者同士が即興的にアイデアを連鎖させながら新しいアイデアを生み出すような、いわば「創発的コラボレーション」の体験が必要であることを指摘しています。
自由で創造的なスタイルであるワークショップは、こうした「創発的コラボレーション」の体験の場として有効であると考えられます。しかしながら、その方法論に関する実証的な研究はいまだ少なく、具体的に「どのようにワークショップを実践すれば、創発的コラボレーションが起こせるのか」については明らかになっていません。
そこで、本研究の目的は、創発的コラボレーションを促すためのワークショップの実践方法を提案することです。修士研究では、ワークショップの実践方法の中でも「プログラムデザイン」に焦点を当てて研究を行いました。具体的には、創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し、ワークショップの課題設定に矛盾のある条件を設定することが、創発的コラボレーションを促すことを実践と質的分析によって明らかにしました。
博士研究では、プログラムデザインに限らずファシリテーションにも焦点を当てて、創発的コラボレーションを促すための方法論を探っていきたいと思っています。特に、10年以上ワークショップ実践を続けているエキスパートの「技」が炙り出すような研究ができれば、と考えています。
[安斎 勇樹]