2012.04.06

【M2の研究計画】大学生の学習実態と学習空間に関する研究

みなさま、ごきげんよう。修士2年の早川克美です。
昨夜、山内研では本郷キャンパスで恒例のお花見の宴がありました。
例年より少し遅い開花の桜は、寒さに耐えながらめいっぱいふくらませた蕾を一気に開き、その様は実に晴れやかで生命力にあふれ、私たちに活力を与えてくれたようです。

さて本題です。
年度のはじめに際し、自分が現時点で考えている研究計画をご紹介いたします。


【研究テーマ】

「大学生の学習実態と学習空間に関する研究」


【研究の背景】

今日、『学士力』なる概念が中央教育審議会より提起され(2007年9月)、大学生の学習成果を、包括的に捉えていくことが焦眉の課題となっています。学習成果の理解においては、 学習以外の大学生活の過ごし方が、授業での知識・技能の獲得に効いている(溝上、2007)、 学生側が大学での学習にどのようにエンゲージしているのかを考慮することが重要(岡田他、2011)と指摘されています。また、山内(2011)は、学習メディアの多様化、教授法の変化、学習スタイルの変化によって、近年ラーニングコモンズと呼ばれる新しいかたちの学習空間が提供されつつあり(山内他、2010)、学習の文脈をつくるためにも自主的な学習コミュニティへの支援が重要になってくると主張しています。
一方で、キャンパス内における学習空間に対する研究では、カリキュラムで拘束されない自由なコミュニケーションが、学習意欲、人間形成にとって重要である(上原他、1985)としてインフォーマルな学習空間の必要性にふれています。
先行研究からは、学士力の強化を背景に学習実態が調査分析され、学習をとりまく状況の変化に対し新たな空間が提案されつつあり、学習空間に関する研究も多々あることがわかってきました。しかし、 井上(2005)が指摘するように、既存のスペースが学生の生活行為や要望に適切に対応できていない可能性があり、学習空間と学生の学習実態は必ずしも整合性が図られているとはいえません。学生が実際にいつ、どこで、どのように空間を利用して学習の機会を得ているのかについて、空間と結びつけた学びの実態を調査した研究は行われていません。


【研究の目的】

「インフォーマルな学習を含めた大学生の学習実態」と「学習空間の利用実態」について調査を行い、その関係にパターンを見出すことで、大学が対処するべき 学習環境デザインの基礎となる空間原理を導きだすことを目的としています。


【研究の仮説】

今日の様々な共同体で行われる学習の75%以上は、インフォーマルな学習が占めている(Conner,2009)と指摘されることからも、授業時間外での活動も含め、学生の学びの実態を捉えていくことが重要であると考えます。
インフォーマルな学習の実態を調査し、明文化することにより、大学生の学習実態と学習空間の関係にパターンを見出すメタ認知によって、学生本人や教職員が意識していない場面で「学習」が発生しているというケースをピックアップし、そして、「学習が発生している空間」で何故「学習」が起こっているのか?どのような空間が学習を支援しうるのか?について考察を試みたいと考えています。


【研究の方法】

調査は数校の大学において、学生に対し、質問紙調査の後、特徴的なパターンを持った対象者に対し、写真日記とそれに基づくインタビュー調査を行う予定としています。


【今後に向けての課題】
 ●調査の対象となる大学を選定する根拠。
 ●質問紙の項目設定、調査のスケジュール。
 ●パターンを発見する根拠となる原理・指標をもつこと。
 


課題が山積みですが、ひたすら学んで一つ一つの課題をクリアさせていきます。
2012年度もどうぞよろしくお願いいたします。

早川 克美

PAGE TOP