2012.08.09
8月7日から9日まで、函館で研究室の夏合宿を行いました。
例年夏合宿では、古典とされている教育研究者(デューイ、ピアジェ、ヴィゴツキーなど)をレビューすることが学習の中心なのですが、今年は新しい挑戦として、スタッフが抱えている現在進行形の「課題」に対して、担当した研究者であればどう解決するかを考えるという試みを行いました。
私が出した課題は、「オンライン学習における離脱」です。アメリカで大学中退率の上昇が問題になっているように、対面の学習であっても学習が続かずドロップアウトするということは起きますが、オンライン学習はさらに持続が難しく、Levi,Y(2007) によれば、25%〜40%が離脱するとされています。
この課題に対して、大学院生の伏木田さんと山田さんと私のチームで、担当したパウロ・フレイレとアラン・ケイの考え方から、どういう解決方法があるかを考えました。
議論の中で明らかになってきたのが、フレイレもケイも、「学習における問題の意味」を可視化する学習環境を構成しているということです。
フレイレは識字教育において、貧しい人々が文字を持つことによって世界を変革するための実践を展開しました。その際に、できるだけ身近な単語を文字で表す学習プログラムを構成し、世界との関わりがどう変わるのかを端的にフィードバックし、文字を学ぶ意味を理解してもらっていました。
ケイは、子ども向けのプログラミング環境であるSqueakの開発において、プログラミングによって想像の世界をシミュレーションすることによって、試行錯誤の楽しさから問題を解決してみたいと思わせる環境を構築しました。
問題の種類は違いますが、「これは私にとって解決してみたいと思える問題だ」ということを納得できるような可視化が行われているという点は共通しています。
オンライン学習はともすれば無味乾燥になり、学習の意味を見失いがちです。学習の離脱を防ぐためには、「問題の意味はあなたが考えてください」というスタンスではなく、「あなたにとって解決する価値がある問題なのだ」ということを可視化して納得してもらうことが出発点として重要になりそうです。
もちろんこれは一種の思考実験ですので、今後実践で試してみる必要はあります。ただ、他のチームも面白い知見がたくさん出てきており、こういう古典を現代に適用する読み方も面白いものだと実感しました。
【山内 祐平】