2010.09.02

【学びのキーワード】自己効力感

みなさまこんにちは。修士1年の菊池裕史です。
学習や教育に関連するキーワードを解説する【学びのキーワード】シリーズも、今回で5回目となりました。今週は、大学院の入試が行われるこの時期にぴったりな「自己効力感」というキーワードを紹介します。

・自己効力感とは

冒頭から話がそれてしまい申し訳ありませんが、ここ最近、メジャーリーグファンの間で「イチロー選手の10年連続200本安打が達成されるかどうか」という話題が度々もちあがります。9月2日現在、残り29試合で29安打が必要という状況で、僕たちイチローファンは、「たのむぞイチロー!がんばれ!」などと言いながら、日々応援を続けています。

ここで気になるのが、イチロー選手の心理状態です。まさかイチロー選手が「今年はもう200本安打は無理だ・・。」などと考えているとは思えませんが、果たしてどれほど「自分のもつ力を信じること」ができているのでしょうか。とても気になります。

この「自分のもつ力を信じること」の重要性を指摘した心理学者が、アルバート・バンデューラです。バンデューラは人間の働きのメカニズムのなかで、自分のもつ力を信じることほど重要で力強いものはないと言っており、この信念が人間の動機と達成に著しく寄与するということを述べています。この「自分のもつ力を信じること」が自己効力感です。では、この自己効力感はどのような体験・事柄によって育まれていくのでしょうか。

・自己効力感に影響を与える4つの事柄

自己効力感は、4つの主要な影響力によって育むことができると言われています。1つ目は「成功体験」です。忍耐強い努力によって障害に打ち勝ったという体験が、個人の自己効力感を高める最も効果的な方法であると言われています。2つ目は「代理体験」です。自分と似たような人が忍耐強く努力をして成功していくのを見ることが、それを観察している人に「自分たちも成功できるぞ!」という信念をわき上がらせます。3つ目は「社会的説得」です。ある行動を習得する能力があると言われてその行動を勧められた人は、たとえその行動のなかで問題が生じたとしても、多くの努力を投入し、成功の機会を高めると言われています。最後の4つ目は「生理的・感情的状態」です。これは感覚的にも分かりやすいことですが、たとえば肯定的な気分のときは自己効力感が高まり、落胆した気分のときは自己効力感が下がります。ストレスやネガティブな感情を減少させることも重要な点であると言われています。

・集団の自己効力感

先ほど述べた自己効力感に影響を与える4つの事柄については、いずれも個人をベースとして考えてみましたが、「集団の自己効力感」も非常に重要なポイントです。普段の生活のなかで、課題を解決するために人と共に働くということは多々あることかと思いますが、直面する課題に対して集団がもつ効力感は、その活動にどれだけの努力を注ぎ込むかということや、努力の結果がすぐに出なかったときの忍耐力に影響を与えると言われています。

・自己効力感を扱う研究の広がり

今回はとても簡単に自己効力感についての紹介をさせていただきましたが、この理論は様々なトピックと合わせて研究が行われています。たとえば、教育的発達、キャリア・ディベロップメント、健康、家族や親の影響、文化の影響などがその一部として挙げられます。今回の記事を読んで自己効力感に興味を持ってくださった方は、ぜひ自分の関心があるトピックと合わせて調べていただければと思います。

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