2012.04.20

【M1の研究計画】メタ認知を促す学習計画の支援

みなさまはじめまして!梶浦美咲と申します。
大学院合格後はM0というかたちで山内研には関わらせて頂いておりましたが、先日ようやく入学式を終え、無事M1に進学することができました。進学できた安堵から胸をなで下ろしたのも束の間、また新たな研究に着手し始めるということで、思わず武者震いしてしまいます。

さて、毎年恒例の研究計画紹介。私も紹介させて頂くのですが、現在再考を迫られており、正直先行き不透明、暗中模索状態です。なので、ひとまずここでは大学院入試のために提出した研究計画の内容と現在考えているテーマに対する他のアプローチ方法について紹介しようと思います。

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✿研究テーマ✿

メタ認知を促す学習計画の支援


✿研究の背景✿

❀学習計画の重要性❀

大学生は中学・高校に比べ、サークル、アルバイトなどの課外活動はもちろん授業の選択にも自由が与えられ、今まで以上に自律的な学習が求められます。その自律的な学習にかかせないのが学習計画。先行研究においても学習計画を適切に設定して効率よく実行することが試験の成績に影響を与えることが明らかにされており(都築・神谷 1989)、学習計画の重要性が指摘されています。実際、野上(2007)によると、学校教育の現場で、定期試験の前に教育指導の一環として学習計画を立てさせるところも多いそうです。

しかし、学習計画を立てたとしても、その目標は実現可能であるとは限りません。私はあるときチューターとして、とある下級生の学習相談に乗った際、試験に向けて学習計画を立案するようアドバイスしました。彼は私の助言に従い学習計画を立てたようですが、その通りに勉強を進められず学習計画を放棄してしまいました。

野上ら(2005)は、3割強の大学生が学習計画を立てず、その大多数がメタ認知的制御能力が低いと報告しています。そのような学習者は、具体的な目標を設定できず、実現性の低い学習計画を立案してしまい、計画通りの学習が行えないことも明らかにしました。

❀メタ認知とは❀

メタ認知とは、自分自身の認知的活動に対する認知のことであり(三輪 2003)、学習計画を立て、学習行動をモニタリングし、調整や修正をする機能を担っています(上淵 2008)。

また、三宮(2008)によればメタ認知的活動は、学習活動の事前段階(課題の困難度を評価し、目標設定、計画立案、方略選択を行う)、遂行段階(課題の困難度を再評価、課題遂行や方略の点検、課題達成の予想と実際のズレを感知し、目標修正、計画修正、方略変更を行う)、事後段階(課題達成度を評価、成功や失敗の原因分析をし、次回に向けて目標再設定、再計画、方略再選択を行う)の三段階に渡って行われるといいます。

そこで、学習計画を立てても遂行できない学習者が、実現性のある学習計画を立案・実行できるように支援するためには、メタ認知を育成する必要があり、そのためには学習活動の全段階におけるメタ認知的活動を促すことが有効であると考えました。

また、学習支援システムの利用は個人学習を支える強みを持ち、教師や友人がいなくても学習者の支援を行うことができる(Winne and Stockley 1998)ため、本研究では学習計画の立案・実行の支援を、システムを利用することによって行おうと研究計画提出当時は考えていました(アプローチ①)。

✿テーマに対する他のアプローチ方法✿

...が、現在は「学習計画」というテーマに対して学習支援システムを活用するだけではなく、メタ認知という概念を取り入れつつ、もう少し他のアプローチ方法も検討してみようと考えています。

たとえば
アプローチ②:人的支援
学校教育の現場において、教師が生徒に学習計画を指導する方法も考えられます。

アプローチ③:学習支援システム+人的支援
学習管理システム(LMS、CMS)やeラーニングコース、学習支援アプリを用いるかつ、教師やメンターが生徒に対面やシステム上で支援を行う方法も考えられます。

アプローチ④:学習計画支援システム+学習者コミュニティ(SNS、ソーシャルラーニング)
ウェブ上でSNSを通じて他者とやりとりすることで学習意欲を高め、学習計画を立案・実行させる方法もあります。


このアプローチ④に関しては、特に近年教育工学分野において学習にSNSを取り入れるなどソーシャルラーニングに注目が集まっています。その中で丁度、2012年3月28日、「Studynote」というSNSが開始され、私も現在このサービスに注目しています。Studynoteは、自分の学習記録をグラフとして可視化し、友だちと共有できるサービスです。学習予定を設定し、リマインドメールやアラートメールを受け取ることもできます。自身の記録を確認して達成感を得るだけでなく、友達の記録に「いいね!」やコメントを投稿できます。同じ教材で学習しているユーザーや、 同じ資格の取得を目標とするユーザーによるグループ機能も用意されています。また、同じ目標を持つ仲間同士で励まし合うことができるため、学習意欲が向上します。興味のある方は是非使ってみると良いかと思います。

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...以上、現在の研究計画でしたが、まずは先行研究をより多くレビューして、研究テーマを練り上げていこうと思っています。そしてこれから2年間で自分に納得のいく有意義な研究できたらと思っています。よろしくお願いします!

梶浦美咲

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