2006.07.01
「反省的実践家」という概念を提唱し、専門家像の転換を図ったドナルド・ショ
ーンの主著。彼は二つの専門家像を対比させます。「技術的熟達者」と「反省的
実践家」です。
「技術的熟達者」とは、近代の専門家像。実証科学を背景に、知識や技術を実
践に適用し、時に、権威的・特権的な存在として、クライアントに相対します。
彼らの実践を支える認識は「技術的合理性」と呼ばれ、限界や問題を持っている
と指摘されています。
一方で、現代の専門家は、より複雑で複合的な問題への対応を迫られています。
専門家は刻々と変化する状況と対話し、自己と対話し、行為を振り返る。クライ
アントの問題に共に立ち向かう。彼らの複雑な実践は、所与の科学的知識を適用
することを越えた「行為の中の省察」という認識に支えられています。
専門家はどのように考え、問題に立ち向かうのか。原著には事例が豊富です。
現代のあらゆる専門家を考える上で必読の一冊です。[酒井俊典]