2013.12.12

【参考になった研究の方法論】方法論を学ぶための文献の読み方

こんにちは。博士課程の安斎です。山内研究室のブログは、だいたい2ヶ月ほどの周期で、同じテーマでそれぞれの大学院生がリレー方式で更新しています。今回のテーマは「参考になった研究の方法論」ということで、各々が参照してきた書籍や論文が紹介されています。是非、過去ログをさかのぼって読んでみてください。

安斎がこれまで参考にしてきた研究の方法論は数えきれません。直接的に自分の研究に活用できなくとも、良い論文をじっくり読めば、「こういう方法もあるのか」「この方法でいつかこういう論文を書いてみたい」などと、いろいろな面で参考になります。他方で、闇雲に文献を読んでいても、「面白い方法だけど、妥当性はどうなんだろう?」「使ってみたいけど、どんな時に使えばいいんだろう?」などと迷ってしまい、自分の研究の血肉にできないこともあります。

そんな経験を振り返ってみて、方法論を参考にレビューする際に、覚えておくといいかもしれないことを2つご紹介したいと思います。


(1)受賞論文を読む

まずおすすめなのは、自分の研究テーマに関連する学会の過去の受賞論文を読むことです。これは修士課程の頃に先輩の森さんからアドバイスいただいたことで、それ以来、時間をみつけて実践しています。

たとえば日本教育工学会の受賞論文一覧はこちらで参照することができます。方法論にも潮流があることがなんとなく見えてきますし、たとえば少し古い授業研究などであっても、そのままワークショップの領域に転用できそうなものもいくつかあります。

また、メインの所属学会に限らず、近接領域や関連学会の論文もとても参考になります。方法論の妥当性は学会によって異なります。例えば日本認知科学会の受賞論文を読んでみると、内容も面白いのですが、「ここまで細かく分析するのか」と思うものもあれば、「この方法は教育工学会には適応できないかも」と感じるものもあります。他の領域をみることで、かえって自分が依拠すべき妥当性の境界が相対化されて見えてきます。


(2)なぜ別の方法を使わなかったのかを考える

他の研究者の論文を読む際に大事だなあと思うのは、その論文で使われている方法論そのものを真似することではなく、「なぜ他の方法を使わなかったのか」という理由を探ることのように思います。

たとえ受賞論文で使われている方法あっても、その背後には試行錯誤の過程があり、無数の「不採用」となった方法があるはずです。そこに書かれている方法をただ鵜呑みにするのではなく、「なぜインタビュー調査ではなく思考発話法なのか?」「なぜ比較対象を設けながら、統制群という言葉を使っていないのか?」などなど掘り下げていくと、その方法の「使いどころ」も同時に見えてきます。そういった分析をするだけでも発見がありますし、チャンスがあれば著者に直接尋ねてみてもいいかもしれません。


以上、僕もまだまだ実践しきれていないことばかりで、偉そうに書きながら変な汗が出てきました。大学院生活も残り3ヶ月、頑張って博士論文を仕上げたいと思います。

[安斎 勇樹]

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