2012.04.03

【エッセイ】みんながジョブスでなくてもいい

3月24日(土)にBEATSeminar 「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」が開催され、NPO法人産学連携推進機構 理事長でいらっしゃる妹尾 堅一郎先生からイノベーション人財育成について大変興味深いお話を伺いました。セミナーレポートが完成次第このページでお知らせします。(当日のTweetのまとめはこちらからご覧いただけます。)

特に大学において、企業が求めるイノベーション人財をどう育てるのかという問題が顕在化していますが、最近気になっているのが、その象徴としてのスティーブ・ジョブスの位置づけです。偉大な仕事をしたことは間違いありませんが、彼のような人だけがイノベーション人財なのかどうかは慎重に検討する必要があるのではないかと考えています。

先日Forbes誌でこの問題に関係する興味深い調査記事を読みました。

The Five Personalities of Innovators: Which One Are You?(イノベータの5つの個性:あなたはどのタイプですか?)

この記事では、ヨーロッパ企業の1245人の経営層に対する調査から、企業においてイノベーションの雰囲気を醸成する5つの個性を明らかにしています。

1) 他者を揺り動かす人 (22%)
強いリーダーシップを持ち、他者を説得して動機づけることによってプロジェクトを前に進めていくタイプ。やや傲慢でチームワークは苦手。

2) ともかくやってみる人 (16%)
アイデアを思いついたらともかく実行してみるタイプ。失敗を恐れず必ず乗り越えるという強い意志を持っている。イノベーションには不可欠だがCEOには少ない。

3) なんでもできる人気者 (24%)
小学校に時々いる「なんでもできてかつ人間的にも魅力がある優等生」タイプ。産業の種類や会社の規模にかかわらずCEOに多い。

4) 秩序を好みコントロールする人 (15%)
リスクを避け、整然と着実にプロジェクトを進めるためにまわりを制御するタイプ。営業など現実的な目標に向かう際に力を発揮する。

5) あたりさわりのない居候 (23%)
いてもいなくてもあまり影響がないと思われている地味なタイプ。中庸を好み手続きを重視することによって組織に受け入れられるかどうかのリトマス試験紙役になる。会計部門に多い。

イノベーション人財といえば、1)や2)のタイプが思い浮かべられるのではないでしょうか。ジョブスのイメージもほぼこれに重なります。しかし、組織がイノベイティブなアイデアを形として世に送り出すためには多様な人々の力を結集する必要があります。一見イノベーションと関係なさそうに見える人たちも、重要な役割を果たしているのです。特に4)や5)の人たちがイノベーションを殺さず、アイデアの価値を理解してバックアップすることがとても大切です。

アップルという組織を見てみても、現CEOのクックをはじめ、多様な個性に支えられて成功しています。ひとりひとりの可能性を活かしながら、新しいことを生み出すことを文化として共有すること、それがイノベーション人財育成の前提条件なのかもしれません。

山内 祐平

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