2017.03.12

【山内研 今年度のまとめ】修士論文を書き終えて(M2 長野香織)

みなさん、こんにちは。M2の長野です。
修論審査も無事通過し、あとは修了式を迎えるのみとなりました。 
今回のブログのテーマは【山内研 今年度のまとめ】ということで、最終的にまとまった論文を紹介した後、この2年間をふり返ってみたいと思います。



◆タイトル
「大学進学を果たした不登校経験者の学習活動に関する探索的研究」

◆アブスト
 これまで不登校の問題とその対応や取り組みは、不登校に至るまでの精神的な問題や不登校になったことによる苦しみや悩み、心の傷といった「心の問題」に関心が集中する傾向があった。もちろん不登校の問題をその観点から捉えることは非常に重要なことではあるが、その心の問題がうまく解決できるかどうかということには「進路形成の問題」が大きく関わっており、その観点からも不登校の問題を捉えていく必要がある。進路形成とは、一人ひとりが充実した人生を過ごしていくために、進学から就職まで幅広く対象としている概念であるが、本研究はその中でも不登校経験者にとって高いハードルとなっている大学進学に焦点を当てることとした。不登校経験者の大学進学の支援に関するこれまでの研究は、不登校経験者を受け入れている施設でどのような支援が提供されているのかについて、支援を提供する側の視点からその実態が明らかにされてきた。しかしながら、今後不登校経験者が大学へ進学できるように効果的な支援を行っていくためには、学習者の多様な学びの文脈を捉え、個人に合わせた支援環境を構築していくことが重要である。そこで本研究は「大学進学を果たした不登校経験者が進学のためにどのような学習活動をどのような方法で行ってきたのかということについて探索的に明らかにすること」を目的として設定した。研究方法としては個人の語りを丁寧に聞き出すことができるインタビュー法を採用し、大学進学を果たした不登校経験者12名を対象に約90分間の半構造化インタビューを行った。
 その結果、不登校経験者は大学進学をするために「高校の卒業資格を取得する」、「受験する方法や大学を選択する」、「入試方法に合わせて対策をする」という3つの大きな目的のために自らの学習状況や精神状況に合わせた方法を取捨選択しながら学習活動を行っていることが分かった。それらのフェーズは一見、不登校を経験していない者と変わりない学習活動を行っているかのように思える。しかしながら実際にどのような経緯で学習活動が行われているのかを見ると、不登校経験者たちは学校に通う上での問題として(1)人との接触を避ける、(2)学校に対する負の意識、(3)精神的な苦しみ、(4)生活の乱れ、進路選択をする上での問題として(1)学習のブランク、(2)学校での進路指導の不足、入試に向けて対策をする上での問題として(1)学習の遅れによる問題、(2)1人で学習することによる問題、(3)学習機会の制約、(4)精神的な苦しみといったような様々な問題を抱え、それらを乗り越えながら進学に向けた学習活動を行っていたことが分かった。今後はこれらの結果をふまえた様々な視点からの支援研究が求められる。

 私はこの2年間「学校に行っていないというだけで子どもの学習の可能性や進路選択の幅が狭まってしまう」ということに問題意識を持ち、この研究に取り組んできました。修論の最終審査で、ある教授に「長野さんの文章からはインタビューしてて、書いてて、楽しいんだろうなぁというのがすぐ伝わってくるね^^」と言っていただいたのですが、本当にそのとおりです(笑)。インタビューをすることで、その方々の目線から、その方々にしか見えない世界を(少しでも)共有できることが嬉しく、そこにおもしろさを強く感じました。(それを論文を読んでくださった人とも共有したいのですが、文章力がなさすぎてなかなかできなかったのは反省点です・・・)


 ただ、もちろん楽しかったことだけではなく、辛いことも多々ありました。「不登校」という現象に関わっている方にはいろんな立場の方がいて、オルタナティブ教育の立場の方からは「そもそも勉強(大学進学)って必要なの?」と批判され、心理系の方々からは「心の問題が先でしょう」と批判されました。私の研究には「意味がない」とまで言われたこともありました。
 そんな私が一番力を入れていた行動は「とことん考えを話す」ということでした。自分がなぜこのテーマを大事にするのか、なぜこのテーマを追求したいのかについて、論理的に、それでいて感情的に話をすることで、初めは批判していた人も徐々に理解してくれるようになったということもありました。私なんて研究の世界ではひよっこの中のひよっこですが、それでも自分の研究や問題関心に自信を持つことって、ものすごく大事なことなんじゃないかなと思います。そしてそのテーマについてとことん考えられるのも大学院生の特権だったのかもしれません。


最後になりましたが、この研究を最後までやりきることができたのはまぎれもなく、インタビューに協力してくださった方々のおかげです。本当にありがとうございました。またアカデミックなバックグラウンドが全くなく、先行研究を読むという行為からどうして良いのか分からなかった私に研究の方向性を示してくださった助教の方々、研究について毎日でも深夜遅くてもとことん付き合って聞いてくれた研究室のメンバーにも心から感謝しています。
私はこの4月から社会人として民間企業で働くことになりましたが、今後も研究の動向についても敏感でありたいと思いますし、山内研究室で得た新たな視点を持ち続けながら過ごしたいと思っています。

みなさま、本当に2年間ありがとうございました。

【長野香織】

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