2010.09.17
【学びのキーワード】映像におけるヴィジュアルリテラシー/映像リテラシー
みなさま、こんにちは。修士1年の土居由布子です。
学習や教育に関連するキーワードを解説する【学びのキーワード】シリーズ!
第7回のキーワードは映像における「ヴィジュアルリテラシー」です。
最近、特に夏休みはあちらこちらで「映像制作ワークショップ」が行われてきました。その中で培われるであろうものの一つが映像における「ヴィジュアルリテラシー」またの名を「映像リテラシー」です。
★ 映像における「ヴィジュアルリテラシー」とは
一言でいうと、「映像の理解能力」「映像における操作技能」つまり,映像を読み解き、また映像文法のある映像を作り出す能力です。ただしこれは「映像」におけるヴィジュアルリテラシーであって、映像に拘らない場合の本来のヴィジュアルリテラシーは「視覚的なメッセージを理解し作り出す能力」を指します。また国際ヴィジュアルリテラシー協会では「人間が見ることによって、そして他の感覚的な体験をするなかで同時にそれらを統合することによって発達させる視覚能力の集合」とされています。
the International Visual Literacy Association
http://www.ivla.org/organization/whatis.htm (参考)
★ 映像における「ビジュアルリテラシー」の重要性
映像文化が浸透する中、これまではただ「見るだけ」だったのが「撮る」「発信する・共有する」ことが簡単にできるようになりました。例えば、最近は一人一台は持っているデジタルカメラや携帯電話に大抵ムービー機能が付いていますよね。また「you-tube」、「mixi」「facebook」などのユーザーの方は自分が撮ったムービーをアップロードしたり、友達の映像を見た経験はありませんか。
このように技術の進歩によって、誰でも映像情報を作成、発信できる時代になりました。アマチュアとプロの境がどんどん小さくなっていく時代が到来したといっても過言ではありません。
しかしながら「you-tube」で共有されている一般人の映像の多くは「見る気がしない」という人もいるかもしれません。でもそれは何故でしょうか。
プロが撮った映像は一般人が撮ったものに比べるとやはり「見やすさ」ということがその差として一番にあるのではないでしょうか。
「見やすさ」というのは「映像文法」というのもまた重要なキーワードだと思います。それでは「映像文法」とは何でしょうか。英語や日本語などの言語に文法があるのと同じように、「映像」にも「文法」があるという認識を皆さんはされたことありますか。
「映像文法」を無視したわかりにくい表現とは?
例)運動会のビデオ映像
○カメラを固定し、場面全体が映るよう調整された後、ズームインなどの操作を行っていないもの。
⇒注目すべきところ/人物はどこなのかが分からない。
○ 被写体のみを追跡撮影しているもの
⇒どんな状況や流れの中にいるのか等全体が分からない。
○画面変化が大きく、動きの早いもの、傾いていたり、上下左右に動き過ぎ。
⇒落ち着いて映像内容を視聴できない。見ていて気分が悪くなる。
あなたもビデオ撮影する際、または映像を見ていて、重要な部分を強調するために、編集でその特定のシーンだけ繰り返す、ズームアップしたものをと、全体が見えるものも組み込む等の工夫があったりしませんか。
また映画等で会話しているシーンは大抵Aさんの後ろ姿(右肩もしくは左肩から頭部)を映しつつ、その向こうにBさんがAさんに向かって話している様子を撮るといった(ごく基本的な)技法が使われます。
このようにそれぞれのシーンで「意図」を持って撮影するとき、その工夫に文法という名のルールがあれば、誰かに見てもらう時に伝わりやすいのです。
映像におけるヴィジュアルリテラシーの原点として、まずは「映像にも文法がある」という認識/気づきをすることではないかと思います。
私もまだ勉強中ですが、以下の文献を読んでいるので、もしご興味がおありの方は参考にしてはいかがでしょうか。
「映像を生かした環境教育」「映像時代の教育」どちらも吉田貞介著。
「ヴィジュアルリテラシーを育成するための学習プログラムの開発」高野勝(上越教育大学)
「Teaching TV production in a Digital Workd 」Robert Kenny著
「A Primer of Visual Literacy」Donnis A. Dondis著
「作る映像リテラシ(output)映像•ビジュアルデザイン」森田健宏
以上で簡単に「Visual Literacy/ビジュアルリテラシー」の紹介をさせていただきました。このキーワードが国内外でよりいっそう認識が広がり、多くの方が学ばれ、一般の映像作成/発信文化が高まり、作品一つ一つが見やすいものとなり、より一層プロとアマチュアの差がなくなるような素晴らしい映像時代を期待しつつ、それを実現するべく「映像時代の教育の在り方」について自身の研究に勤しんで参りたいと思います。
【M1 土居由布子】