2013.06.30
みなさまごきげんよう。M2の早川克美です.
山内研の必読書籍シリーズ。
4回目は「学びの空間が大学を変える」(山内祐平[編著]ボイックス,2010)をご紹介させていただきます。
日本の大学は今,大きな変革期を迎えています.一方で,この100年、大学の学習空間にはほとんど変化がありませんでした。インターネットの普及による情報革命,社会から高度な専門性を持つ自律的人材の育成が要請されている現在、大学の学習空間はどうあるべきなのでしょうか。この本は,現在求められている新たな学び=能動的学習を支援する新しい形の教室「ラーニングスタジオ」、図書館を、情報を活用した学びの場に変える「ラーニングコモンズ」、対話によって大学を社会に開く「コミュニケーションスペース」の動向を通じて、学習空間から今後の大学像を考えていこうとするものです。
本書の構成は以下の通りです.
【目次】
第1部 教室の変革ーラーニングスタジオ
Part.1 ケーススタディ:駒場アクティブラーニングスタジオ(東京大学)
Part.2 能動的な学びを促進するスタジオ型教室
第2部 図書館の変革ーラーニングコモンズ
Part.3 ケーススタディ:マイライフ・マイライブラリー(東京女子大学)
Part.4 自律と協同の学びを支える図書館
第3部 交流の場の変革ーコミュニケーションスペース
Part.5 ケーススタディ:公立はこだて未来大学
Part.6 開かれた大学を実現するコミュニケーションスペース
本書には先進的な学習空間の事例が多数掲載されており,大変魅力的です.
それゆえに,著者は「成功事例を形だけ真似て空間が機能しないケースは,枚挙にいとまがない」と警鐘を鳴らしています.そして「大学はひとつひとつ置かれている状況が違う.重視すべき学びを抜き出し,それを支援するためにどのような学習環境が必要なのかについて,経営陣,教員,職員,学生がよく話し合い,ビジョンを決める必要がある」とアドバイスしています.
「学びの空間が大学を変える」とは,その大学の学びのビジョンを空間という物理的環境によって可視化し,そこで起こる活動を丁寧に育み,ビジョンを成長させていくことだと,本書を読んで感じます.
【早川 克美】