2011.08.09

【エッセイ】ソーシャルメディアと学習の関係

TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが普及すると、学習時間が減って成績が下がるのではないかという危惧を持っている人もいるようです。ソーシャルメディアの利用と学習の関係については今まで試行的な研究が行われてきましたが、研究者の意見が一致する結果はでていませんでした。

昨日公開されたLock Haven大学のReynol Junco教授の研究(Computers & Education誌に掲載予定)によれば、その答えはどのようにソーシャルメディアを使うかに依存しそうです。

The relationship between frequency of Facebook use, participation in Facebook activities, and student engagement.というタイトルの研究によれば、大学生が積極的に学習に参加しようとする態度をはかるテストの成績に対して、Facebookでイベントを作ったりコメントをつける活動はポジティブな、ゲームやチャットはネガティブな予測因子として抽出されるという結果がでています。(ちなみに、Facebookの利用頻度と授業準備のための学習時間に相関がないことも明らかになっています。)
この結果から、ソーシャルメディアをどれぐらい使うかよりも、どのように使うのかに注目すべきだと考えられます。

ただし、この研究は因果関係を立証したものではありません。イベントを作ったり公開の場でコメントする活動を好む社交的な学生の方が、積極的に学習に参加する傾向があるという解釈もできます。よってFacebookでゲームやチャットを禁止すればよいというわけではなく、望ましい学習スタイルに変えていくためにどうすればよいのかという問題のたて方が必要になるでしょう。
また、現時点では、ほとんどのFacebook利用は授業と関係ないプライベートな活動として行われています。今後、Facebookの上で積極的に他者とやりとりするタイプの学習活動が増えてくると、調査結果も変わってくる可能性があります。

現在、高校生と大学生・社会人がFacebookを用いて進路について考えるSoclaプロジェクトを展開していますが、高校生たちが大学生・社会人との膨大なやりとりの中で多くの気づきを得ていくのを見ていると、開かれた他者とのコミュニケーションによる学習の可能性を強く感じます。
ソーシャルメディアを使う/使わないという二分法的な考え方ではなく、どのように使えば人間の成長に寄与できるかという観点にたてば、我々が為すべきことはたくさんあるのではないでしょうか。

[山内 祐平]

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