2013.04.12
こんにちは。4月よりM2となりました吉川久美子です。
今年度もどうぞよろしくお願いいたします。
「今年の研究計画」シリーズ、第2回目を担当させていただきます。
入学してから現在までの研究の変遷を振り返ると、本当に紆余曲折しながら進めて
きたと感じています。
それでも、改めて1年前の研究計画を見て驚いたのは、私の中で消えない強いこだわりが、無自覚的にずっとあったということです。
このこだわりを大事にしつつ、いよいよ論文執筆に入る今年度は、現時点で以下の
ように進めていきたいと考えています。
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【研究テーマ】
造形ワークショップにおける表現と鑑賞が相互に関連する効果的な学習方法の提案
【背景】
これまでの美術科教育は表現重視の傾向が強かったのですが、1988年に鑑賞重視傾向へと「転換期」を迎え(藤澤2008)、2008年になると、学習指導要領に「表現」と「鑑賞」の領域をつながりを持って指導するようにと「共通事項」が新設されました。美術館教育においても1980年代より、「みる」だけでなく「『つくる』『かたる』などの教育的配慮を積極的に打ち出すケースが多く見られる」ようになります(降旗 2008)。1998年になると、学校との連携を積極的に促され(藤澤2008)、美術科教育の動向も軽視できなくなってきました。
こうした動向より、鑑賞と表現が関連した学習方法の提案は、美術教育が直面している1つの課題だと言えます。しかし、両者をどのようにつなげれば、美術の本質的な学びが起きるのか、その方法は未だ模索中の段階と言えます。
【目的】
そこで本研究では、Dewey(1934)の表現と鑑賞の定義を借用しながら、美術
の学びとは、表現と鑑賞のサイクルの中で、ある対象に対して自分なりに新しい意
味生成を行うことであると捉え、研究を進めていきたいと思います。作品を媒介と
した表現と鑑賞のコミュニケーションが起こりやすいとされる造形ワークショップ
に着目し、学習者があるテーマに対し、自分にとっての新しい意味生成を行うこと
ができる支援方法を提案することを目的とします。
【研究方法・分析方法】
実際に本研究で提案する支援方法が組み込まれたワークショップと組み込まれて
いないワークショップを実践し、ワークショップ中の様子をビデオで記録し、制作
メモ等からデータを収集していく予定です。そして、両者間でどのような差異が見ら
れたかを比較検討していきたいと考えています。
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これまで、研究のアイディア等を検討していくために、さまざまな実践家の方々の
ワークショップを見学させていただき、お話をお伺いさせていただきました。
本当に感謝しております。
実践を通して(見学して)得たこと、文献レビューを通して得たこと、両者を
きちんと自分自身の中で整理しながら、まだまだ至らぬ点が多いこの研究を、
しっかりと育てていきたいと思います。