2011.12.29
皆様お久しぶりです!
修士1年の河田承子です。
クリスマスも終わり、街中はすっかりお正月気分に変わってしまいましたね。今年も残すところわずかとなり、1年はあっという間だなと感じている今日この頃です。
今回、私が選んだ一冊は、小西行郎の「早期教育と脳」です。この本を知ったのは、研究室の先輩から頂いた事がきっかけでした。タイトルからして私の興味をそそるものだったのですが、読み始めると共感するところが多く、時間がたつのを忘れてしまいました。
著者で小児科医の小西行郎は、長年様々な親子を見てきた中で、子どもの発達を「脳」のみで捉える最近の早期教育に疑問を呈しています。
少子化と言われているにも関わらず、0歳〜未就園児の「乳幼児教育市場」が1500億にのぼり、英才・能力開発教室や英会話教材が1位と2位を独占している実態から、子どもの「脳」に対する親の期待や関心の高さが伺えます。
このような現状に対して、まず著者が指摘していることが「臨界期」という考え方です。本来、生物にとっての「臨界期」とは、「生物が環境に適応するために脳が柔らかい状態で生まれ、それぞれの環境に合わせて生きていけるように脳の機能を柔軟に作り替え、それを定着させることのできる時期」を意味します。この「環境を合わせて生きていける」のが重要で、算数や英語といった知能を教科することのみに与えられた能力ではありません。ところが、現在の早期教育の風潮では、人間の発達の一つの側面であるに過ぎない「臨界期」を、「教育的効果の高い時期」といった範囲で捉えていると述べています。本来の意味とは異なり、「この時期を逃したら手遅れ」という「臨界期」のイメージが、親が早期教育に走る原因になっているのでしょう。
更に、著者が第2章で挙げていたものが、「乳幼児と英語教育」です。経済のグローバル化に伴い、小さい頃から英語を学ばせようという動きが高まってきています。書店では幼児向け英語雑誌が売られ、子どもが喜びそうな音やリズムを中心としたビデオ教材や知育玩具、キッズ英会話教室などが流行しており、親はそういった様々な情報を集めています。私は学部時代に、幼児向けの英語スクールで働いていたのですが、そこでは生後6ヶ月位のお子さんが通っていました。まだハイハイもおぼつかない子どもが、その時期から英語を始めることにびっくりしたのですが、そういった時代の流れがあったのだな、とその頃を振り返りながら感じました。
このような現状に対して、著者は英語教育は第一言語を習得した後で始めるべきであり、早期教育をするのであれば、親にも根気と覚悟が必要だ、と説いています。早期教育をすると、子どもの効果を求めてしまいがちですが、あまり効果を求めるのではなく、英語を通して親子の関係を深めることが大切ではないか、と提言されています。
意外なことに、今のところ早期教育において信頼できる科学的データが報告されていません。さらに、どういう刺激を、どの程度、どの年齢に与えれば効果的かる安心できるものなのか、ということも分かっていないそうです。早期教育にはまだまだ解明されていないことがあります。勿論、効果を求めたい気持ちはあるとは思いますが、親が刺激を与え続けるのではなく、子どもの自発的な発達を見守りながら、彼らの世界を広げていければ望ましいなと、この本を読んで思いました。
私は現在、修士研究で「親と育児情報」をテーマに、親が子育ての中で育児情報をどのように活用しているのかを研究しています。本書で示されていたような言語能力や早期教育についての情報が、子育でどのように活用されているのか、これから詳しく見ていきたいです。
<参考文献>
小西行郎(2004) 早期教育と脳