2015.07.17

【最近気になっているキーワード】内発的動機づけと外発的動機づけ

みなさま、こんにちは。M1の長野香織です。
今日は台風の影響で私の地元である"晴れの国岡山"も大雨が降っているようで、とても心配です。
事故も増えますので、みなさま十分にお気をつけください・・・。

さて、子ども、大人ということに関わらず、教育について考えるとき、最も重要かつ難しい課題の1つに「やる気」の問題があると思います。自分がやる気を持って何かの活動に取り組めることはとても素敵なことですよね。そこで、今回は「動機づけ」研究の中から【内発的動機づけ】【外発的動機づけ】という2つのキーワードをピックアップして紹介したいと思います。

*外発的動機と内発的動機の違いとは?
Deci(1975)によると、内発的に動機づけられている活動とは「その活動そのもの以外に何も明らかな報酬がないもの」です。つまり、内発的な意欲を持つ人は"活動そのものから得られる楽しみのためにその活動に取り組んでいる"、"おもしろいから学んでいる"と言うことができます。
子どもの頃に昆虫が好きで夢中になって昆虫図鑑を読んでいたような経験を思い浮かべると理解しやすいかなと思います。

その一方で、外発的に動機づけられている人は、活動そのものから得られる楽しみではなく、その活動の先にある報酬のために取り組んでいるとされています。外発的に動機づけられた活動そのものも楽しめないものだとは限りませんが、それが主たる理由ではない場合に「外発的」という言葉があてはまります。すなわち、活動以外に真の目的があるわけです。たとえば"ご褒美がほしいから学ぶ"とか"怒られたくないから学ぶ"という状態です。憧れの大学に行きたいから受験勉強を頑張る。これも外発的動機づけと言うことができると思います。

一般的に、学習などの高次の活動には、外発的動機づけよりも内発的動機づけの方が効果的であると言われます。その理由の1つとしては、外発的動機づけは、その目的がなくなった時に活動への意欲が低下する可能性があるからです。テストがないと勉強しなくなったり、テストの点数を気にしてテストに出る範囲以外勉強しなかったりするのは、その例ですね。

*どうすれば人は内発的に動機づけられるのか?
内発的動機づけの源として重要だと考えられているのが「知的好奇心(epistemic curiosity)」と「自律性(autonomy)」です。
知的好奇心を提唱したのは、心理学者であり教育学者のブルーナーです。ブルーナーは新しいことを学ぶこと自体に感じるおもしろみや興味を「知的好奇心」と捉えています。このような知的好奇心を活用した学習法として「発見学習」というのがあります。この学習法は主に学校で用いられるもので、教師が体系化された知識を教えるのではなく、生徒自身が自分で仮説を立て、その仮説を検証することによって主体的に学んでいく学習法です。
一方、心理学者であるデシは、内発的動機づけの源として自律性が重要であることを指摘しています。自律性とは、自分が周囲の環境を効果的に処理することができ(自己の有能さ)、自己の欲求をどのように充足するかを自由に決定できる(自己決定)と感じている状態のことです。

これらに基づいて考えると、内発的動機づけを高めるためには、知的好奇心を活かせるような自由な環境をつくっていくことと、その環境の中で自分で欲求を満たす方法を自由に決定できるようにすることが重要ということになります。

一方、外発的動機づけが次第に内発的動機づけに変わっていくこともあります。最初は嫌々始めたことでもだんだん楽しくなって、夢中になれることってありませんか?このように人間が周囲の規範や価値を自分のものとしていくことを、デシは「内在化(internalization)」と呼んだりもしています。

振り返ってみれば私も中学生〜高校生の頃はテストで良い成績を取ると、父母に褒められたり、ご褒美がもらえたりするのが嬉しくて、そのために勉強を一生懸命頑張っていたような記憶があります。大学受験も第一志望の大学に合格するために勉強をしていましたし、塾講師のアルバイトも最初は収入を得るために取り組んでいました。しかし、私は大学生活を送る中で教育に対して関心を持ち、教育に関する本を読んだり、様々な取り組みを調べたりするようになりました。塾講師のお仕事も楽しいから行く、という意識に変化していきました。
このような私の経験も、外発的に動機づけられた要求事項をこなしていったことが、後に内発的に動機づけられた活動ができる機会につながっていった1つの例かなと思います。


以上、簡単ではありますが、内発的動機づけと外発的動機づけについて説明しました。最近では、MOOCのようなサービスも増えてきて、ますます自分の興味関心に基づいて学ぶ機会が増えているように思います。それらをうまく活用して、自分なりの学びを進めていきたいですね。

それでは次回の原田くんの記事もお楽しみに!


【長野香織】

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参考文献
・Deci. E. L. (1975) Intrinsic Motivation. New York: Plenum Press.(=安藤延男・石田梅男訳 『内発的動機づけ:実験社会心理学的アプローチ』、誠信書房)
・Deci. E. L. and Flaste. R. (1995) Why we do what we do. Putnam Publishing Group.(=桜井茂男 監訳、『人を伸ばす力ー内発と自立のすすめー』、新曜社)
・波多野誼余夫 (1980) 自己学習能力を育てる:学校の新しい役割.東京大学出版会
・John M. Keller (2010). Motivational Design for Learning & Performance: The ARCS Model Approach. New York: Springer. (=鈴木克明 監訳、『学習意欲をデザインするーARCSモデルによるインストラクショナルデザインー』、北大路書房)
・中原淳 (2006) 企業内人材育成入門. ダイヤモンド社

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