2012.08.15

【エッセイ】教員養成で教育大を超えたオンライン大学

先日、合衆国教育省が、オンライン大学の教員養成が急増しており、学位授与数で最大規模の教育大学を抜いたという報告書を出しました。

USA Today: Online education degrees skyrocket

2011年度にもっとも多く教育に関する学位(学士・修士・博士)を出した大学はフェニックス大学で、5,976になっています。フェニックス大はオンライン営利大学の草分けとして世界的に有名です。
これに対してアメリカで最大規模の古典的な教育大学であるアリゾナ州立大学が出した学位数は、2,075であり、フェニックス大の半分弱です。ただし、学士(教育学)はアリゾナ州立大学が979でトップになっており、オンライン大学が修士号以上に照準を合わせていることがわかります。

アメリカと日本の教員養成は社会的背景が異なっており、このデータの読み取りには注意が必要です。
まず、アメリカでは教員と他の職業とのキャリア転換がおきやすいことがあげられます。給与水準が低いため、よりよい待遇を求めて教員をやめて民間企業に転出するケースがある一方で、最近のように不況になると、逆に民間企業から教員になりたいという人材が流入します。また、より高い学位を持つと給与や待遇が向上するようになっているため、修士号や博士号をとった方が有利になっています。連邦政府もより専門性をもった教員を育てるために大学に補助金を出しています。
つまり、オンラインで学位をとることが教職の確保や待遇の改善に直結するため、教員養成に関してはオンライン大学が他の領域よりも有利な位置にあるわけです。

最近は営利大学だけでなく、伝統的教育大学もオンラインコースを設ける例が増えています。また、教育省はオンライン上に教員コミュニティを作るプロジェクト「Connected Educators 」を開始しており、教員の専門性を向上させるためのオンライン学習環境は今後大きな潮流になりそうです。

山内 祐平

PAGE TOP