2012.04.27

【M1の研究計画】中学生を対象とした造形ワークショップに関する研究

皆様、はじめまして。
4月から山内研究室で学ばせていただいております、修士1年の吉川久美子と申します。

先週から修士1年生による研究計画紹介がはじまりました。今週は吉川が担当させていただきます。これから取り組んでいく研究について、現時点での考えを以下にご紹介させていただきたいと思います。

■研究テーマ
中学生を対象とした造形ワークショップに関する研究

■なぜこのテーマなのか?
私は、これまで子どもを対象とした造形ワークショップに携わってきました。その中で、以下の3つについて主に関心を持ちました。

①多様な人たちとの交流の中で、自分の内的世界を表現して楽しむ中学生の姿
②作品を制作するという行為は、小学生、中学生とでは、その行為の意味合いが違うのではないか
③幼稚園、小学生にくらべて、中学生向けのワークショップは少ないのではないか

こうした関心を背景に、本研究のテーマを設定するに至りました。

■ 造形ワークショップとは
高橋(2012)によると、造形ワークショップとは「造形の楽しさをあらゆる人たちが享受できる営み」であり、「参加者が主体となって造形のプロセスや結果を楽しむことが最大の目的」であるとし、「知識や技術の習得や資格の取得などを目的とするものではなく、指導したり評価したりする教師とよぶべき存在は不要である」としています。

ここで指摘される「造形の楽しさ」とは、ものづくりの楽しさだけでなく、「個人が個人として尊重」され、「個人が個人として表現」し、そうした「表現することが当たり前のものとして肯定される」楽しさも含まれています。


■発達段階の応じた想像的な創造の存在
ヴィゴツキー(邦訳 2009)は、発達段階に応じた想像的な創造の存在を指摘しています。本研究で対象としている中学生の年齢期のこどもたちは、子どもとしての生体のバランスが破られ、成人としての生体のバランスが見いだせていない年齢であるとし、「アンチテーゼ」「矛盾」「両極性」の3つの特徴があると述べています。

想像力はこうした時期に思考力と結びつき、歩調をあわせてすすんでいきはじめます。想像が主観的なものから客観的なものへ変わりはじめる中で、この過渡期的、危機的といえる年齢期のこどもたちの想像には、双方の特色が現れます。そして幼少期に見られた描画行為から文学的創造へ移行していくと指摘します。

この時期内面的性格を表現するには、「ことば」を使うことが適しているとヴィゴツキーは述べています。また、彼らの創造的な想像は、いくつかの創造の分野が含まれているものであるとし、「子どもジャーナル」「壁新聞」「演劇」などの活動を提案しています。

上記のような造形ワークショップ、中学生の発達段階とその創造的な想像の特徴に対する指摘を踏まえながら、今後はさらに先行研究のレビューを行い、活動内容などの検討をしていきたいと思います。そして個人の経験における内的な必要性により作品を制作し、その作品を通じて自分の設定したテーマに対して、視野を広げることの出来る、中学生を対象とした造形ワークショップについて研究を進めていければと思います。

まだまだ未熟な研究計画です。これからひとつひとつ着実に、しっかりと課題に取り組みかたちにしていきたいと思います。

【吉川久美子】

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