2010.07.20

【研究者の仕事術】 森 玲奈 特任助教

みなさま、こんにちは。
M1の土居由布子です。
【研究者の仕事術】シリーズ第7回は、
情報学環・特任助教である森玲奈(もり れいな)さんへのインタビューです。

森さんには、日頃から私(土居)の研究相談をさせていただいています。
私自身、始まったばかりの院生活でいっぱいっぱいなんですが、私以上に忙しい、5つも6つもプロジェクトを掛け持ちされている森さんに仕事術を伺ってみました。

Q:研究テーマの種探しはどのようにされているのですか?

簡単にいうと「違和感探し」でしょうか。

例えば、修士の時から始めた個人研究では、大学時代から自分がワークショップ実践をする中で感じていた自分の中での「モヤモヤ」、「問題意識」がベースとなっています。その後も、研究や実践の中で難しく感じること、すんなりいかないなと感じたことなどについて、立ち止まって考えてみるようにしています。それが時を経て、研究に生かされているような気がします。

修士1年の夏頃までに、自分の問題関心の周辺にある論文や報告書を検索して徹底的にレビューしました。そういったことを頭の中でマップにしました。
レビューの作業は大変でしたがとても楽しかったです。自分のモヤモヤの答えが、どこかにあるのをなんとなく期待していたんだと思います。でも、レビューの結果分かったのは、「答えを探してもそこにはない」ということでした。
私が現在研究テーマとして扱っている「ワークショップ」や「カフェイベント」という実践は、研究自体が少なく、特に、教育の文脈ではあまりやられていないことがわかりました。

実は、最初に持っていた問題関心をそのまま研究にすることはしなかったんです。その奥にあったモヤモヤが、社会的にどのような意義を持つのかが大事だと思い、切り口を変えてアプローチしていこうと思ったので。そういう意味では、「種」がそのまま、すぐに研究になるわけではないのかもしれませんね。
研究することを仕事にしている人、即ち、プロの研究者というは、その一連のプロセスを自分自身の中、あるいは仲間とやっているのだと思います。私はまだ半人前ですが。

あと、できるだけ細切れにでも時間をつくっては街を歩き、情報収集はしています。人の様子を観察する、書店や文具店、雑貨店で何がどのように売られているかを見ることも意識的に行います。人と会いに行くことで、新しいことを知ったり、アイディアがでてきたりします。

twitterの活用もしています。2009年秋頃から本格的に利用を始めました。今ではフォローさせていただいている方が5000人程度いますので、その皆様のツイートから「モヤモヤ」「違和感」といった研究のヒントや、仕事に使えそうな面白い情報を得ることも沢山あります。自分の持っている「違和感」を発信してみることもあります。だんだん忙しくなってきて街歩きや人に会うなど時間がとれなくなっているのですが、twitterでの情報収集はそこを助けてくれている感じかなぁ。おかげで問題関心も広がりましたし。

Q:森さんはどのように忙しい日々を過ごしていますか?またスケジュール管理のコツがあったら教えてください。

スケジュール管理について、特別なことはしていません。手帖に書くことくらいです。

私が関わっているプロジェクトのスケジュールは、大体、自分の都合だけでは決められません。例えば、UTalkというカフェイベントは、定期的に毎月開催しているものですから、自分がどういう状態であっても、都合で日程を変えることはできません。また、今、産学連携のプロジェクトにいくつか参加しているんですが、それらは参加メンバーが多いため、ミーティングの日程調整1つでも大苦労。中にはミーティングの日程決めを2−3か月以上前から行う場合もあります。

研究関心が「ワークショップ」のようなインフォーマルラーニングにあるため、土日に仕事が入ることがとても多いんです。地方出張もあります。
ですから、ミーティングがない日の中から意識的に「大学に来ない日」をつくっています。平日にお休みをつくらないと、休みがなくなっちゃうので。
でも、お休みといっても、家で書き物をしていたり、外で情報収集したり、人に会ったりすることに充てているかな。

Q:ストレス発散について何かしていることはありますか?

実は、気分転換するのは得意じゃないんです。

関わっているプロジェクトがいくつかありますが、それらで組ませていただいているメンバーや文脈は、皆異なるので退屈しないです。皆さんそれぞれ違った仕事術を持っていて、それを傍でみていられるだけでも楽しいですよ。
発散しなくても、違うことをいろいろやることで、バランスが取れているので、結果、研究する中でストレスはそれほど溜まらないのだと思います。

それと・・・もし仕事で何かにつまずいた時があったとしても、最初はへこむしイライラもするけど、一歩引いてその状況を見てみる。
すると「つまずき」や「困ったこと」について考えることそのものも、自分の研究関心の範疇っていう感じなんですよね。なぜなら、私は、人が学んでいくプロセスに興味があるので。自分自身のつまずきですら、研究のネタなんです。だから、困っていると同時に、困っている自分自身のことを「面白い」とも思えるんです。発想の転換かな? 

全てのことが研究につながる。「種」になります。
仕事のストレスは仕事で発散する。それが一番ですね。

Q:森さんにも苦手なことはありますか?

得意じゃないこと、滅茶苦茶多いですよ。例えば、人づきあいとか。

私って、本当は一人でいることが好きなんですよね。考え事をする時はたいてい一人。
でも、人との出会いを通して新しいことを知ったり、思いついたりすることが多いのも事実です。新しいことを始めるときは「この人と何かやったら面白いんじゃないか」と思うこと、そんな妄想がきっかけになったりします。これ、思えば伝わるのか、今まで結構実現できているんですよ。
他にも、「AさんとBさんのコラボレーションをみてみたい」と思って、両者をこっそりつなぐことも多いです。

興味があることが多いように思われがちですが、興味あることと興味ないことの落差も大きいんです。それも悩みかな。
これからは、興味あることを深めるだけではなく、興味の幅そのものも、どんどん拡げていけたらいいなと思っています。

参考:
森玲奈さんのホームページ「はりねずみの道具箱」 http://www.harinezuminomori.net/
森玲奈さんのtwitter http://twitter.com/hari_nezumi

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