2016.05.09
みなさま、こんにちは。M2の長野香織です。
GWは久しぶりに岡山の実家に帰り、中学校に行って先生とお話したり、友達と飲みに行ったり、フリースクールを訪問させていただいたり...バタバタしながらも、充実した時間を過ごしました。楽しい時間は本当にあっという間ですね...少しさみしい気もしますが、しっかりとリフレッシュできたので、またぼちぼち研究の方を頑張っていこうかな〜と思います。
さて、今回のブログのテーマは「今年度の研究計画」です。まだ固まっていないところもありますが、4月にあった研究構想発表会で発表したものを紹介させていただきます。
■テーマ
不登校の児童生徒における家庭学習の実態調査
■背景
1. 社会的背景
不登校の児童生徒の増加が社会的な問題となっている。文部科学省の平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、平成26年度の不登校の児童生徒数は、小学生が25,866名、中学生が97,036名、高校生が53,154名となっており、その数は全体で176,056名に上ると報告されている。また不登校状態になったきっかけとしては、小学生から高校生まで「不安などの情緒的混乱」や「無気力」といった心理的な要因に関するものが約6割を占めている。
それでは、不登校の児童生徒の支援を考える際に、心理的な支援のみに着目していて良いのだろうか。文部科学省の「不登校に関する実態調査」(平成18年度不登校生徒追跡調査報告書)では、「学校以外の場所なら勉強を続けたいと思っていましたか?」という質問に対し、学習の継続意思を持っていた不登校の児童生徒はは回答者の約半数(42.9%)という結果であった。さらに、勉強を続けやすい方法としては「通信手段を用いて助言をもらいながら家庭で勉強する」の項目が31.1%、「家庭訪問」が16.6%となっており、自宅で学習できる機会を持つことを望んでいる児童生徒が少なからず存在するということが明らかになっている。また現在不登校の児童生徒の学習権を保障するために、国会でも新たな法案が検討されており、社会全体として不登校の児童生徒の多様な学びを保障しようとする動きが活発しているのである。
2. 先行研究
では、実際に不登校の児童生徒の学習環境としてはどのような場所が考えられるであろうか。不登校と一言で言ってもそれぞれの生活の仕方によって学習環境は異なる。以下では、それぞれの環境での学習支援について、学校内と学校外に分けて研究動向を概観する。
2.1 学校内での支援
不登校の段階には様々な段階があるが、別室登校ができる生徒に対する学習支援方法としては、教室にいる時と同じように授業が受けられるようなシステム開発の研究がなされている。これらのシステムによって、教室に入ることができなくても周りの生徒と同じように授業が受けられる機会を持てる一方で、広田(2012)でも指摘されているように、学校内のネットワークの問題やセキュリティの問題、さらには別室の生徒をサポートする人材の不足などが課題として挙げられている。別室登校の児童生徒については、学校には来られる状態であり、授業や進路指導など学校の教育サービスを受けられる状態にはある。しかし、不登校の児童生徒の中には学校に来られない生徒もおり、学校内だけでは対応しきれないのが現状である。
2.2 学校外での支援
まず挙げられるのが適応指導教室やフリースクールなどの施設である。それらの場所には統一されたカリキュラムはなく、施設によって支援方法や支援目標が大きく異なっている。それゆえ、学校の代わりとして学習支援を中心にしている施設もあれば、あくまでもソーシャルスキルの育成を目標とし、心理的な支援を中心にしている施設もある。また、保護者や児童生徒による施設の捉え方やニーズについてもそれぞれ異なっていることが明らかになっている。これらの施設の良さとして、人と接することができるという点や学校にいる時と同じように(またはそれ以上に)社会的な体験をすることができるという点がある。しかし、学習・進学支援がどれだけ充実しているかということについては施設に依存しており、特に進学を意識する生徒はその施設の方針に合わせて学習方法を変えていかなければならないところが難点である。
また、適応指導教室やフリースクールの他にも民間の塾や学習教室なども学習環境としては重要である。それらの場所ではカウンセラーなどの専門のスタッフが勤務しているとは限らないため直接心理的な介入はせず、学習支援を主な目的としているところに特徴がある。さらに集団の施設に比べて敷居が低く、個人に寄り添った学習支援をすることができるため、個々のつまずきに対応しやすいといえる。
■問題の所在と目的
これまで学校内、学校外の学習環境についての先行研究を概観してきた。しかしながら、不登校の児童生徒はこれらの場所で過ごす以上に多くの時間を家庭で過ごしている。さらに、上述したように不登校の児童生徒は学習を継続しやすい場所として「家庭」を挙げており、今後不登校の児童生徒の学習環境を考えるときに非常に重要な場所となる。しかしながら不登校の児童生徒の家庭学習の実態を明らかにした研究はない。そこで本研究では、不登校の児童生徒が家庭学習として、何を用いて何を学んでいるのかを明らかにすることを目的として調査を行う。この研究で得られた結果から、今後の家庭学習の支援につなげていくことができると考えている。
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以上、現時点での研究計画を紹介しました。現在はこの研究計画に沿って調査方法を検討しているところです。どれだけ学習支援と言っても、人の心にも関わってくる研究なので倫理的な問題も含め、慎重に検討していく必要があると考えています。
私の研究生活も残り1年となりました。限られた時間をできるだけ有意義に過ごせるよう日々努力して参ります。どうぞ今年度もよろしくお願いします。
【長野香織】