2013.12.01

【参考になった研究の方法論】"仮説検証型"の研究と、"明らかにする"研究

みなさんこんにちは。早いものでもう師走。
本郷キャンパスでは銀杏がとってもきれいです。


【参考になった研究の方法論】第5回目は私、修士1年の池田めぐみがお送り致します。前回の青木君と同様、研究内容が完全に決まっていない私には研究法の候補も2つ存在します。そこで今回は、その2つの研究方法について紹介したいと思います。


1.安斎勇樹, 森玲奈, 山内祐平(2011)創発的コラボレーションを促すワークショップデザイン(教育実践研究論文). 日本教育工学会論文誌, 35(2):135-145

この研究は、研究室の先輩であり私のファシリテーター(山内研におけるメンターのようなシステムです)である安斎さんの研究で、創発的コラボレーションを促すプログラムをデザインし実践を行った、仮説検証型の準実験研究です。


論文に記載されている安斎さんの研究目的は‥
「ワークショップにおいて創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザインの指針を示すことを目指す」こと
具体的には「先行研究を参考にしながらデザイン原則を仮説として設定し,ワークショップ実践とと分析を通してその効果の検討を行う.そしてその結果から,創発的コラボレーションを促すために有効なプログラムのデザイン原則を提案すること」だそうです。

この論文においてとられている研究の方法は以下の通りです。
①デザイン原則の仮説立て
②プログラム概要の決定
③ワークショップにおける制作課題の条件設定
④計8回にわたる実践(うち、実験群、統制群4回ずつ)
⑤ワークショップ中のビデオカメラ、ICレコーダーのデータから、発話データのコーディングを行う
⑥コーディングカテゴリのうち5つを取り出し、分析を行い、コラボレーション展開図を作成
⑦先行研究を元に作った定義にあわせて、創発的コラボレーションがおきていたか、コラボレーション展開図上で判定


安斎さんは実践を計8回101人対象に行い、発話内容をを丁寧に分析しています。
仮説を立て、実践するとなると、ついつい仮説を立てることにばかり熱中してしまいそうになりますが、このデザインによりこの効果が生じたということを論じるためには、実践に参加した人の数や分析も重要になることがうかがえます。


2.我妻優美, 中原淳(2011)大学生の学習観変容に影響を及ぼす協調学習経験 : 映像作品制作を目的とした大学授業における事例研究. 日本教育工学会論文誌, 35(Suppl.):57-60

こちらは、お隣の中原先生の研究室の修了生、我妻さんの研究で、学習者の学習観の変容に影響を与える協調学習経験の特長を明らかにする研究です。我妻さんは大学2年生向けの4月〜7月(計7回)の授業を対象に、観察調査と事前事後の質問紙調査から学習観が変化した学生の特定と、それに影響を与えた協調学習経験を明らかにするということを行っています。


論文に記載されている我妻さんの研究目的は‥
「高等教育における協調学習を取り入れた授業において,学習者の学習観の変容に影響を与える協調学習経験の特長をあきらかにすること」であり、
「大学で協調学習を取り入れた授業の単一事例を対象とした調査を行い,学習観が変容した学習者を同定し,その学習者に特徴的な協調学習経験を明らかに」しています。

この論文においてとられている研究の方法は以下の通りです。
①先行研究を参考にしながら質問紙の作成
②授業期間前における比喩生成課題を用いた質問紙調査
③授業中における参与観察
ビデオカメラ、ICレコーダーでの授業の記録とフィールドノーツの作成
④授業期間後における比喩生成課題を用いた質問紙調査
⑤比喩生成課題の回答をを分析し、学習観がが変容した学習者を同定
⑥学習観の変容が見られた学生の協調学習経験の特長を明らかにするために、変容がが見られた学習者と、見られなかった学習者の経験を比較しながら、フィールドノーツを質的分析


我妻さんは、学習観が変化した学生を質問紙から同定し、その学習者に特徴的な協調学習経験は何であったかをフィールドノーツから分析しています。
調査することを漁業にとらえるならば、調べる手段は網であり、あきらかにしたいことは獲物だと言えます。何を獲物とするかによって網をきちんと使い分けること、獲物を捕まえるために網をしっかり考えて用意することが重要であることがうかがえます。

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ある目的に対し、効果をを生むであろうインフォーマルラーニングのデザインの仮説を立て、実践するのか、あるいは、既存の活動において、未だわかっていないことを明らかにするのか迷える所です。
自分がこだわりたいポイントを整理しながら、先行研究をレビューしながら、自分のやりたいことにあったスタイルを、早い所決めなきゃですね。Macが冷たい季節になってきましたが、面白い研究ができるよう、頑張っていきたいと思います。

池田めぐみ

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