2011.06.18
【今年の研究計画】シリーズ,今回は博士課程2年の池尻良平が担当致します。
私の今年の研究計画は、「歴史的解決策を現代の問題の解決方法の生成に応用する
力を育成するゲーム学習のデザインと評価」です。
近年、海外の歴史学習研究では、歴史を日常生活に結びつけて学ぶことの重要性が指摘されており、同様のことは日本の高等学校学習指導要領にも見られます。実際、歴史哲学の分野でも歴史を学ぶ効果として、「未来に対してのオルタナティブをもたらす」ことが指摘されています。
ところが、このように歴史上の政策をアナロジーにして現代の問題解決のオルタナティブを生成させる効果的な歴史学習は研究されていません。そこで、世界史上で経済活性化の政策を行った人物を16人選定し、彼らと高校生が同じ目線で協調的に現代の日本の経済を活性化させる方法を考えていくというゲームをデザインしました。
このゲームでは、高校生を2人対2人に分け、それぞれ歴史上の人物カードを引いてその政策をアナロジーにして現代の日本の経済を活性化させる政策に作りかえることでポイントを獲得できます。相手のチームはその政策が現代の文脈に合っているかを確認し、改善策を言うことでポイントを獲得できます。
評価方法としては、このゲームを通して高校生が現代の日本の経済活性化の方法をより多様に思いつけるようになったかをテストします。予備実践の結果では、ゲーム使用前よりゲーム使用後の方が生成数が増加しただけでなく、文化的・社会的な政策の割合が向上していることがわかりました。また、このゲームという特殊な場において歴史の知識が現代の文脈に沿ってゆっくりと転移していったかどうかもゲーム中のプロトコルから検証する予定です。
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3月の地震以来、個々人の経験則では将来が予測しにくい状態になっています。こういう時にこそ、歴史という人類の経験則を学び、よりマクロな観点から未来への指針を増やすことが必要になってくるのではないかと考えています。
6月下旬に高校生を対象に本実践を行う予定ですが、研究上の狙いとは別に、高校生が持っている暗記科目としての歴史のイメージを、未来に光を与えてくれる歴史のイメージに変え、彼らの未来に少しでも役に立つ実践をしてあげたいなと思っています。
[池尻 良平]