2016.07.03

【今年度の研究計画】大学での正課外活動におけるキャリアレジリエンスの獲得に関する調査

暑い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
博士課程1年の池田めぐみです。今回のテーマは今年度の研究計画ということなので、私の研究計画について紹介させていただきます。

 私は、ざっくり言うと、「環境の変化に適応し、ネガティブな仕事状況に対処する個人の能力」であるキャリアレジリエンスを、大学生は正課外活動*の中でいかにして学ぶのか、ということについて研究しています。*正課外活動とは、サークルや勉強会のような単位の出ない授業外の活動のことです。

 現在、日本では大学生が就職することがバブル崩壊以前よりも難しくなっています。また、働いていく中で、ストレスを感じる人の割合や、離・転職など働く上での大きな変化を経験する人も多い状況です。

 このような中で、「環境の変化に適応し、ネガティブな仕事状況に対処する個人の能力で」あるキャリアレジリエンスの重要性が主張されはじめています。キャリアレジリエンスは文部科学省の唱える「生きる力」とも互換的に用いられており、高等教育においても、この力を育むことが望まれていると言えます。キャリアレジリエンスの構成要素としては、問題解決に関する能力やチャレンジ精神、適応力、楽観性、自己効力感、ソーシャルスキル、自己理解力、新奇・多様性などがあげられています。

 キャリアレジリエンスをどのようにして育むかということについては、今までビジネスパーソンを中心に考えられてきました。そのため、大学生がどのようにしてキャリアレジリエンスを育むのかという視点の研究はあまりなされてきていません。一方で、レジリエンスを高める上で成功体験を積むことや、類似した困難な経験を乗り越えることの重要性が主張されており、環境の変化に適応し、ネガティブな仕事状況に対処するのに類似した経験を積むことが、大学生のキャリアレジリエンスを高めることにつながるのではないかと予想されます。

 それでは、大学生はどのような環境でこういった経験をすることが可能なのでしょうか。この問いについて考えると、自分の想定を超えた他者や事象に直面する場であり、教員からの指示があまり与えられない環境で、困難が生じても自身の力で乗り越えなければならない正課外という場が有効なのではないかと考えられます。

 実際に正課外活動に関する先行研究を見ていくと、キャリアレジリエンスという単語そのものは登場しないものの、問題解決能力や適応力など、大学生がキャリアレジリエンスの構成要素の一部を獲得していることが示されてきました。

 しかしながら、大学生が、正課外活動にどのように取り組むこと(例:運営に関わる、積極的に関与する)がキャリアレジリエンスに影響するのかについては明らかにされてきていませんでした。そこで、修士研究ではこのことを明らかにすることを目的に質問紙調査を実施し、他のメンバーと密にコミュニケーションをとりながら活動に参加すること、活動に質的にも量的にも多く関わること、また、活動で得たことや活動そのものについてしっかり振り返えることがキャリアレジリエンスを育む上で重要だというこことを明らかにしました。

 修士研究において、正課外活動とキャリアレジリエンスの関係性の一部は明らかにすることができたものの、学生がいかにキャリアレジリエンスを育んでいくかという視点に立った時に、まだまだ明らかにしなくてはいけないことが多いのが現状です。博士研究では、正課外活動において学生が直面する困難の大きさや、周りから得られるサポートなどに着目し、大学生がどうすればキャリアレジリエンスを高めていくことができるかについてより立体的に明らかにしていくことができればと考えています。
長いようできっと短い博士課程の3年間、しっかり頑張らないとですね!


池田めぐみ

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