2015.07.06

【最近気になっているキーワード】アフォーダンスとシグニファイア

みなさま、こんにちは。
M2の松山です。
夏が近づいてきましたね!
研究に集中できるように、今年は夏バテ対策をがんばりたいと思います。

さて、【最近気になっているキーワード】ということで、私が紹介したいワードはこちら!
アフォーダンス」と「シグニファイア」です。
人工物やUIなどに興味がある方は、アフォーダンスという言葉には聞き覚えがあるのではないでしょうか。
イス、ドアノブ、スマートフォン、WEBページ...
私たちの日常的に使っている人工物は、常に誰かの手によってデザインされています。
これらのデザインについて考えるとき、非常に重要になるのがアフォーダンスやシグニファイアといった概念です。
しかし、このふたつの概念は混同されやすく、誤用されることもよくあります。
認知科学者のD.A.ノーマンは、デザインについて考えるとき、ふたつを区別することが重要であると主張しています。
ということで今回は、アフォーダンスとシグニファイアについて説明していきます。

◯アフォーダンス
心理学者のJ.J.ギブソンが「afford(~を与える、~できる)」からつくった造語です。
アフォーダンスは、物理的なモノと主体の関係を指しています。
たとえば、目の前に椅子があるという状況を想像してみてください。
その椅子には、「人」が「座る」というアフォーダンスが存在するはずです。
その他に、「人」が「持ち運ぶ」というアフォーダンスもあるかもしれません。
しかし、もしその椅子が持ち運べないほど重い長椅子だった場合、後者のアフォーダンスは存在しません。
また、もしその椅子がパイプ椅子だったとしても、主体が3歳の女の子だった場合は、やはり後者のアフォーダンスは持たない可能性が高いでしょう。
ここからわかるように、アフォーダンスは性質ではなく関係性なのです。
アフォーダンスは、主体が何かとどうインタラクションできるかの可能性を示します。
ここで重要なのは、アフォーダンスは、それが知覚されていなくとも存在するということです。
椅子の例で言うと、たとえ主体者が「持ち運ぶ」ことを思いつかなくとも、もしくは「持ち運べない」と思っていても、それが主体者に持ち運べる以上、持ち運ぶというアフォーダンスが存在するということになります。

◯シグニファイア

シグニファイアはノーマンが提唱した言葉で、アフォーダンスが存在することを示す特性を指します。
たとえば、目の前に何もついていない真っ平らなドアがある状況を考えてみます。
このドアには「人」が「押す」というアフォーダンスがあるとします。
しかし、人はこのドアの前に立ったとき、「開くのかどうか」、「開くとすれば、自動なのか、手動なのか」はわかりません。
では、このドアの、ちょうど手を伸ばすと触れるあたりの位置に、手のひらより少し大きめの平らな板がついていたらどうでしょうか。
「このドアは押せば良い」ということが瞬時に理解できるはずです。
これがシグニファイアです。
つまりシグニファイアは、「これはこのように使えますよ」と伝えてくれる、知覚可能な手がかりと言うこともできます。
また、シグニファイアは、ドアの例のように意図的なものもあれば、偶発的なものもあります。
たとえば、「雪道につけられた足跡から、歩くことのできる道筋を知ることができる」といった場合の足跡もシグニファイアと言えます。

違いがわかったでしょうか?
ノーマンは、ふたつの概念の役割について、今年出版された『誰のためのデザイン? 増補・改訂版』で以下のようにまとめています。

"アフォーダンスは、どのような行為が可能かを決定する。
シグニファイアは、どこでその行為が行われるべきかを伝える。
我々にはどちらもが必要だ。"(pp.18-19)

ノーマンの本を読んで、「今までアフォーダンスだと思っていたものはシグニファイアだった!」と驚かれた方もいるかもしれませんね。
私も学部生のころ、アフォーダンスという言葉を間違えて認識していました...。

こういったデザインに関する知識は、教育工学の分野でも役立つと思います。
特に私は開発研究をしているので、自分が開発したものをユーザがどう使うように促すべきか考えることはとても重要です。
というわけで、気になっているキーワードとして紹介させていただきました。

次回からはM1のターンです。
引き続きお楽しみに!


【松山彩香】

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参考文献
Norman, D. A. (2010). Living with Complexity, The MIT Press.(=2011, 伊賀総一郎・岡本明・安村通晃訳『複雑さと共に暮らすーデザインの挑戦』, 新曜社)
Norman, D. A. (2013). The Design of Everyday Things: Revised and Expanded Edition, Basic Books.(=2015, 岡本明・安村通晃・伊賀総一郎・野島久雄訳『誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ー認知科学者のデザイン言論』, 新曜社)

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