2016.12.27
こんにちは。山内研M1の花嶋陽です。
2016年も残り388,000秒ということで、理想状態のボルトが4,311,111m走りきるこの間に、M1勢が駆け足で今年を振り返り、新年に備えるという短編シリーズになります。
ということで今回は、2016年9月17~19日に行われた教育工学会について、私の印象深かった発表についてご紹介したいと思います。
教育工学会は、教育工学の分野に携わっている研究者や教師、学生などが一同に会する学会で、今年は大阪大学で行われました。
発表内容も、授業実践や教師教育、教育テクノロジー、看護教育など多岐にわたり、口頭発表やポスター発表、研究会の講演、ワークショップなど様々な形で日頃の研究成果を共有し合っています。
その中でテクノロジー好きの自分的に興味深かった発表として以下の二つを挙げたいと思います。
<VRを利用した鑑賞型学習支援手法の開発>
学校での美術教育において、絵画や彫刻などを鑑賞する際には、本来であれば遠くから全体を見たり、近くで細部を見たり、様々な角度から構図を確認したりと、実物を目の前に鑑賞するのが望ましいのはお分かりになると思います。しかし現実的にそれを行うのは難しく、やむなく教科書に載せられている2Dの絵を題材にするしかないという課題に対し、VRの利用ということを考えているのが、この研究です。
発表自体は、VRの技術的な面に関するものが多く、VRといっても、鑑賞空間全体をヴァーチャルにするか、現実の教室風景にヴァーチャルの絵画を載せるかなど様々なやり方がありますが、その手法と鑑賞者の感覚的な評価といった内容の発表でした。
これから高度なテクノロジーが広く普及する可能性を秘める中で、今後の学校教育の未来を感じさせてくれる発表でした。
<ゲーム型反転学習の試行と評価>
ゲーム型の教材を事前に行い、対面でより深くその内容についてのディスカッションを行うことで、学習効果を高めるという研究でした。
内容は、万有引力など基本的な物理法則についてのもので、ゲームとしては逆転裁判(弁護士となって裁判を行っていく人気シミュレーションゲーム)風の設計で、ギリシャ時代における天動説の論者となって、地動説論者を打ち破っていくという内容になっています。
ここで面白いのは、単に物理法則について学ぶだけでなく、自分の論を支持してくれる根回しを行うなど、単に「正しい」ことが科学の「真実」とされるのではなく、科学者や民衆間の「合意」によってその「正しさ」が作られるということを学べるような設計になっていることです。
実際に大学生に行った結果として、ゲームによる反転学習を行った生徒の方が、応用問題においてテストの点数が高いというものが出ています。
ゲームは、動機付けという面だけでなく、知識を有用なものとしたり、組織したり、現実との結びつきを強めるなど、上手に設計できれば様々なメリットがあります。このような研究事例がどんどん増えることで、教育環境がよりクリエイティブなものになれば良いなと思います。
今回は紙面の都合上二つの発表に絞らせて頂きましたが、まだまだ面白い発表はたくさんあります!
ご興味がもしおありでしたら、有料ですが誰でも参加することは可能なので、ぜひ来年の教育工学会に足を運んでみてはいかかでしょうか。
【花嶋陽】