2013.12.06
みなさま、こんにちは。
M1の中村絵里です。
キャンパスの銀杏の黄色い絨毯と、青空に向かって伸びる銀杏の樹が、息をのむほど美しいこの頃です。地面を見たり、天を見上げたりと、この季節は赤べこのように下から上へと眺めながらキャンパスを散歩しています。授業と研究のほかに、また一つキャンパスに来る楽しみが増えて、遠路はるばるやってくる甲斐があるというものです。
【参考になった研究の方法論】第6回目は、インタビューの技法についてお届けします。
インタビューというと、みなさま、どんな場面を想像しますか。
著名人が、マイクとカメラを前に語るという姿が思い浮かぶ方もいるでしょうし、企業などのトップマネジメントが、経営方針等についてインタビュアーを前に身振り手振りを交えて語る姿、あるいは、TVニュースなどでよく見られるような街頭で一般の人を対象にインタビューする場面をイメージする方もいるかもしれません。実のところ、インタビューは、前述した事例のようなビジネスやマーケティングシーンで活用されるだけでなく、探索的な研究をする際に重要となる質的データを得るための手法としても取り入れられています。
私自身の研究では、実践の評価のためのデータを、個人およびグループを対象としたインタビューから取りたいと考えています。そこで、今回は、主にフォーカス・グループ・インタビューの技法について、以下の書籍を参照しました。
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『グループ・インタビューの技法』
S・ヴォーン, J・S・シューム,J・シナグブ 著
井下 理 監訳,田部井 潤・柴原 宣幸 訳
慶応義塾大学出版会 1999年
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フォーカス・グループ・インタビューとは、リラックスした雰囲気の中で、特定のトピックについてグループで討議し、非常に幅の広い、より包括的なデータを得る手法だと定義されています。同グループ・インタビューには、以下のような実用性が含まれます。
1.相乗効果性(グループでの相互作用を通して、より広範なまとまったデータが現れる)
2.雪だるま性(ある反応者の発言が、さらなる発言へと連鎖的反応を引き起こす)
3.刺激性(グループでの議論そのものが話題についての刺激を産み出す)
4.安心感(グループが安らぎをもたらし、率直な反応を促進する)
5.自発性(参加者は全ての質問に答えるよう要求されているわけではないので、彼らの反応はより自発的で純粋である)
これらの実用性を私の研究に照らし合わせてみると、個人を対象としたインタビューだけでは得られないであろう集団ならではの意見の広がりが、期待できます。研究の具体的な対象はまだ確定していませんが、可能な限り、アジアの途上国において教育アクセスが困難なコミュニティに焦点を当てる予定です。その国内において、異なる場所に存在する2つ以上の実践コミュニティ(Community of Practice: COP) をつなぎ、相互に情報流通させることが、それぞれのCOPに対して、どのような影響をもたらすかということを明らかにしたいと考えています。フォーカス・グループ・インタビューの特性を最大限に活かして、COPへのインタビューを試みたいと思います。
この本の中では、フォーカス・グループ・インタビューの教育・心理学研究への応用、参加者の選定、司会の役割、データ分析といったインタビューの準備から実施、終了後のデータ分析に至る一連の流れが紹介されていますので、今後、具体的に研究が進む中で、度々参照することになるかと思います。
以上、インタビューを研究における有益なデータ取得法と捉えて『グループ・インタビューの技法』を紹介しましたが、研究のみならず日常生活においても、人の話を聞くという基本的なコミュニケーションの一つとして、インタビューの技法は身につけておきたいものです。そこで、参考になったのは以下の書籍です。
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『インタビューの教科書』
原 正紀 著
同友館 2010年
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こちらの本には、主に一対一の個人インタビューに関する心得が綴られています。インタビュアーとして留意すべき点や、相手のレスポンスに応じた切り返し方や話の掘り下げ方など、プロのインタビュアーでなくても、日常的な場面で役立ちそうなコミュニケーション能力を養うためのヒントが満載です。
さて、この先あと1年間で、どんなインタビューを設定できるかまだわかりませんが、ご紹介した2冊をときどき読み返しながら、質の高いデータを収集できるように努めたいと思います。
【中村絵里】