2012.09.01
みなさまこんにちは。
【研究に役立つウェブサイト】シリーズ第3回は、M2の末 橘花がお送りします。
私は普段、論文検索サイトのciniiや世界の教育系論文の検索サイトであるERICなどを使用しています。これらは、誰もが通る道だと思うので、私の研究に特化したものをご紹介しようと思ったのですが、私の研究分野である歴史教育では例えば歴史教育で身につけるべき力とそれをのばすための教材を紹介したThe Historical thinking Projectがあります。しかし、オーラル・ヒストリー関連は、そもそも教育研究自体が少ないので、今回は様々なオーラル・ヒストリー・プロジェクトのwebサイトをご紹介したいと思います。
オーラル・ヒストリーは、文化人類学、社会学、歴史学、政治学など様々な分野から発達しているため、目的や手法は多種多様です。生きた声を収集するオーラル・ヒストリーは、命には限りがあるため、使用用途や分析方法はさて置き、とにかく証言が消えてしまう前に、記録に残そうというスタンスをとっているものが多いようです。そのため今後整理が必要になるであろうとも言われているのですが、今回はとりわけ有名なプロジェクトをご紹介したいと思います。
【専門としてのオーラル・ヒストリー】
▼日本オーラル・ヒストリー学会
まずは学会です。これはプロジェクトではありませんが、日本で唯一のオーラル・ヒストリーの学会です。学会誌は2年以上前のものはフリーで読むことができます。オーラル・ヒストリーがどのようなものか、またどのように分析されているのかを知るのに役立つと思います。
【災害の記憶を記録する】
戦争や地震など、様々な感情や体験を歴史として刻むためにオーラル・ヒストリー・プロジェクトが行われています。
▼NHK戦争証言アーカイブス
こちらのサイトはご存知の方も多いかと思います。
これは、戦争を体験した人々の証言を収集し放映したNHKの「戦争証言プロジェクト」の中で収集した証言を、未放送の部分も含めて、インターネットを通じて誰もがいつでも視聴できるようにしたものです。このサイトでは、証言であるインタビュー以外にも、実際に放映された番組、戦時中のニュース映画、戦時録音資料を見ることができます。
▼311まるごとアーカイブス
昨年3月11日に発生した「東日本大震災の経験や教訓を人類共通の資産として千年先の後世に伝承し、安全な社会を構築することが現世代の責任」であると掲げ、被災地の失われた「過去」の記憶をデジタルで再生し、被災した「現在」と復興に向けた「未来」の映像や資料をデジタルで記録しまるごとアーカイブすることを目的として、「東日本大震災・災害復興まるごとデジタルアーカイブス」(プロジェクト略称:311まるごとアーカイブス)が立ち上がりました。このプロジェクトには、本専攻である学際情報学環の吉見俊哉先生も携わっていらっしゃいます。
【専門分野のオーラル・ヒストリー】
各学会や業界でオーラル・ヒストリーを行う場合もあります。
▼日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ
美術の分野に携わってきた方々にインタヴューを行い、口述史料として収集・保存している団体で、2006年に美術史の研究者や学芸員によって設立されました。
【組織のオーラル・ヒストリー】
企業、官僚、大学など様々な組織で、暗黙知の継承や、公的な記録として残すことを目的として、オーラル・ヒストリー・プロジェクトが行われています。
▼Stanford Oral History Programs
米国スタンフォード大学文書館が所蔵するオーラルヒストリーのコレクションをオンラインで公開したものです。この、大学の歴史をオーラルヒストリーとして残す取組み"Stanford Oral History Project"は、1978年に、同館とStanford Historical Societyによって始まりました。大学の経営陣や教員、職員や卒業生に対する400以上のインタビューや会話が存在するそうです。
【番外編】
アメリカ人の小学生コール・カワナくんによるオーラル・ヒストリー講義(動画)
コールくんは、広島の原爆者である大叔父アーサー・イチロウ・ムラカミ氏へインタビューをし、その体験談を記録しました。また彼は、他の生徒たちのために、オーラルヒストリーインタビューの記録の仕方をを9分間のDVDにまとめました。
オーラル・ヒストリー推しの私としては...なんだか先を越された感じがしますね(笑)
このように様々なオーラル・ヒストリー・プロジェクトがあります。
上記にあげたものだけでなく、自身の家族史や会社や大学など組織の歴史、自分自身の専門分野の歴史など、文字に残らないけれど、残すべきものとして重要なものも多々あると思います。そんなときにオーラル・ヒストリーを使ってみるのもいいかもしれません。
【末 橘花】