2010.11.16

【エッセイ】消える学習効果・現れる学習効果

ハーバード大学のRaj Chetty教授が、ベテランの幼稚園教諭が少人数学級で教えた場合、大人になってから年収があがるという研究を発表して注目を集めています。

Calculating the Importance of a Good Teacher
Kindergarten Matters

この研究は、1980年中盤に行われたProject Starというテネシー州の幼稚園児12000人をランダムに15人のクラスと24人のクラスに割り当てて教育効果を見たプロジェクトの追加分析になります。

1980年代当時でも、少人数学級の効果は明らかになっていましたが、その影響は中学生になると消えることが確認されていました。この研究のユニークなところは、いったん消えた影響が、大人になってから復活しているように見えるところです。

Chetty教授は、学習規律などの非認知的スキルの影響の可能性を指摘していますが、大人になってからの測定尺度が年収であることを考えると、社会性のような教科内容に依存しないタイプのスキルが影響している可能性もありそうです。

学校の教育内容として明記されていない能力やスキルが、良質の幼稚園教育によって培われ、いったん消えた上で大人になってから現れるという現象は興味深いものです。教育に関わる評価は、多面的かつ長期のスパンで考えるべきだということを示している研究であるといえるでしょう。

[山内 祐平]

PAGE TOP