2013.08.15
こんにちは、M2の梶浦美咲です。
今週から山内研ブログ史上初企画、【突撃OB・OGインタビュー】がスタートします!
研究室メンバーが実際にインタビューをし、山内研究室出身者の方々の現在にせまってみようと思います。
OB・OGさん方は現在何をされているのでしょうか?
早速、第1回目は2005年4月~2009年3月まで山内研究室に在籍されていた佐藤朝美さん(Web: http://e-sato.net/tomo/)へインタビューをしましたので、ご紹介したいと思います!
佐藤朝美さんは、2009年5月~東京大学大学院情報学環の助教、特任助教と歴任し、現在は東海学院大学子ども発達学科の専任講師をされています。学生時代の研究テーマは「幼児の物語行為を支援する学習システムの開発」であり、元々お勤めされていたIT企業で培った技術力で幼児向け学習システムを開発されていたそうです。
以前、山内研究室に在籍されていた頃に佐藤朝美さんが執筆されたブログ記事も参考にしつつ、インタビューしてみました。
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Q. 現在、東海学院大学で子ども発達学科の専任講師をされているようですが、具体的にどのようなことをされているのですか?
就任してまだ3ヶ月ですが、現在ここでは「教育方法論」「子ども学フィールドワークI,II」「子ども学実践演習I,II」「子ども学研究法」「子ども発達演習」「子ども文化演習」「子育て支援演習」「子ども発達演習」といった授業を担当しています。
「子ども発達演習」では、実際に東海学院大学の図書館にある「えほんの森」で学生が子ども相手に読み聞かせをするようなことをやっています。授業で絵本や読み聞かせについて学んだ後に、実際に読み聞かせを実践する授業なんです。
「子ども学実践演習II」では、地域の人たちに公開している「あそびの森」というお部屋で、学生たちが考えた活動を子ども相手に実践しています。近所の人たちや子連れの人たちが沢山集まります。まるでワークショップのような感じなんですよ。
もちろん、理論的なことも学ぶのですが、この学科では実践的に学べることがウリの1つなので、授業では活動のデザインや読み聞かせを行ったり、幼稚園や児童館等のフィールドへ出かけたりして、子どもや家族と沢山関わることを大切にしています。実践した後にはしっかりリフレクションもします。小学校教諭や幼稚園教諭、保育士を目指している学生とともに、子どものことについて考えていく現在の仕事は本当に楽しく、就職できて良かったと思っています。
Q. なぜこの道を選んだのでしょうか?
昔から研究者になりたいと思っていたわけではなく、自分のやりたいことをつきつめていった結果、大学の教員になったような気がします。やりたいことをしていたらこの道が拓けてきたんです。
私は大学を卒業してすぐコンピュータの会社でSEになり、その後、メディアアーティストになりたい(笑)と思い、武蔵野美術大学に入りました。「幼児を取り巻くメディア環境」について考え始めたのは、SEをやっていたことと、子どもを産んでいたことがきっかけです。子ども向けのメディアにはどのようなものがあるのか、またモノ作りをしたい、と思ったんです。
武蔵野美術大学では、子ども向けのデジタルコンテンツを作る機会がありました。開発したデジタルコンテンツを子どもたちが楽しんでくれて、その子どもたちの中で何が起こっているのか、教育的効果が知りたくなり、山内研究室に入りました。そして、それをつきつめていく上で研究者という立場へと進んでいきました。まだまだ研究者と呼ばれるには早い感じですが、今ではこの道に進めたことをとてもありがたいと思っています。
Q. 大学院では「幼児の物語行為を支援する学習システムの開発」というテーマで研究をされていたようですが、それが現在のお仕事にどのように活きてきているのですか?
幼児の発達について研究してきたので、現在教えている授業では、それが生きてきていると思います。物語行為という研究テーマがダイレクトにきいてはいませんが、修士での研究は、研究の作法を学べた良い機会だったと思います。山内研究室での研究活動が今の自分を支えています。
私は社会人から大学院へ入学したので、当初研究の方法論が分かりませんでした。しかし、一通り修士論文としてまとめたことで、ようやく研究とは何かが理解でき、博士課程の次の研究にもつながりました。
学習環境が整っている研究室で、研究計画の立て方や先行研究の集め方、テーマの絞り方、実験方法、評価方法など研究の流れをとてもよく学ぶことができました。プロジェクトで携わっている研究もこれまでの研究経験がとても役立っています。なんといっても、これらの研究論文のおかげで就職できたわけです!
