2014.01.24
みなさま、ごきげんよう。修士2年の早川克美です。
山内研のプロジェクト紹介第4回を担当させていただきます。
今回は、「学習者の状況に対応したシナリオ型防災教育教材の開発」についてご紹介します。この研究は、科学研究費助成事業基盤研究(A)24240103「学習者の状況および知識構造に対応したシナリオ型防災教育教材の開発」の助成を受けて実施されています。
以下の記事は、特任助教・池尻良平先生へのインタビューと提供いただいた資料をもとに構成しています。
【概要】
2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、防災教育体制の整備は喫緊の課題になっています。震災時に主体的に判断・行動する態度を育成する教材が必要とされています。シナリオ型教材は判断や行動力を促す教材としては効果的と考えられます。しかし、1つの状況を前提にしたものが多く、異なる状況の場合に間違った判断につながる学習をさせてしまう問題点があります。そこで、本研究では、学習者の多様な状況に応じて、災害時の判断や行動ができる体系的な教材を開発することを目的としています。
【学際的な研究メンバー】
開発に際しては、防災関連を専門とする東京大学・田中淳先生、大原美保先生、東北大学・地引泰人先生、慶応義塾大学・吉川肇子先生、そして、教材開発は教育工学を専門とする熊本大学・鈴木克明先生、東京大学・山内祐平先生、藤本徹先生、池尻良平先生という、学際的なメンバー構成によって研究は進められています。
【開発】
防災教育が普及しない原因(藤岡,2011)と防災教育特有の問題点(矢守,2010)を統合して、4つの教材を開発しています。
1. 詳細な状況を伝えるビデオ教材の提示
非現実的な楽観主義を払拭することを開発要件とし、首都直下地震の想定シナリオを詳細に描いたアニメ「東京マグニチュード8.0」の編集映像を導入として利用します。これは、震災時の状況に没入させて自分事にし、防災学習の動機付けを高める効果を有します。
2. 「あなたのまちと首都直下地震」の開発
居住地域の危険度を診断できるWEBアプリで、学習者の状況に合った場面の設定を開発要件としています。学習者の身近な地域での災害を想定させると同時に、学習者の地域における状況の変数を取得する効果を有します。
3. 学習者の状況に合ったシナリオ型教材の開発
主体的な判断による失敗体験と成功体験の提供を開発要件としています。居住地域の多様性や学習者の関心に対応した上で、震災発生後の72時間を疑似体験できるシナリオ型教材で、より真正な震災場面での判断・行動が行えることを目標とします。
4. SNSによる学習内容の共有と議論
個人が持つ盲点を相互補完する仕組みを開発要件として、SNSを通して教材によって得られた学習内容を共有し議論することで、多様な状況があることの認識を深めることを目標とします。
このプロジェクトのゴールは、「想定していなかったこと、知らなかったことがわかった」という、学習者の防災に対する知識構造の変容です。
お話を伺い、首都・東京に暮らす一人の市民として、
防災教育の重要性にあらためて気づかされた思いでした。
地震発生時に、必ずしも自宅にいるとは限らないわけで、
多様な状況下での自分の判断が大変重要になっていることに無頓着だと自覚しました。
「あなたのまちと首都直下地震」はすでに公開されているので、
是非ご覧になってみてください。
風邪が流行っていますがみなさまには
くれぐれもご自愛くださいますよう。
【早川 克美】