2010.07.25

【研究者の仕事術】 北村智 特任助教

みなさま、こんにちは。D1の池尻良平です。

【研究者の仕事術】シリーズも残すところ2回!今回は情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座 特任助教 の 北村 智 さんに研究者の仕事術をインタビューしてきました。

北村さんはメディアコミュニケーションや社会ネットワーク論を専攻されながら、学生のころから現在に至るまで教育工学領域の共同研究もされています。そんな北村さんに、今回は「研究の動機」「研究の仕方」「共同研究のコツ」「将来の夢」の4つのテーマを聞いてきました!ではどうぞ。


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1、研究の動機
Q. メディアコミュニケーションを研究テーマに選んだ経緯は何だったのですか?


北村さん「すごく時代的なものがあると思うんですけど、僕が高校生の頃はすごいポケベルが流行ってたんですね。ポケベルコミュニケーションをすごいやっていた女子高生たちが目の前にいたわけですよ。僕はやっていなかったんですけど、それをみながらすごいなーとかなんか変わってんなーとか思ってたわけです。

 あと、1995年にwindows95が出て、これからはインターネットの時代だとかネットコミュニティの時代とかになったし、大学に入ったのが2000年なんですけど、2ちゃんねるや一般の人が作っている「テキストサイト」と呼ばれるWebサイトなんかが話題になったりすることがあったわけですよ。それからちょうど、携帯電話を(ポケベルコミュニケーションを傍観者として眺めていた)自分も持つようになって、携帯電話でEメールを送るのも当たり前になってっていうのが大学1・2年生の頃だったんです。

 そういうような時代のせいもあったのだと思うけど、高校生のころからコミュニケーションって何なんだろうなあって関心があったんですよ。だから大学に入る前からコミュニケーション系の心理学みたいなことはしたいなと思って、大学3年生からは社会心理学専修課程に進学することが決まったんですね。

 あと大学1・2年生のときに、僕はパソコン屋で働いていたんです。そこでパソコンの自作パーツを売っていて、商品についてお客さんに聞かれたらちゃんと答えないといけないし、説明しないといけないんですけど、結構なスピードで新製品が出てくるんです。だからそういう情報はネットで集めていたんですよ。日常的な生活の方では、ネットどっぷりでコンピュータの話ばっかりしてたわけです。そういうのもあって、ネットコミュニケーションみたいなものとコンピュータには関心があったわけです。

 それで大学で調査実習があって何か調べなければいけないって時に、「人はなぜウェブ日記を書き続けるのか」っていう社会心理学の論文を読んで、そういうことが研究テーマになるってことがわかって、それでメディアコミュニケーションのようなテーマに関心をもつようになったんです。」


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2、研究の仕方
Q. どういう研究のスタイルをとっているのですか?

北村さん「アイデアを思いつく時は、歩いている時です。というか、アイデアを思いつくために、散歩によく行きます。散歩でぐるっとその辺を歩いて考え事をして、戻ってきて書く。割とどうでもいいときには、そんなふっとは思いつかないことが多いです。なので、外でふいにアイデアを書き留めるよりは、整理して書くってことの方が多いです。」


Q.読む文献を探す時っていつもどうされているのですか?

北村さん「文献検索ではどういうつながりから文献を見つけ出すのかということをわりと意識しています。おおまかにいうと文献間のつながりというのは4つくらいで、まず1個目が「キーワード」つまり「語」ですよね。2個目が「著者」。3個目が「引用」。最後が「ジャーナル」。この4つを使って絞り込んでいく作業をするんですよ。つまり、自分の関心のあるキーワードだけだと見つけるのが難しくなってくるので、それに人を混ぜたりとか、後はジャーナルを混ぜるっていうのをやっています。

全然知らないけどとにかく調べないといけないっていう時は、大体教科書的な本を読んでみて引用文献を見ていきます。引用されている論文は、著者が重要だと思った内容が一行くらいで書かれているので、ほう、その論文にはそういうことが載っているのかということをチェックしていく感じですね。後は比較的新しめの研究論文を読んで引用されているものをチェックしていって、それを読むようにして研究の流れを知っていく形を取ります。

 後、もし人を調べていて自分の関心のあるテーマがよく載っている雑誌が見つかったら、そのジャーナルでよく載っているものは何だろうと思って、ジャーナルに載っている論文に全部目を通します。それで、キーワードとは関係なく、そのジャーナルの共同体でホットトピックになっているのは何なのかとか、よく使われている研究方法は何なのかとか調べます。

 その中で自分の関心に近いジャーナルが見つかると、海外の雑誌だと新刊が出るとアラートで目次を送ってくれるサービスがあるので、それに登録して全部目次を見ています。で、気になったものがあったらアブストラクトをチェックして、さらに気になったらダウンロードしてどんな分析なのかなって中身をざっと読む。もっと気になったらちゃんと読むって形にしています。今は20誌くらい(もうちょっと多いかもしれない)登録しています。」


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3、共同研究のコツ
Q. 教育工学の方とたくさん共同研究をされていますが、違う領域の方と共同研究をする際に成功させるコツって何かありますか?

北村さん「共同研究といってもいろいろなスタイルがあるのですが、教育工学の共同研究では皆で協力して何かを作ったり実践したりって場合がほとんどなので、その研究はどういう関心のもとに行われていくことになるのかということを意識します。特に、共同研究をする相手はどういう研究関心で研究をしているんだろうかというところを意識します。

 だからまず共同研究する場合には、共同研究者の論文を手に入るものは全部読みます。やっぱり研究者の人が何を考えてきたのかとか何に関心があるのかっていうのは論文にすごく反映されるので、それは本当に一緒にやるんだったら読まないとよくわかんないなと思っているので。

 一緒にやらなきゃいけない人に関しては、どういうことに関心があるのかっていうのはすごく関心があります。だから、山内研とか中原研周りの人で手に入るものは大体読むようにしています。人ごとにフォルダを作ってその人の論文を入れたりもしています。でもそれだと知識だけなので、実際に話してみてどういうことに関心があるのかとか、どういうことが得意なのかっていうことがだんだんわかってくる感じです。

 後は僕がかかわる教育工学領域の研究は与えられたテーマ、やらなきゃいけないテーマが多いのであまり自分でテーマ設定をすることはないですけど、場合によってはこのテーマだったらあなたは関心を持つのじゃないかって話を切り出すことはあります。

 要するに、共同研究相手のことをよく知るっていうことが大切なんじゃないかと思っているんです。


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4、将来の夢
Q. 研究者として、将来の夢ってありますか?

北村さん「なんだろうな。うーん、すごくはっきりとしたものはないです。というのは、こういう研究って社会の変動を後追いしてテーマを決めているところもあるので、ある種どう変わっていくのかっていうのをまだまだ見ていきたいとは思いますね。それを予測しているわけじゃなくて、自分もだけど色んな人が、社会が変わっていく中でどうやったら幸せになれるんだろうかなあっていうことを考えています。」

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[編集後記]
インタビュー後、北村さんに研究者に必要なことを聞いたところ、「知りたいと思う気持ち」という言葉をいただきました。北村さんの仕事術を一言で言うと、他人を真摯に知ろうとしている点に集約されるのかもしれません。「人を大事に思うこと」っていうのは、きっと全ての仕事の根幹にあるんだなあと思いました。


北村さん、今回は面白いお話を聞かせていただき、ありがとうございました!


[池尻 良平]

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