Q. キャリアを築く上で大変だったことはありますか?
キャリアといわれると恥ずかしいですが...(笑)。家庭を持っている、ということで周囲の人に協力を要請してしまった点です。
家庭をもちながら研究をする上で周囲の人に迷惑をかけてきました。息子はもちろん、母にも手伝ってもらいました。夫も結婚当初は私が大学で働くことになるなんて考えたこともなかったと思いますが文句を言わずに協力してくれています。周囲を巻き込んでしまっている点で申し訳ないです。が、その分泣き言を言わずに頑張らねばと思います。
私は以前、SEとして働いていましたが、システム納品前などは徹夜勤務などもあり、子育てとの両立を諦め退職しました。大学教員はフレキシブルで働きやすくはあるのですが、それでも周囲の協力を得ながら何とかこなしてます。日々、働けることに感謝しています。
Q. 研究者を目指す上で工夫されたことはありますか?
博士課程に進学するか山内先生に相談した際に、山内先生が私の研究テーマに対し、幼児や子どもを対象としたものは、流行が来たり脚光を浴びたりしないだろうが、絶対に必要なジャンルだと言ってくださって、それはとてもありがたい事でしたし、大事なことだと思いました。
面白い!と言われるものでなくても、自分が大切だと考え、さらに社会的ニーズがあれば、みんなが手を出さないことに手を出し、研究していこうと思います。
今は研究として扱いにくいだろう「家族」に踏み込もうとしています。親子や母子や家族というテーマに社会的ニーズがあるはずですが、教育工学的なアプローチはあまり行われていないため、チャレンジしたいと思っています。文科省の方針をはじめ、国内外のWebを見たり、ベネッセ等の企業の取り組みをチェックしたり、ママ友との情報交換から社会的ニーズを考えます。最近では幼児教育の大学の先生のFBや絵本作家さんのTwitter等の情報からも沢山刺激をもらってます。また、学会や研究会、シンポジウムやセミナーでお会いする方々、さらには現職場で出会った先生方も含め、出会いを大切にすることが次の素敵な機会(チャンス)につながっていくと考えています。
Q. 最後に、研究する上でアドバイスがあればお願いします!
山内研究室にいて、学生はみんな最初からやりたいことを持って入ってきてはいるのですが、色々とアドバイスを受けると、段々と自分が何をやりたかったのか分からなくなっていってしまう姿をよく見かけました。そのような人たちに対して、他の人たちからのアドバイスはアドバイスとして受け取っておき、こだわりたい部分は捨てずに死守して欲しいと思います。
また、テーマが拡がりすぎて、うまく研究にできない人もよくみます。できることは限られるので、そぎ落として譲れない部分をしっかり見つけて、それを研究にすると良いと思います。
そうやって試行錯誤しながらも山内研究室ではみなさん面白い研究をしてますよね!?今年はどんな修論が生まれるのでしょうか?岐阜の山の中にいても、みなさんの様子がSNSを通じて垣間見れるこの時代ってありがたいです!私自身も山内研の後輩たちから刺激をもらって切磋琢磨していきたいです。
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インタビューをして、佐藤さんの「やりたいことをしていたらこの道が拓けてきた」というお話がとても印象に残りました。やりたいことがあったとしても、その夢を実現するのはとても難しいことだと思います。日々の努力と行動力、そして夢を手助けしてくれるような人との出会いが大切だと思いました。
また、今後私自身も自分の譲れない部分をしっかり見定めて、それを研究成果として形にして修了していけたら、と思いました。
インタビューに協力して下さった佐藤朝美さん、ありがとうございました!!
【梶浦美咲】