2017.07.02

【今年度の研究計画】準正課の集団活動における 制度的な側面とキャリアレジリエンスの関連

みなさんこんにちは。D2の池田です。
暑い日が続き、すっかり夏めいてきましたね。
現在、私は「準正課の集団活動における制度的な側面とキャリアレジリエンスの関連」について研究しようとしており、研究計画のブラッシュアップを行っています。
具体的な研究計画は以下の通りです。
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1.背景と目的
 企業寿命の短縮や, 若者の離転職の可能性の増加とともにキャリアレジリエンスという概念に注目が集まっている. キャリアレジリエンスとは"環境の変化に適応し、ネガティブな仕事状況に対処する個人の能力(Noe et al. 1990)"である. この力は, これから社会に出て行き様々な変化に対応しなくてはならない, また, 進路選択という大きな課題に直面する大学生にとって重要な力であり, その育成が求められている (児美川2013:児玉 2016).
キャリアレジリエンスを育む環境については, 主に社会人を対象に研究が行われている (e.g.London and Mone 1987). 一方, 働く前の段階におけるキャリアレジリエンスの獲得方法に関しては, 研究の不足が課題である (Beltman et al.2011). キャリアレジリエンスがどのように獲得されていくかについては実証されていないが, 過去に同じような状況をどのように乗り越えたかということが, 大人の立ち直りにとって重要だという言及(平野 2016)が示唆的である. 即ち, キャリアレジリエンスの育成には, 環境の変化に適応し, ネガティブな仕事状況に対処するのと似た経験が有効であると言えよう.
 正課外活動に目を向けると, キャリアレジリエンスという単語そのものは登場しないが, 正課外において大学生は, キャリアレジリエンスの構成要素の一部である, 問題解決能力や適応力, チャレンジ精神などを獲得していることが示されている(e.g. 河井 2015).
近年では, 運動活動を通じたレジリエンスの獲得や, サークルや部活動などの活動にどのように参加することがキャリアレジリエンスの獲得実感に影響するのといったことが検討されている(池田ほか 2016).
2.問題と目的
 しかしながら, 先行研究において, 準正課の活動を包括的に扱って, アウトカムとの関連を明らかにした研究はない. また, 準正課の活動における, 教職員が設計可能な面を扱って, キャリアレジリエンスに当たる能力との関係を明らかにした研究は少ない. そこで, 本研究では準正課の集団活動におけるどのような側面が学生のキャリアレジリエンスの獲得実感と関連するのか明らかにすることを目的とした.3.方法
3.1調査の枠組み
 準正課の活動については, まだまだ研究の不足が課題である(河井 2015). そのため, 個別の準正課活動においては, アウトカムにつながるモデルが提唱されているが(e.g. 木村・河井 2012), 広く包括的に準正課の活動を対象に, それらの活動はどのような側面を持っているか, どのような要素があり,何がアウトカムの獲得につながるのか考慮したモデルは提唱されていない.
そこで, 本研究では, 高等教育経験が学生の価値観, パーソナリティに及ぼす影響について検討している, カレッジ・インパクト研究から参考にする枠組みをかりてくることにした. カレッジ・インパクト研究の文脈において, Kuh et al.(2006)は学生の成功(アウトカムの獲得や就職)を促す要因について明らかにする際に, 大学の制度的な側面が学生の成功に影響することを考慮したモデルを提唱している. 具体的には, 学生の成功には, 学生のエンゲージメント(質的, 量的な努力の量)が最も重要だと述べ, それを促す上で, 大学の制度的な側面にも焦点を当てることが重要だとしている. そして, エンゲージメントを促すような具体的な制度的な側面として, ①構造的・組織的な特徴, ②プログラムと実践, ③教授・学習アプローチ, ④学生中心の大学文化の4つを挙げている.
本研究ではこの枠組みにおける大学の制度的な側面を, それぞれの準正課活動における様々な側面として捉え, 準正課の活動に合うように修正を加え, 独立変数として用いる. その上で, 準正課活動における様々な側面と学生のエンゲージメント, キャリアレジリエンスの関連について明らかにしていく.
3.2.仮説
先述のように, 活動の制度的な側面は学生のエンゲージメントを促す. また, 正課外活動へのエンゲージメントはキャリアレジリエンスの全ての構成要素に正の影響を与える(池田 2016). 以上から, 仮説1:正課外活動の組織の状態の4つの要素は学生の正課外活動へのエンゲージメントを促し, 間接的にキャリアレジリエンスに影響する(図1:点線矢印).
②プログラムと実践に含まれるソーシャル・サポートはレジリエンスの規定要因であるとされている(石毛・無藤 2005). また, ③教授・学習アプローチに含まれる学生の自律性の支援などの教授活動は, レジリエンスに影響することが示されている(久保ほか 2015)他, キャリアレジリエンスの構成要素の問題解決能力などは活動の設計(問題解決活動を含むか等)に影響されることが予想される. 以上から, 仮説2:②プログラムと実践, ③教授・学習アプローチは直接的にキャリアレジリエンスに影響する(図1:実線矢印).
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図1:本研究の仮説
3.3. 本調査
大学1〜4年生を対象に, 15分程度で回答可能な質問紙調査を行う. なお, 質問紙はKuh et al.(2006)の提唱する制度的な側面(①構造的・組織的な特徴, ②プログラムと実践, ③教授・学習アプローチ, ④学生中心の大学文化)の4分類を元に, 先行研究の尺度を用い作成する.
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本調査に向けて、課題もいろいろありますが、頑張らねばねば。
今年度もどうぞ宜しくお願いします。

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