2016.07.31
皆さんこんにちは。
やっと関東でも梅雨が明けましたね!夏は受験の天王山と言いますが、M2にとっても「修論の天王山」と言えます。27日には情報学府の中間発表を終え、いよいよ本格的に調査に踏み出そうとしている今日この頃です!
ちなみに29日は夏学期のゼミが最後だったので納会がありました♪おいしいお肉をたらふく食べて最高に幸せな気分でした!!
さてさて、今回のブログのテーマは【山内研っぽい1冊】ということで、カバンに忍ばせていたら「山内研かな?」と思われるような1冊を紹介するというものです。今回私が紹介するのは『デジタル社会の学びのかたちー教育とテクノロジの再考ー』という本です(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784762827907)。これは私が修士1年生でホームスクーリングについて文献を読んでいたときに教えてもらった本で、教育の新たな可能性について考えるための手がかりとなった1冊です。
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デジタル社会と言われる今、どのように教育はあるべきなのでしょうか?
ーこの問いに対して真摯に向き合い、答えようとしているのが本書です。
これまで私たちの中では学びは学校で起こるものだと認識されてきました。産業革命以降、学校での教育は指導要領として決められていることを教え、学ばせることに徹してきました。どれだけ時代が変化しても、フォーマルな学習環境は変わらずに在り続けてきたのです。
しかしながら、新たなテクノロジはそのような学校教育の在り方に疑問を投げかけています。
社会では、学習というものが生涯を通じた営みだと認識され始め、インフォーマルな場ではすでに新たな教育制度が芽生えているのです。本書では【生涯学習、ホームスクーリング、職場での学習、遠隔教育、成人教育、ラーニングセンター、教育向けのテレビやビデオ、コンピュータを用いた学習用ソフト、技能資格、そしてインターネットカフェ】などをキーワードとし、その中でテクノロジが一人ひとりの学習者の関心やニーズ、学習スタイルに合わせた学びを支援してきたことを指摘しています。
そのような状況を受け、著者らは学校教育で築かれてきたものと学校外で築かれつつあるものを改めて捉え直すことで、始めの問いに答えようとしています。
具体的な本書の構成としては、まず初めに様々な研究や理論、事例を紹介しながら教育にテクノロジを取り入れてくことに対する推進派の意見と懐疑派の意見についてそれぞれ検討し、テクノロジと学校教育の間にいかに深い溝があるかを論じます。続いて、その溝が出来上がってしまった背景として、「学校教育制度の歴史的発達」と「学校外の学習機会の拡大」というフォーマル・インフォーマル両方の観点から丁寧に説明をしています。そのように学校教育の発達を歴史的に捉えることで、公教育にしか果たしえない役割や価値があることに気付き、その視点を持った上で学校外の新たな学びの芽に着目することで、テクノロジが学習にもたらしうる新たな可能性に気が付きます。両者がうまく折り合いをつけていくことが、全ての人にとっての充実した学習機会を保障することにつながるというわけです。それらを全て含め、最終章では「教育とはどうあるべきか」という問いにもう一度向き合い、考えていきます。
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これだけ時代が変化していく中で、私たちがこれまでに受けてきた教育のイメージを未来の教育の姿にそのまま当てはめて考えることはできません。教育現場の「今」を知ると同時にこれからの教育の可能性について考えるためのヒントがこの本には詰まっています。
それでは次回もお楽しみに。
【長野香織】