2014.10.03
みなさま、こんにちは。
M1の松山です。
冬学期のゼミがスタートしました。
入学から半年が経ちましたが、まだまだ知識不足を感じることが多い毎日です。
読書の秋ということもあり、本や論文を読む時間を増やしていきたいと思います。
さて、第6回の【学者紹介】では、ジャン・ピアジェについて紹介いたします。
ピアジェはスイスの発達心理学者で、発生的認識論を提唱したことなどで知られています。
今回はピアジェの生涯と提唱した理論についてまとめていきたいと思います。
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Jean Piaget (1896~1980)
■ピアジェの研究人生
ピアジェの研究分野は、生物学→哲学→心理学という流れで変化していきます。
スイスのニューシャテルに生まれたピアジェは、生きものに興味をもつ少年でした。
わずか10歳のときに白スズメの観察記が博物館雑誌に掲載され、その後、博物館で館長の助手として軟体動物学の研究をするようになります。
17歳のとき、神父からベルクソンの「創造的進化」の話を聞いたことをきっかけに、今度は哲学の世界にのめり込みます。
しかし、科学実験で説明できない哲学に対して疑問も感じていました。
成人後、子どもの知能テストのフランス版をつくるアルバイトを経て、子どもの精神分析について考えるようになったピアジェは、ルソー研究所の研究主任に就任し児童心理学の研究を始めます。
3人の子どもに恵まれてからは、自身の子どもの行動を観察して認知発達研究を行いました。
ピアジェの発達心理学の研究は、他の領域の学問に触れながら確立されていったと言えます。
■構造主義
ピアジェは構造を、知性の発達に従って別の構造に再構成されるものとして捉えました。
人間の心や認識を一種の構造体としたとき、その構造体がゼロの状態から書き込まれていくのではなく、構造の変化によって発達するという考え方を「構造主義」と呼びます。
■構成主義
構造から次の構造へ変化するプロセスは主体と環境との相互作用によって成り立つ、とピアジェは考えました。
対象に変化を加えて自分の中に取り入れること(=同化)と自分自身を変化させて対象に適応させること(=調節)の相互作用プロセスを経て、新たな認識を構成するという理論を「構成主義」と呼びます。
また、ピアジェは認識の道具として「シェマ」という概念を提唱しました。
シェマは「叩く」や「吸う」などのような、物事を考えたり、見たり、行動するときに繰り返される1つの活動単位を意味します。
同化は、言い換えると、シェマを外界の対象に当てはめて既存のシェマに統合することであり、調節は、外界に合わせて自分のシェマを組み替えることであると言えます。
さらに、同化と調節のバランスをとりながらシェマを構成していくことを「均衡化」と言います。
「シェマ」「同化」「調節」「均衡化」の4つがピアジェの提唱した認知発達においての基本的概念です。
■認知発達段階
ピアジェの理論では、認知は次々に新しい構造をたどる中で発達していくと考えられますが、認知発達には段階があるということも彼によって論じられました。
ピアジェの提唱した認知発達段階の段階ごとの特徴を以下にまとめます。
感覚運動知能期(0歳~2歳)
・感覚と運動によって対象を認識する
・言語取得を準備するまでの段階
前操作期(2歳~7歳)
・イメージ(表象)が生じ、言語を取得する
・「自己中心性」に特徴づけられる段階
具体的操作期(7歳~12歳)
・数、量などの科学的な基礎概念を獲得する
・他者と相互作用できるようになる
形式的操作期(12歳~)
・目に見えないものから推論できるようになる
・他者の視点から思考できるようになる
■自己中心性
発達認知段階の前操作期の特徴である「自己中心性」とは、この時期の子どもが、自分と対象の間の相互関係を捉えることや他人の視点に立つことが難しく、自分の視点や経験に中心化してものごとを捉えている状態のことです。
自己中心性から脱出することを「脱中心化」と呼びます。
■発生的認識論
ピアジェは認識論を科学として説明することに拘り続けました。
学問が科学であることの条件として、(1)研究対象を十分に限定すること、(2)限定された領域内で問題の解決を可能にする固有の研究方法を持つこと、この二つをピアジェは挙げています。
ピアジェ以前に認識論を語ってきた学問である哲学の場合どうでしょうか。
(1)は、研究対象を限定しないため該当しません。
限定するどころか、哲学は実在の全体を扱おうとする学問です。
(2)に関しても、反省的方法という、どの学問にも共有する研究方法しかない哲学は当てはまりません。
そこで、認識論を科学にするために提唱されたのが発生的認識論です。
発生的認識論は、(1)研究対象を諸認識の拡大のメカニズムに限定し、(2)形式的分析と発生的方法という固有の研究方法を生み出しました。
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研究対象を小中学生としている私にとって、ピアジェの発達心理研究は参考になることが多くありました。
特に具体的操作期から形式的操作期への変移についてもっと深く学びたいと思います。
さて、次回で今テーマ【学者紹介】は最終回になります。
最後までお楽しみに!
【松山彩香】
- - - 参考文献 - - -
波多野完治(1986)『ピアジェ入門』, 国土社
波多野完治(1982)『ピアジェ双書1ピアジェの発生的心理学』, 国土社
波多野完治(1983)『ピアジェ双書4ピアジェの発生的認識論』, 国土社
波多野完治(1983)『ピアジェ双書6ピアジェ理論と自我心理学』, 国土社
白井桂一(2005)『ジャン・ピアジェ 21世紀への知』, 西田書店