2012.04.02

【M2の研究計画】中等教育におけるオーラル・ヒストリー・プロジェクトの実践と評価

 みなさんこんにちは。M2の末 橘花です。一昨日桜の開花宣言がありましたね。今年は例年より遅かったようですが、昨日から4月も始まりいよいよ新年度のスタートで、身が締まります。今年度もYlabをどうぞよろしくお願い致します。
 では、【研究計画】シリーズ第3回目の担当として、早速今年の研究計画をご紹介させていただきます。


【研究テーマ】
 中等教育におけるオーラル・ヒストリー・プロジェクトの実践と評価

【背景】
 現在歴史教育において、一つの絶対的な歴史ではなく、解釈としての歴史を学ぶことが大事であるというように歴史の概念が変化しています(今野2005)。例えば歴史認識問題は、一つの事象に対して複数の解釈をもつことが原因であるということからも概念変化はご理解いただけるのではないでしょうか。
 また、歴史教育で身につけるべき力としてHistorical Thinking という力がありますが、これは歴史の概念理解と複雑なプロセスを扱う能力 (Lemisko 2010)とされ、その下位概念としていくつかのスキルに分かれています。その中に「歴史的な見方をとる力(Historical Perspective)」があげられます。これは、過去に生きた人の考え、感情、モチベーションを理解し、再構築する力(Seixas & Peck 2004)であり、そのスキルを使って、現代の文脈に合わせて多様な視点を持つことができる(Seixas 2002)ようになると言われています。

【研究の着眼点】
 そこで、今回Historical Perspectiveを獲得する方法として「オーラル・ヒストリー」に着目します。オーラル・ヒストリーとは、「歴史的再構成を目的」(江頭2007)としたインタビュー活動のことです。第一人者のポール・トンプソン(2002)は「人々の声を聞き、彼等の経験と記憶を記録して、歴史と変動する社会と文化を解釈」する行為と定義しています。

【目的】
 本研究では、オーラル・ヒストリーに着目し、高校教育においてHistorical Perspectiveの獲得を支援する授業をデザインし、評価をすると共に、この力がより向上する過程を分析することを目的とします。

【方法】
 方法としては、2012年4月から11月にかけ週一回、高校の総合的な学習の時間を用いてオーラル・ヒストリーの授業実践を行います。半年の授業になりますが、オーラル・ヒストリー・インタビューの、アポイント、質問項目の作成、もちろんインタビューそのものや最後のプレゼンテーションまで全てを生徒に企画してもらい、実践しながら学んでもらいます。生徒に対しては質問紙や発話データからHistorical Perspectiveの指標を用いて分析します。

【今後に向けて】
 4月後半から母校での授業実践が始まります。こんなに早くから修士論文に直結する実践が始まることに不安は多いですが、まずは実践が上手くいくように一つ一つの授業実践を丁寧にこなしながら、より深い洞察ができるように分析にも力を入れたいと思います。データとしても結果を出し、生徒や担当してくださる先生にも満足のいく授業ができればと思います。一年間どうぞよろしくお願い致します。

末 橘花

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