2012.05.11
みなさま、こんにちは。【今年の研究計画】シリーズ、今回はD2の安斎勇樹がお送りします。
安斎の研究目的は、一言で言えば「ワークショップにおいて"創発的コラボレーション"を促すためのプログラムデザインの原則を提案すること」です。
近年、「新しい学びと創造のスタイル」として、ワークショップが注目されています。ワークショップとは、「恊働で何かを創りだすことで学ぶ活動」のことであり、授業や研修とは違うインフォーマルな場で行われるものです。ワークショップ実践が行われる領域は多岐にわたりますが、大学生の「創造性」の育成の手段としても注目を集めており、グループでアイデアを考えたり、アート作品をつくったりするタイプのワークショップが多く実践されてきています。
創造性については、これまで数多くの研究がなされてきました。かつては、創造性は「個人」が発揮するものだと考えられてきましたが、近年では「コラボレーション」の重要性への認識が高まり、創造性を育成する上でもコラボレーション体験が重視され始めています。たとえば心理学者のキース・ソーヤーは、創造性を育成するためには学習者同士が即興的にアイデアを連鎖させながら新しいアイデアを生み出すような、いわば「創発的コラボレーション」の体験が必要であることを指摘しています。
自由で創造的なスタイルであるワークショップは、こうした「創発的コラボレーション」の体験の場として有効であると考えられます。しかしながら、その方法論に関する実証的な研究はいまだ少なく、具体的に「どのようにワークショップのプログラムをデザインすれば、創発的コラボレーションが起こせるのか」については明らかになっていません。
そこで、本研究の目的は、創発的コラボレーションを促すためのワークショップのプログラムデザインの原則を提案することです。修士研究では、ワークショップのプログラムデザインの中でもメインアクティビティの「課題の設定」に焦点を当てて研究を行いました。具体的には、創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し、ワークショップの課題設定に矛盾のある条件を設定することが、創発的コラボレーションを促すことを実践と質的分析によって明らかにしました。
ところが、ワークショップのプログラムデザインはメインアクティビティの課題設定だけでなく、各アクティビティをどのように構成するか、という点も重要です。そこで、博士研究では、「活動の構成」に焦点を当て、創発的コラボレーションを促すためのデザイン原則を提案できればと考えています。現在はプレ実践を重ねている段階ですが、今年度中に論文としてまとめられればと思います。
【安斎 勇樹】