2014.01.05

【山内研のプロジェクト紹介】FLIT:東京大学大学院情報学環 反転学習社会連携講座


皆様、新年明けましておめでとうございます。山内研究室修士1年の青木智寛です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、本年度のブログテーマも、今まで【今年の研究計画】【山内研の必読書籍】【突撃OB・OGインタビュー】【参考になった研究の方法論】というテーマで進めてまいりましたが、今回からは、現在、山内研究室が参加しているプロジェクトのご紹介をしていきたいと思います。

題して、【山内研のプロジェクト紹介】
ということで、第1回はFLIT(反転学習社会連携講座)についてご紹介したいと思います。

FLIT(Department of Flipped Learning Technologies:東京大学大学院情報学環 反転学習社会連携講座)とは、昨年(2013年)の10月から東京大学大学院情報学環で始まった、反転学習に関する、NTTドコモの協力による産学連携型の共同研究の通称です。

FLITの主な目的は以下のとおりです。
1.反転授業に関連する学術的な理論の整理
2.MOOCと連動した反転授業モデルの開発
3.大学の授業における反転授業の効果検証

1の学術的な理論の整理では、現在世界中で行われている反転授業に関する種々の事例を、学術的な視点から見直し、理論として整理し直すということを目的としています。そもそも、反転授業とは、2007年頃からアメリカの学校を中心に広まった、オンラインを利用した新しい教育方法の通称です。その広まった経緯として、実践が先行して世間に認知されることになったため、学術的な定義がまだ十分に整理されていないという現状があります。そこで、FLITではそのような現状を一度アカデミックの立場から捉え直すということを検討していきます。

2の反転授業モデルの開発では、MOOC(Massive Open Online Course:大規模公開オンライン講座)を利用して、反転授業の新たなモデルを生み出すことを目的としています。MOOCとは、2012年頃から発展してきたオンライン学習の新たな形態の通称で、世界各国の大学の講義を世界中の学習者がWeb上で自由に受講できる仕組みとして近年注目されてきています。CourseraやedX,Udacityといった、MOOCを提供するプラットフォームが複数立ち上がっており、2013年度は、東京大学がCourseraに講座を公開しました。また、我が国でもNTTドコモがMOOCプラットフォームを開発を進めており、2014年春から日本の大学13校が授業を公開することになっています。FLITは、このうち1つの講座で反転授業の実践を行い、そこで得た知見を元に効果的な反転授業モデルについて検討していきます。

3の反転授業の効果検証では、実際の大学の授業で実践された反転授業の結果をもとに、それがもたらす効果について多方面からの検証を試みます。現在、反転授業は、先に述べた通り実践が広まってきている一方で、その検証が十分に行われていません。特に、我が国の高等教育の領域において、その検証を行うことはまだ始まったばかりです。(2014年1月現在の実践例としては、早稲田大、山梨大、島根大の実践があります。)そこで、実際に日本の大学で反転授業を行った事例から、その学習過程において得られる様々な記録を分析し、反転授業が教育・学習にもたらす効果について検証していきます。これについては、来年度から具体的に開始することを予定しています。


最新の情報を含めて、詳しい情報は、以下のホームページを参照していただければと思います。
http://flit.iii.u-tokyo.ac.jp/index.html


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個人的な話になりますが、先日反転授業に関する文献(Flip Your Classroom)を読んだときに、実際に反転授業を経験した生徒の声がいくつか取り上げられていました。そこには、学習意欲はあるものの、田舎で移動に時間がかかるため、課外活動の際に授業を見逃すことがあるといった、社会的な阻害要因によって満足に授業が受けられない学習者の様子が描かれていました。今後、FLITによる反転授業研究の進展によって、より多くの学習者が望ましい学習環境を享受できるようになることを、個人的には期待しています。

青木智寛

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