2015.02.01
こんにちは.M2の吉川遼です.
一昨日,修論審査を受け終わり,ひとまず肩の荷が下りて心も幾分穏やかになった気がします(まだ修了できるかどうかは分かりませんが...).
さて,今週から7週連続にわたり年度末恒例の「1年を振り返って」というテーマで各学生がこの1年または修士の2年間で感じたこと思ったことをお届けします.第1回は私,吉川遼がこれまでの修士の3年間を振り返ってみようと思います.
■ぐるぐる考え続けた2年間
もともと,僕自身は「学習に役立つシステムが作りたい」という漠然とした願望と,学部時代の卒業研究で扱った「背景情報」をひっさげて学際情報学府に来たのですが,入学後は研究の対象やシステム案が二転三転し,四苦八苦しました(その頃の様子が昔書いたエントリでも見てとれます).
その原因として,僕自身が抱いていた「学び」の像が明確でなかったことや,思考が技術寄りだったことがありました.そのため最初の1年間は「自分の関心はどこにあるのか」「そこでの学びとは一体どのようなものなのか」を自分の中で明確にする作業に費やしました.
正直な所,まとまらない思考に悶々としつつ,論文を出せないんじゃないかと不安に苛まれる日々が続きましたが,1年の終わりに何とか方向性を定め,2年目に入ってからは実際にHMDを使ってコンテンツ開発をしたり,熟達者にインタビューしたりと少しずつ研究が進んでいきました.
結果的には既存のデバイスの制約や僕自身のコンテンツデザインがよくなかったこともあり,ヘッドマウントディスプレイを使ったシステム案は頓挫してしまいましたが,そういった失敗経験を踏まえ,留学中にアアルト大学での授業で色々なものづくり体験を通して,プロトタイピングの手法やインタフェースデザインについて学ぶことができたことは,帰国後の研究活動にとって有益な経験だったと思います(アアルト大学での留学体験記はこちらのエントリにまとめてあります).
■怒濤の開発・実験・執筆
帰国後もロジックがなかなか定まらず焦りや不安が襲ってきましたが,システムの方向性が決まってからシステムを開発している時は一連の研究活動の中で一番楽しい時間でした.デバイスの制約だったり時間との闘いもあり,僕が理想としていたものを完全には反映させることはできませんでしたが,徐々に形にしていく過程だったり,インタフェースをあれこれ思案して実装して意見をもらったりと幸せな時間を過ごすことができました.
また,実験に参加いただいた方々をはじめ,ピアノ演奏の熟達者の方からもシステムに対して興味を持っていただいたことも研究のモチベーションとなりました.昨年10月から1月にかけての開発から実験,分析,論文執筆の超過密スケジュールを何とか泳ぎ切ることができたのもこういった周りの方々からのフィードバックがあったお陰だなあ,としみじみ思っています.
今回修士論文というパッケージで研究をまとめることができたのも,実験の実施にご協力いただいた方々や研究に対しアドバイスいただいた周りの方々あってのことだと痛感しています.
■一つ一つの積み重ね
例えば,地道に先行研究をレビューし対象とする領域の問題点を見つけ出す作業や,実験の手順を細かく設計していく作業など,1つの開発したシステムを論文にまとめるためには様々なステップが求められます.
月並みな感想になってしまいますが,そういった一つ一つの小さな積み重ねが研究を進めていく上では想像以上に大事だということをこの3年間で学びました.研究を論文にまとめ,発表する時になるとどうしてもあちこちに綻びがあることに気づいてしまい,その度に自分自身そういった小さな積み重ねが出来ていなかったなあと今になって反省しきりです.
修士課程の2年間はとても短い,という声をよく聞きます.僕の場合にはもう1年猶予をいただき,3年間この大学院で学んできましたが,研究活動という観点からすれば,それでも短かったというのが正直な感想です.
やり残した事や今になって気づく事は山ほどありますが,きめ細やかに研究活動のファシリテーションをしていただいた山内研究室の研究体制があったからこそ,自分だけでは到底為し得なかった研究を形にすることができたのだと思います.
この3年間でお世話になりました全ての人にこの場をお借りして感謝申し上げます.
拙い文章ではありますが,最後までお付き合いいただきありがとうございました.
【吉川遼】