2014.01.30

【山内研のプロジェクト紹介】FLEDGE by Educe Technologies

みなさま、こんにちは。修士1年池田めぐみです。
山内研のプロジェクト紹介の最後となる今回は、「FLEDGE」について紹介させて頂きます。FLEDGEとは、半年間かけてワークショップデザインについて実践的に学ぶ大学生向けの勉強会です。NPO法人Educe Technologiesの社会貢献事業として、2009年より展開されています。
FLEDGEの共同企画者であり、『ワークショップデザイン論』の共著者でもある安斎勇樹さんに、FLEDGEについてインタビューさせて頂きました!


FLEDGEとは
Q.FLEDGEの名前の由来は何ですか?
巣立つ/巣立たせるという意味の英単語fledgeと、Future Learning Environment Design GEneration の頭文字をかけています。これからの学びの場作りを担う若き世代のための勉強会であるということと、ワークショップの「主体的な学びを促す」という志向性はひな鳥が自ら巣立っていくのを支援するメタファーに近いと考え、無理矢理こじつけています(笑)。

Q.FLEDGEの概要について教えて下さい。
毎期12名の大学生メンバーを募り、半年間で6回の勉強会を通して、ワークショップを自ら実践するところまで挑戦します。第1回目はワークショップを参加者として体験し、第2回目はワークショップデザインの演習課題、第3回目に実験的にミニサイズのワークショップ実践にトライし、残りの2回で本番の実践に向けて4名グループで企画を行います。本番の実践をした後、第6回目に成果報告会をして修了です。

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勉強会の様子

実践し、暗黙知を学ぶ
Q.プログラムの工夫点について教えて下さい。
ワークショップデザインって、いくら理論で説明されてもピンとこないというか、やってみなきゃわからないことが沢山あるじゃないですか。だから出来る限り理論的な部分は『ワークショップデザイン論』を無料で配布して事前に読んできてもらい、対面の勉強会ではとにかく手を動かして企画にトライしてもらい、それに対して僕や山内先生、FLEDGEのOB・Gから随時フィードバックをするかたちで進めています。

Q.実践型のプログラムにおいて難しさを感じた点はどんな点ですか?
ワークショップはデザインするのも難しいんだけれど、それを教えるのも難しい。デザインの方法論は出来る限り『ワークショップデザイン論』に言語化してまとめましたが、「なんとなくこの企画はいまいちな気がする」「煮詰まっているから、このタイミングで情報収集をしたほうがいいかも」といった感覚的な実践知は、やりとりの中でしか教えることができないんですよね。なので、なるべく毎回の勉強会で進捗を報告してもらい、それに対するフィードバックを重ねることで、書籍には書けなかった暗黙知を学んでもらうことを意識しています。


OB・Gが育てるFLEDGE
Q. OB・Gとの関わりについて教えて下さい。
FLEDGEを巣立った卒業生たちを「FLEDGED」と過去形で呼んでいます。OB・GコミュニティはFLEDGEの最大の魅力の一つです。FLEDGEDが今でも勉強会に遊びにきてくれ、後輩たちにフィードバックをくれたり、その後も食事に一緒にいったりしてくれていて、ハードな勉強会を乗り越えるための支えとなってくれています。いまだに何年も前の卒業生が同期で飲み会をしたり、連絡をとりあったりしているそうです。先日の新年会には歴代FLEDGEDが30名ほど集まり、卒業後のつながりも深いです。こういう飲み会の企画も、卒業生によるものです。

また、FLEDGEの重要なシステムの一つに「卒業生が次期の運営ディレクターを担う」というものがあります。僕や山内先生が授業運営のように直接統括するのではなく、期が終わるごとに参加者から次期のディレクターを募って運営を任せているのです。ディレクターは、具体的には、勉強会のコーディネートや参加者のグループワークのファシリテーションなどをしてくれています。自分たちが参加者として不満だった点を解消できるように、常に試行錯誤してくれています。

Q. ディレクターも教えることを通じて学んでいそうですね。
まさにそうです。参加者のときは「ワークショップをデザインする」という目の前の課題に全力で取り組めばよかったのですが、ディレクターは自分たちがアイデアを出せばよいというものではありませんから、全体の状況を俯瞰し、参加者が課題に集中できるように、色々な細かい点を整えなければいけない。参加者のモチベーションを維持するためのケアやコミュニティ作りも必要になるし、学習環境デザインについて総合的に学ぶことができますね。

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FLEDGE8期の打ち上げにて

葛藤を乗り越える経験としてのFLEDGE
Q.FLEDGEでの学びは、その後どのように活かされているのでしょうか。
FLEDGEはワークショップデザインを学ぶ場であり、実際に卒業後のキャリアのなかで、ワークショップデザインのスキルを活かしている人もいます。一方で、当初は想定していなかったけれど、FLEDGEが「良い意味で挫折経験になった」「人生が変わった」と言ってくれている人たちが結構いるのです。自分の大学の外に出て、多様で刺激的なメンバーとぶつかりあいながら、真剣にワークショップを企画し、厳しいフィードバックを何度も受けて、悔しさや葛藤を乗り越えながら何かを創りだす体験は、多くの大学生にとって貴重な成長機会になっているのかもしれません。

FLEDGEに参加する大学生たちは、ただでさえ本業の学業やサークル活動、学生団体やインターンなどで忙しい人が多いんです。そのなかでこれだけハードなプログラムをやりとげるということは、本当にすごいことです。他方で、やはりどうしても支援がいたらずに、途中でドロップアウトしてしまうメンバーも少なからずいます。それは課題の一つです。

Q.今後のFLEDGEはどうなっていくんでしょうか?
現在が9期なんで、10期が終了したら、ちょうど5年間。一つの区切りだと思っています。終了するのか、継続するのかはまだわかりませんが、同じやり方でそのままずっと続けていくのは面白くないですよね。まあ、今後のことはまだわからないですけど...!(笑)

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研究室にてFLEDGEDと安斎さん

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安斎さんインタビューにご協力ありがとうございました。
巣立つ/巣立たせる学びの場FLEDGE。今後が増々楽しみですね。

以上、FLEDGEについてのレポートでした。

池田めぐみ

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